2021.09.03
【vol.13】モテる茶の湯を学ぶ/後編 ★読者プレゼントあり!
すべてにストーリーがある! 茶の湯の魅力とは?
いい大人になってお付き合いの幅も広がると、意外と和の素養が試される機会が多くなるものです。モテる男には和のたしなみも大切だと、最近ひしひし感じることが多いという小誌・石井編集長(47歳)が、最高峰の和文化体験を提供する「和塾」田中康嗣代表のもと、モテる旦那を目指す連載。今回のテーマは「茶の湯」です。
- CREDIT :
写真/米山理功 文/井上真規子 取材協力/芳心会 撮影協力/一条恵観山荘
前編では、露地(庭)を鑑賞して、つくばいで手を清めてから、にじり口を抜けて小間へ。そこから大きな茶室に移って床の間を拝見するところまでをお伝えしました。ここからはお菓子の取り方、食べ方、そしていよいよ、お茶を飲む作法を教えていただきます!
【読者プレゼント】があります。詳しくは記事の最後をご覧ください!
お茶をいただく前に、まずはお菓子の作法をマスター!
石井 「花より団子!」
田中 「で、どう食べるかだよね」
田中 「恐れ入ります。まずは、左の生菓子からいただきますね」
石井 「厚みがあるとお皿として使いやすいですね」
木村 「そうなんです。取る時は、お懐紙の束の外側の一枚を2つ折りにして、自分の前に置きます。この時、折山が自分の方に向くようにしてください。それから、添えてある菓子切(ようじ)でお菓子を刺して、懐紙の真ん中に乗せてください。菓子切を使う際は器に手を添えると丁寧ですよ。菓子切は、真横にしてお懐紙の手前に置いて使っていただけます」
石井 「はい」
木村 「こちらは、明治時代の頃に作られた京都祇園、都をどりのお皿です。お茶席で、お土産に配っているものなんです。今とは少しデザインが違いますね」
木村 「ちなみにホスト側である亭主が、銘々のお皿に出してくれて『お懐紙を使わずにそのままどうぞ』と言ったら、そのまま召し上がってもいいですからね」
田中 「僕は、このまま取らずに食べたい派です(笑)」
木村 「いいですよ。私は京都人じゃないので気にしません(笑)。では、生菓子を取り終わったら、干菓子をお取りいただきます。遠いところにあるものから取って、手前のものを取るように」
石井 「どうぞ。ちなみに、人数分より数が多いですね」
木村 「これは、お代わりしてくださいというサインなんです。あえて人数分より多めに用意しています」
石井 「なるほど、2個取っちゃおうかなと迷っちゃいました(笑)。危ない危ない」
【ポイント】
■お菓子には、生菓子と干菓子がある
■お茶会では、回ってきた菓子器から自分の分のお菓子をお懐紙に取って次の人に回す
■お懐紙をお皿にする場合は、束のまま使う
■お菓子の皿を次の人に回す時は、自分と相手の間に一旦置いてどうぞと挨拶をする
作法をマスターしたら、自分が一番美味しいと思える食べ方をしてみる
木村 「和菓子は、それ全体で口に含んだ時のテクスチャーやバランスが考えて作られているのであまり細かく切ってしまうと、お菓子本来の性を殺してしまうことになります。ですから2等分とか、どんなに小さくても4等分に留めてください。でも、何より、美味しく召し上がってもらうのが一番です。黒文字の楊枝などの菓子切は用いず、直接に手で召し上がっていただく場合もあります。むしろそれが正式な場合もあるのです」
田中 「うん。これは美味しい」
石井 「美味しいですね〜。さっそくお茶が飲みたくなりました。お抹茶とお菓子は、同時にいただくわけではないんですね」
石井 「お懐石を省略したお菓子だけのお茶会でも、順番は変わらないということですか」
木村 「はい。建前として、お菓子を食べてからお茶を出すという流れになっているんですね。それを踏またうえで、薄茶しか出てこないお茶会の場合は、どちらが先とかは気にせずに、好きなように同時にいただくというのもありです」
