2024.03.02
賀来賢人原案「忍びの家」がNetflix配信初週から世界2位と好発進!
主演も務める賀来賢人が原案を練った、忍者の家族ドラマがNetflixに登場。シリアスとユーモアの絶妙なバランスを保ちながら攻めている作品で、配信開始初週から、グローバルTOP10の2位にランクインしたというから注目です。
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文/長谷川朋子 (コラムニスト)
「服部半蔵」の血を引く忍者の家族ドラマ
「ギャップに萌えるドラマ」というのがより正しい表現なのかもしれません。1分数十秒の冒頭からそんな期待が高まります。黒装束に身を包んだ忍者一家が現れ走り、敵を斬り倒すシーンのバックに流れているのはメロウな洋楽。現代の政治がらみの事件背景があることを匂わせます。忍者と世界配信ドラマという掛け合わせからは、和の強調や血みどろ感を想像できそうですが、実はそうではないのです。
伝説の忍者「服部半蔵」の血を引く日本最後の“忍び一家”という壮大な設定ながら、家族ドラマに寄せていることもこの作品の意外性の1つにあります。主役である俵家の暮らしぶりから話が始まっていくわけですが、普通なようで普通じゃない独特な世界観に割とすぐに入り込めます。
新興宗教の教祖役に山田孝之
わずかな出演時間ながらインパクトが大きい白石加代子が演じる謎の老年女性など、ひとりひとりの役者の使い方に無駄がないことにも驚かされます。ただ1人、「全裸監督」などヒットシリーズに出演するNetflix作品常連のピエール瀧の刑事役は今回、深みがないキャラクターに感じます。劇中で「じゃがいも顔」呼ばわりされるだけされて、滑稽さだけ残します。
とはいえ、全体的にキャラクター設定は見事なもの。原作がない完全オリジナル作品として、ゼロからしっかり作り込まれていることはテンポを上げて伏線を回収していく後半戦でより実感できるはず。
ちなみに主演の賀来が原案を練ったそうです。賀来は共同エグゼクティブ・プロデューサーとして製作陣にも名を連ねています。一見、役者の名前を借りただけのケースに思えますが、作品を見れば、それだけでないことは一目瞭然です。相撲界を描いた「サンクチュアリ-聖域-」に続いて、日本ならではの題材で独創性に溢れたオリジナル企画がまた一つNetflixに加わったという理解に変わります。
監督はロス在住のアメリカ人
Netflixの発表(2月22日)によると、2月15日の配信開始から1週間、「今日のシリーズTOP10」にランクインした国の数が92か国に上ったことがわかりました。またNetflix週間グローバルTOP10 ランキング(2024年2月12日~18日集計)では世界2位(非英語TV部門)をマークし、幅広い地域で成績を残していることも注目に値します。国別の結果をみると、日本、アメリカをはじめ欧州主要各国、アフリカ、アジアと幅広い地域で週間TOP10 入りし、その数全71か国。しかも、日本で達成できなかった週間1位をジャマイカとナイジェリアで成し遂げています。
忍者の可能性をかけたであろう製作体制も抜かりがありません。賀来をはじめとする日本人で構成される製作チームの原案をもとに、Netflixがストーリー開発と共同脚本、監督を依頼した人物はアメリカで生まれ育ったロサンゼルス在住の監督兼脚本家。インディーズ系の映画でこれまで実績を作ってきたデイヴ・ボイル監督でした。日本人以外の視点を取り入れることを狙ったのは明らかです。
ボイル監督に直接その意図を尋ねると、「誰が見てもわかるような作品にしたかった。家族ドラマをベースにした忍者の物語を描くことで、世界に出やすくなるのではないかと、そんな思いもありました」と答えが返ってきました。
そして、1話のラストで流れるのは60年代結成のイギリスバンド「ゾンビーズ」の曲「Nothing’s Changed」です。どうしてこの曲だったのかというと、「時代を感じさせないタイムレスなものにしたかったから」。ボイル監督はそう答え、「何百年も続く存在の忍者が現代に生きるストーリーだからこそ、時代を超えた雰囲気を作りたかった」と説明してくれました。
時代にもジャンルにも縛られない作りは単調さを排除する効果を生み出しています。ボイル監督の言葉を借りて世界観を表現すると、「あなたの隣に座っている人は、もしかしたら忍者かもしれない──」というもの。そんな想像まで楽しめてしまいます。
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