2022.10.08
永野芽郁が「うるせぇ、クソが」とぼやく『マイ・ブロークン・マリコ』観にいこ♡
上映中の『マイ・ブロークン・マリコ』は、永野芽郁が演じるOL・トモヨが亡くなった親友・マリコの遺骨を強奪して逃避行する物語。ガニマタでタバコを吸い、「うるせぇ、クソが」とぼやく、これまでの清純なイメージとはかけ離れた役柄の彼女を観てみませんか?
- CREDIT :
文/池田鉄平(ライター・編集者) 写真/長田 慶

永野芽郁の圧倒的新境地とも言われる映画、『マイ・ブロークン・マリコ』(9月30日公開)。完成披露イベントを控え、彼女はそう力強く語った。
イベントでは、感極まってあふ出る涙が止まらなかった。さまざまな迷いを抱えながら演じたという彼女が、表現者として、再発見した自分自身とは。その胸中に迫った。
趣味はサーフィン、バイク、楽器演奏……
多彩な表現の背景には、彼女の趣味の広さも影響しているかもしれない。
例えば趣味としてあげるものには、サーフィン、バイク、ドライブ、楽器(ギター、ドラム、ピアノ)演奏と、好奇心の旺盛さが伝わってくる。
バラエティー番組で「ドリフトで縦列駐車」に挑戦したときには、見事に成功してお茶の間を驚かせた。
「日々、お芝居をしている時間が長くて、素の自分として過ごす時間のほうが短いんです。作品に入るとずっと役と共に過ごしていますね。休日、自分だけの時間はしっかり一度リフレッシュすることにあてて、またお芝居に向き合うエネルギーを蓄える。自分の好きなことをすることが仕事での糧にもなっています」

そんな永野が、女優業を通じて最高に高揚感を感じる瞬間は、どんなときなのか。
「制作過程で感じるときや、先輩の演技に対して感動するときなどがそうです。自分自身が、難しいセリフを言いながらも思いが溢れるお芝居が自然にできたときも、『今日まで演技を頑張ってよかったな』と素直に思えます。だけど、一番の喜びと表現するのなら、「やっぱり完成した作品を、楽しみに待ってくれている人たちに届けられたときは達成感と嬉しさがありますね」

「うるせぇ、クソが」と言う主人公を演じて
永野が演じるのは、鬱屈した日々を送る OL・シイノトモヨ。トモヨは、テレビのニュースで親友・イカガワマリコが亡くなったことを知る。突然の出来事にうろたえるシイノは、自分ができることを考えた末、マリコの遺骨を強奪することにする。あんたの遺骨は、あたしが連れてく――。彼女の遺骨を抱いて逃避行するという物語だ。
劇中では、ガニマタでタバコを吸い、パワハラ上司に「うるせぇ、クソが」とぼやく。永野のこれまでの清純派のイメージとはかけ離れた役柄だ。
作品には、家族・恋愛・仕事・夢など、誰しもが共感できる普遍的なテーマが物語に盛り込まれている。


『マイ・ブロークン・マリコ』
9月30日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
出演:永野芽郁、奈緒、窪田正孝、尾美としのり、吉田羊ほか
監督:タナダユキ 脚本:向井康介、タナダユキ
原作:平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』(BRIDGE COMICS/ KADOKAWA刊)
©2022 映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会
完全に自信を失っている自分がいた。しかし、これを他の人が演じているのを見るのも悔しい。そんな葛藤を抱え、タナダユキ監督 に、「本当に無理かもしれません。できる気がしないんです』と相談を持ちかけた。

すべてを受け入れ一緒に乗り越えようといってくれたタナダ監督に、ついていきたいと思った。そうして、かつてないほどワイルドな役作りに取り組んだ。
例えば、やさぐれた物の食べ方、タバコの吸い方を研究した。実際、クランクインするまで3、4カ月くらい、実際に喫煙者(ニコチンやタールが入ってない特殊なモノを喫煙)になった。
「朝起きて吸う、ごはん食べて吸う。日常的に喫煙していましたね。とにかく自分の体になじませるべく、持ち方、吸い方、タイミングなどから勉強しました。劇中で着用していたドクターマーチンは、撮影の11カ月前から履き続けました」

「これまで演じてきた作品は、私の中で全部つながっていくと思っています。今回の作品に挑戦してみて、『怖いな、恥ずかしいな』というネガティブな感情がなくなりました。挑戦したことすべてが、次につながる経験をさせてもらいました」
今までにない、感情のままに泣き叫ぶという、豪快な演技も体得した。中でも、包丁を片手に単身“敵地”へと乗り込み、マリコの遺骨を奪取するシーンは、忘れられないシーンだという。

でも、そのシーンをやったときに、現場の空気も変わりましたし、私自身もシイノという人をようやくつかめた気がして。またひとつ演技にギアが入りましたね」

「緊張して、気を張った落ち着かない日になりそう(笑)。『みんなの感想を聞きたいけど聞きたくない、どうしよう』って胃がキリキリしてるかもしれませんね。こんな気持ちは、ほとんどない経験です。でも、いい言葉も耳が痛い意見も、その言葉で一喜一憂するんですけど、必ず今後に生かすことができます」
具体的にどんな人に届いてほしいのか。理想を語るとしたら、“疲れている人”に見てほしいという。
「社会や人間関係にも、やっぱり疲れるじゃないですか。『普通に生活してるだけで私すごいな、よくやってるな』っていつも自分に思ってるんです(笑)。
誰しも疲れて「もう嫌だな」「家から出たくないな」と思う日が絶対あって。そういう人たちの、心の奥底でモヤモヤ、マイナスなエネルギーが、この映画を見ることでプラスに働く部分があるんじゃないかなと。思いがけない、納得がいかないことがあっても、この世界で強く生きていかないといけないと、背中を押せるような気がします」
お芝居に終わりはない、挑戦を積み重ねたい
この日のインタビュー中には、“挑戦”という言葉を何度も口にしていた。幼少期から、お芝居を通じて挑戦する日々を過ごしたことで、人生のテーマになっているのか。

ちょっとした挑戦が積み重なって今があります。これからも、そんな日々を大切にして歩んでいければと思います」
取材日から数日後、永野は、イタリア・ミラノで行われたPRADAのファッションショーに出席。9月24日に23歳の誕生日を控えていた。
「実は誕生日は飛行機で迎えました」と自身のInstagramで報告していた彼女。23歳の一年も目まぐるしく、果敢に挑戦する彼女の姿が私たちを勇気づけてくれるかもしれない。