石井 「わかりました。あとは、気になる団子!」
木村 「では、お団子の食べ方は田中さんに実演していただきましょう!」
田中 「おっ!(笑) じゃあ、まずお懐紙の上にとって……」
田中 「う〜ん、その食べ方美味しそう!」
木村 「本当は外さなきゃいけないですけど、ホスト側に目配せして『せっかくだから、このままいただきます』って、エクスキューズをすれば大丈夫です」
石井 「なるほど〜。そしてこのお団子も、とても美味しいですね!」
木村 「お江戸でナンバーワン呼び声高い、墨田区の『越後屋若狭』という古いお菓子屋さんのお団子です。本所の一つ目の橋の袂にあるので、昔から『今日のお菓子はどこの?』って聞かれたら、お江戸の越後屋ですとは言わずに、気取って『一つ目です』といったんですね」
【ポイント】
■本格的なお茶会では、薄茶の他に、お濃茶が出る
■カフェインの強いお濃茶を空腹で飲むと胃が驚くので、先にお菓子など食べ物を頂いてからお茶を飲むという流れがある
■お団子は、お懐紙にのせて串から抜いたら、1つずつ口に運ぶ
いよいよ、お茶を点てていただく!
木村 「では、お茶をお出しします。石井さんから、どうぞ」
田中 「お茶をいただく時もお菓子と同じで、茶碗を隣の人との間に一旦置いて、お先にと挨拶をします」
石井 「お先に頂戴します(お辞儀)」
石井 「お点前頂戴いたします(お辞儀)」
木村 「そして、お茶碗を手のひらに乗せて、高く上げて『いただきます』と挨拶をして、目の前に戻してから回します」
田中 「回すのは、亭主が茶碗の一番いいところを客に見てもらうために、正面を向けているので、そこに口をつけると失礼だから、避けるという意味があるんです」
石井 「そういうことなんですね。ちなみに絵が描いてあるところが正面ですか?」
石井 「絵がない場合は……?」
木村 「どこが正面でもいいんです(笑)。自分に向けられたところが正面だと思ってください」
田中 「亭主が正面と思えばそこが正面(笑)」
木村 「回す向きは、流派によって時計回りとか反時計回りとか色々ありますが、これも実はどうでも良いんです(笑)。左に回すはずの茶碗を右に回したからといって、爆発するわけではないので(笑)」
石井 「アハハ。大事なのは正面を外して飲むということ」
木村 「そうですね。正面を避けるだけなので、1回まわしても避けたことになります。でも、そこにもう一手足すと、所作が丁寧に見えるので2回まわすんです。1回でできることは2回に、2回でやることは3度にするとより綺麗になります。でもこれ、2手足すと丁寧すぎて時に過剰です。“ひと手間”これがコツです」
田中 「ひと手間であることが大事なんですね」
石井 「なるほど。それでは、いただきます」
石井(すっ!) 「本当に美味しいですね、香りもすごく立つし、鼻から抜けた時が好きです」
【ポイント】
■ お茶をいただく前は、隣の人との間に一旦お茶碗を置いて「お先に」と一礼する
■ さらに、正面にお茶碗を置いて、お茶を点てた人にも「お点前頂戴します」と一礼する
■ 茶碗の正面に口を付けないため、茶碗を2回まわす
■ お茶を飲むときは、ズズズっと音を立ててすする
■ 飲み終わるときは、すっと音を立てて吸いこんで合図する
飲み終わったら、丁寧に茶碗を鑑賞する
石井 「なるほど〜」
田中 「ひっくり返しても、回して見てもいいんですよね」
木村 「はい。ちなみにこの茶碗は樂家15代当主、直入(じきにゅう)作で、フランスで焼かれた楽焼ですね。荒々しくていいでしょう」
石井 「そうですね〜、荒々しい中にも、色のグラデーションの繊細さなんかもあって素敵です。ありがとうございました」
木村 「では、次は田中さんのお茶をお出ししますね。こちらの茶碗は、太閤秀吉が朝鮮出兵で肥前名護屋城に滞在した時に、唐津焼で太閤の好みに焼かせた茶碗を明治の初め頃に写したものです」
