2022.12.23
featuring 落語家 瀧川鯉斗
新世代の落語家が選んだ念願のサブマリーナ
お洒落な男性なら誰もがステキな時計を持っているものです。そこでこだわり男子に、こっそり愛用時計にまつわるエピソードをインタビュー。実に興味深いお話がアレコレと飛び出します。
- CREDIT :
写真/大森 直(TABLE ROCK.Inc) 構成・文/長谷川 剛(TRS)
あの頃は西海岸キッズでした(笑)
ご存知のとおり、LEON.JPではファッション記事にモデルとして登場し、毎度好評となる本メディアの「顔」。そもそも真打ちへと昇進したのは2019年。以来売れっ子として寄席はもちろん、テレビのバラエティ番組等でも活躍している人気者です。今回はそんな今を生きるニュージェネレーションの噺家さんの腕元に、ググッとフォーカスしてみたいと思います。
── 若い頃はどんなスタイルだったのですか?
瀧川鯉斗(以下、鯉斗) ファッションに関しては10代の頃から興味をもっていました。16、17歳の頃は当時流行っていたストリートスタイルというのでしょうか、ディッキーズにスウェットパーカという出で立ちでした。
ご存知のとおりバイクにも乗っていたのですが(笑)、同時にサーフィンにもよく出掛けていたんです。だからサーファー風の着こなしもスタイルのひとつ。ブランドで言えばステューシーとかがお馴染みでした。
そしてヘアスタイルは茶パツのロン毛(笑)。足元はナイキのエアマックスやエア ジョーダンなどを履いていたのかな。白×黒のジョーダンXなどは、今でも格好良いモデルだと思っています。まあ、なんていうか西海岸キッズでしたね(笑)。
鯉斗 いえ、ファッションはそれなりに追求しましたが、時計は流行りモノを軽く押さえる程度。ただ、Gショックなどは幾つか集めていましたね。当時の服装にちょうどよくマッチしましたし、サーフィンにも使えて便利でしたから。
ベイビーGなども身の回りで流行っていた時代です。あとはカシオのデータバンクでしょうか。メタリックなタッチのデザインが気に入って、結構使っていました。とは言え機能の方はまったくでしたけど(笑)。
── その頃はまだ、機械式時計には踏み込まなかった?
鯉斗 そうですね。ただ、当時からロレックスへの憧れはありました。雑誌や先輩からの情報を見たり聞いておりまして、いつかは絶対に身に付けたいなと。しかし何ぶん高価ですからね、17、18歳の頃はまだ単なる憧れでした。
バイト先で出会った師匠の芸に惚れ込んで
鯉斗 そうです。上京した時はシンプルに役者になりたいと考えていました。しかし何かのツテがあるわけでもなく、とりあえずバイトをしながら模索していこうと。
そして働き出したのが、新宿の赤レンガというレストラン。そちらでコックを任されていたのですが、赤レンガはステージがあるような大きな飲食店で、時々落語会を開催していたんです。
その時に縁あって出会ったのが僕の師匠の瀧川鯉昇。彼の芸を目の当たりにして、一瞬で惚れ込んでしまい、落語家として弟子入りすることを決意したのです。
鯉斗 まったくありませんでした。弟子や前座時代の時は、時刻確認はほぼ携帯電話で済ませるという暗黒期(笑)。ただ時計に関して言えば、師匠に付いてあちこち出掛けたり、この業界に馴染んでいくうちに、ひとつ気付くことがありました。それは懐中時計。多くの噺家が懐中時計を持っているんです。
出演場所はいろいろ種類があるものの、我々が高座に上がる時はだいたい和装で腕時計は外します。腕時計をしていく人もいなくはありませんが少数派。懐中時計を帯の間に挟んでいる人をよく見掛けましたね。
和装とのマッチングという点もあるのでしょうが、あちこちに出演する師匠ともなると、スケジュール管理が非常に肝心。新幹線での移動となると遅れは命取りですから。
そんな時に高座の脇に懐中時計を置いて時間を計りながら演じるなんてことがあるのです。大抵ヒモ付きで持ち歩き、クルクルッと巻いて帯の間に収める所作も実に小粋で、いつか自分もマネしたいと思ったものです。
この間、ヴァシュロン・コンスタンタンのパーティーに出席させていただいたのですが、その時金無垢の懐中を拝見し、少しときめきました(笑)。ただ、簡単にポンと買えるモノではない様子でしたね。
鯉斗 もちろん使えるお金に限りはありました。しかし人様から見られる商売ですので、身なりにはそれなりに気を遣っていました。僕の地元でもある名古屋の先輩が“スーパーサンクス”という服のブランドを手掛けておりまして、そこのアイテムのお世話になっていましたね。今日のこのスウェットのセットアップも、そのスーパーサンクスなんですよ。
── ということは、あとは腕時計が揃えば、ある意味完璧なスタイルになると(笑)。
鯉斗 ですね(笑)。色々な人に相談して、ようやく半年前に念願のロレックスを手に入れることができました。ロレックスのどのモデルにしようかということも考えましたが、なるべく男らしく実用的な一本がよいということで、サブマリーナに決めました。やっぱり根がサーファーなんでしょうか、防水性あるものが気になってしまうんです(笑)。
男は黙って黒文字盤
そして文字盤はブラックを選びましたが、それもお気に入り。ブルーやグリーンにも惹かれたのですが、ちょっと目立ちすぎるかなと。
そうでなくてもよく「チャラいね~」とか「軽そう」などと言われることも多いので(笑)。男は黙ってブラックだろうと黒文字盤を選びました。身に付け続けて実感したことのひとつに、サブマリーナは予想以上に目立つアイテムだということ。
仕上げが良いということなのか、何かとキラキラしているんです。付けてみてやはり強い存在感を放つのは、さすがロレックスというところでしょうね。
鯉斗 ほぼ毎日付けてます。オンでもオフでも高座に上がるような時以外はいつも一緒。コレを付け出してからよく言われるようになったのは、「売れたね~」という言葉。少し気恥ずかしさもありますが、意図する部分がないワケじゃないんです。
今を生きる落語家として、ある程度注目の集まる存在にはなりたいと考えていましたから。落語は芸能の一ジャンルではありますけども、まだまだ世間への露出が限定的。個人的にはもっと若い人達に観てもらいたいと思っています。
そして努力すればそれなりに報われて、格好つけることもできる稼業であることも知ってもらいたい。LEONさんに撮影していただくのもその一環。アピールの場を増やすことで、たとえば噺を聞きに来てくださるきっかけになったり、さらには弟子になりたいという人も出てきて、そうすることで落語シーンの裾野が広がっていく。どんどん露出を増やして注目される存在になっていきたいと思っています。
と言うのも、次の一本としてデイトナが欲しくなってしまい……、一層頑張っていかなきゃと思っているんです(笑)。
● 瀧川鯉斗(落語家)
1984年名古屋生まれ。暴走族の総長を経て落語家を目指す。2005年に瀧川鯉昇に入門し、2009年に二つ目となる。真打ちに昇進したのは2019年。2022の年末には東京にて第三回目となる独演会を開催予定。
独演会 期日/2022年12月23日(金)
会場/渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール
瀧川鯉斗オフィシャルサイト
HP/https://koito-takigawa.com/