木村 「普通に、見せてくださいと伝えて大丈夫です。すると亭主が『その茶碗でもう一服お立しましょう』となることも多いです。そういう時のために、お菓子を人数分より多く置いておくんですね。だから始めに食べ切らなくてもいいんです」
石井 「よく考えられてますね〜!」
田中 「今日は、いろいろ教わりましたね。こういう作法を心得ていると、和食店やレストランへ行った時の振舞い方まで変わってきますよ。器類の扱い方もちょっと丁寧になったりね」
木村 「『何にても置き付けかえる手離れは 恋しき人にわかるると知れ』という利休百首の面白い歌があります。茶碗を置いた時に、勢いよくパッと手を離したら雑な感じになりますよね。だから、デートの最後の時に別れを名残惜しむように、ものから手を離すときはゆっくり離しなさい、という意味なんです」
石井 「面白いし、わかりやすいですね! フレンチで、ワインいただくときも一緒ですよね。ゆっくり、優雅にということですね」
田中 「あと、意外と茶器などは片手で扱いますよね」
木村 「そうですね。亭主からすれば自分の持ち物ですから、余りに丁寧な扱いはもの惜しみをしているようにも映ります。実際に点前の時など、普通は片手で。でも、ほどよくしっかりと持ちます。茶器に慣れていない方だと、扱うのを怖がって急いでパッと戻したりするんですね。でも逆に亭主からするとその方が怖い。きちんとどちらかの手で持って、ゆっくりと扱うことが大切。それだけで、この人は心得ているなって印象になるんです。ひっくり返したり、裏側を見たりするときもゆっくり扱うこと」
田中 「それだけで、全然違いますね」
石井 「器類は、しっかりと持ってゆっくり丁寧に扱うということですね。今日は作法の基本を学ぶことができました! ありがとうございました」
【ポイント】
■ 飲み終わったら、指とお懐紙で飲み口を拭いて戻す
■ 回して正面を手前に元に戻したら、手に持って茶碗を鑑賞
■ 鑑賞の際は、膝の上に両手の肘を置いて低い位置で
■ お茶碗を扱う時は、片手でしっかり持ち、もう片手は添えて
ってゆっくりと扱う
多少の訓練はして、きちっと場数を踏んでいただかないと
木村 「本当はそれ、都市伝説なんですけどね(笑)。茶室に上がる時は汚れていないきれいな足元でと言うことが礼儀として求められるので、白いソックスは清潔なもののサインだと思うんですけど」
石井 「なるほど。しっかり履いてきちゃいました(笑)」
木村 「ただ、せっかくお洒落なスーツを着ているのに足元だけ小学生みたいな白いソックスって、カッコ良くないし、絵として美しくないですよね。それだったら私は、一足、白い足袋を用意しておいて、茶室に入る時に履き替えるとかね。どうせちぐはぐならそこまでやってもいいかと」
田中 「最近のお茶会は男性の場合、そういう人も多いですね」
石井 「よくわかりました。それともうひとつ。茶の湯って流派がたくさんあるじゃないですか? それぞれによって作法が違うとも聞きますが」
田中 「そう。茶碗を畳の縁(へり)の外に置くか内に置くかみたいのは、流派によって違いますよね。ま、いろいろあるからこそ、逆に多少他の人と違うことをやっても、堂々としてれば、あれは違う流派なのかなと思ってもらえる(笑)」
石井 「そこがオヤジさんの特権ですかね(笑)」
木村 「確かにそういうところはあります(笑)。でも、茶の湯にはユニバーサルルールもあるんです。例えば10の流派を並べて一斉にお茶会を始めた時に、いろんな作法でディテールに差のつくところと付かないところがある。この時、差のつかないところが不可欠なコンテンツなんです。田中さんの言うように茶碗を畳の縁の内に置くか外に置くかは違いが出てくるけど、お茶を前にして、いただきますというお辞儀をしない流派はない。逆に言えば流派で違いの出るところは実は本質的な話ではないんですね」
田中 「大事なところだけ抑えて、あとは堂々としているのが、特に男の茶の湯では絶対いいと思うな」
木村 「そのとおりです。ただ、少しでもクールにカッコ良くと思うなら、多少のキャリアは積んでいただきたいですね(笑)。きちっと場数を踏んでいただかないと、田中さんみたいに腰の据わった、物の分かったという風にはならないので」
石井 「なるほど、わかりました。精進します(笑)」
【ポイント】
■ スーツの場合は白い足袋を用意して茶室の入り口で履き替える手もある
■ 茶の湯には流派によっても変わらないユニバーサルルールがある
■ クールにカッコ良くキメたいなら、多少の訓練はして場数は踏んでおくこと
【取材を終えて】
【読者プレゼント】
右列上と中列中は稽古や茶会に必要な道具一式を入れる「数寄屋袋」。右列の中と下は懐紙(上が男性用、下が女性用)。中列上の茶色いケースは「懐紙入れ」。中列下の上2つは「長短の扇子」。一般的に長い方が男性用、短いものが女性用。その下は「茶論製 菓子切 鹿角 5寸」。菓子切は、塗りのもの、銀製、真鍮、竹など自分の好みで。左列3点は帛紗(ふくさ:茶器を取り扱う時に用いられる布)で、上から「紫帛紗」、「銀更紗出帛紗」、「金毛織(モール)出帛紗」。
■茶論/茶論 : さろん | 茶道文化の入り口 (salon-tea.jp)
オンラインショップ/中川政七商店WEB
問合せ先店舗/茶論奈良町店(本店)
●プレゼント
「数寄屋袋 手織麻 伽羅」「菓子切Ⅰ 拭き漆黒5寸」「佐保路帛紗 紫」「茶扇子 黒6寸」「懐紙 無地大](1名に付き各1点)をセットにして2名様にプレゼントします。
※男性読者の方向けに、ラインナップをセレクトしています。
※左写真は帛紗が2点映っていますがプレゼントは1点(紫)となります。
ご希望の方は
MAIL/webleon@mb.shufu.co.jp
まで【茶の湯セット希望】と明記のうえ、お名前/年齢/職業/ご住所を書いてメールにてご応募ください。締め切りは10月10日到着分まで。当選者にはこちらからご連絡させていただきます。
● 木村宗慎(きむら・そうしん)
茶人。1976年愛媛県宇和島市生。神戸大学卒。 少年期より茶道を学び、1997年に芳心会を設立。 京都・東京で稽古場を主宰しつつ、茶の湯を基本に執筆や、雑誌・テレビ番組をはじめ 展覧会などの監修・コーディネートを手がけ、数寄の魅力を現代に伝える活動を行っている。これまでに、2005ミラノサローネ「空庵」や、フランクフルト工芸美術館「TEEHAUS」、オクスフォード大学でのワークショップなど国内外のデザイナーや、クリエイターとのコラボレートも多い。
■芳心会
HP/http://www.hoshinkai.jp/
● 田中康嗣(たなか・こうじ)
「和塾」代表理事。大手広告代理店のコピーライターとして、数々の広告やブランディングに携わった後、和の魅力に目覚め、2004年にNPO法人「和塾」を設立。日本の伝統文化や芸術の発展的継承に寄与する様々な事業を行う。
和塾
豊穣で洗練された日本文化の中から、選りすぐりの最高峰の和文化体験を提供するのが和塾です。人間国宝など最高峰の講師陣を迎えた多様なお稽古を開催、また京都での国宝見学や四国での歌舞伎観劇などの塾生ツアー等、様々な催事を会員限定で実施しています。和塾でのブランド体験は、いかなるジャンルであれ、その位置づけは、常に「正統・本流・本格・本物」であり、そのレベルは、「高級で特別で一流」の存在。常に貴重で他に類のない得難い体験を提供します。
■和塾
HP/http://www.wajuku.jp/
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