2023.11.11
「ロマンスの神様」の広瀬香美が歌姫とガチンコ勝負!?【歌姫ファイトクラブ!!】が面白い!
起業したい志願者が投資家にプレゼンする、リアリティー番組の元祖『¥マネーの虎』のプロデューサーが仕掛けたのは、歌姫・広瀬香美さんがたった一人で新時代の歌姫を選ぶオーディション番組だった!
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文/川下和彦(クリエイティブディレクター/習慣化エバンジェリスト) 撮影/谷川真紀子
異色のタッグによる番組
そこから生まれたのが、新時代の歌姫を発掘・プロデュースする本気×本気の新リアリティー番組『「歌姫ファイトクラブ!!」心技体でSINGして!』である。なぜ今このタイミングで異色のタッグが実現したのか。その理由について、広瀬さんはこう語る。
それを見計らったかのように、栗原さんからこの企画のオファーをいただいたんです。あまりのタイミングの良さに、うそっ!やるっ!やりたいっ!と思って、気がついたら、『Yes』と即答していました」
一方、栗原さんは、「デビュー30周年」という、広瀬さんにとって転機となるタイミングを見逃していなかった。
「広瀬さんが独立されてすぐ、まだ何も無かった事務所にうかがったのがちょうど5年前。そのとき、広瀬さんは『これから新しいことをやっていきたい』とおっしゃられていました。それ以来、『YouTubeをやったほうがいいですよ』『こんな人とコラボしてみませんか』と、いろいろ提案しながら、ぼくだからこそできることは何だろうと、ずっと考えていました。
その後も、何度かコンサートにうかがったり直接お会いしたりしているうちに、うっすらと企画のイメージができてきました。そして、30周年のコンサートを終えられた広瀬さんと楽屋で直接話したとき、やるなら今しかない!と思って、一気に企画をまとめ上げました」
1対1の真剣勝負
「もう、くったくたです。たくさんの歌姫候補の本気を受け止めるのは、並大抵なことではないと思いました。お互い真剣勝負なので、なりふり構わず全力投球で取り組んだら、足はつるわ、胃は痛いわで疲労困憊。それに、あのとき、あの子に悪いことを言ってしまったんじゃないかと後から落ち込むわで、そりゃあもう、たいへんでした」
歌手としては百戦錬磨の広瀬さんも、本格的な音楽プロデューサーの仕事は初めてであり、終わったときには満身創痍だったという。
「自分の新人の頃を思い出し、初心に戻ることができました。逆に、プロデューサーとしては手探りだったうえに、つねにカメラで撮られているとなると、失言したらいけないとか、余裕がなくて繕うこともできず、自分を丸裸にされた気持ちでした。
将来歌姫が有名になって、この映像を振り返ることになったら、デビュー曲のプロモーションビデオを見るのと同じくらい恥ずかしいんだろうなと思います(笑)」
「オーディションが進むたびに広瀬さんがやつれていってるんじゃないかと思っていました。それだけ本気で歌姫候補に向き合われていたのだと思います。その姿は、『歌姫の虎』そのもの。
この企画は、歌手が歌手を選ぶオーディションではなく、音楽プロデューサーであり、社長である広瀬さんが歌姫を生み出すところに独自性があります。世の中にアーティストはたくさん存在するけれど、これから歌姫をどう売り出していくかを考えられる『社長の顔』を持った広瀬さんにしかできない企画だったと思っています」
広瀬さんが「歌手に必要なものは心技体」と言うように、武道さながらの、音楽家と音楽家、本気と本気のぶつかり合いを目の当たりにしてきた栗原さんは、ギリギリまで粘り、最後の最後に番組タイトルを『歌姫ファイトクラブ!!』に決定したという。
ダイヤの原石を見つける
しかし、この世の中、歌がうまい人は五万といる。そんな中、新時代の歌姫を選び抜くに当たって、広瀬さんが一切の妥協を許さなかったポイントがある。
「どんなに歌が上手でも、誰かのまねをしている人は選びませんでした。今回は、まだゴツゴツしていても、素の歌声だったり、しゃべり声だったり、直感でこの歌声が世の中に必要だと思わせてくれた人を選びました。私にはない、誰のものでもない、ダイヤの原石のような歌声を見つけた自信があります」
ずっと広瀬さんの側で、オーディションの一部始終を観てきた栗原さんは、その様子を振り返ってこう語る。
「ぼくが合格すると思った人は、ことごとく誰も通過しませんでした(笑)。素人は声量や器用さで合格かなと思ってしまいますが、やっぱり見ているところが違うわけですよ、プロは。
ぼくは、いつもプロの覚悟や本気を撮りたいと思っているのですが、今回は広瀬さんの本気と歌姫候補たちの本気がぶつかり合って、涙を流す人も出るくらい、大きな化学反応が起きていたように思います」
このオーディションがきっかけとなって、この先何十年も広瀬さんのように活躍する歌姫が生まれるかもしれない。そうなったとき、広瀬さんも言うように、『歌姫ファイトクラブ!!』は、そのデビューまでの軌跡を振り返るたびに視聴される番組になるだろう。
原石が輝くダイヤになるために
「残ったメンバーは、みんな何かしら私の心を奪い、もう一度聴きたいと思わせてくれる声を持っていたのは確かです。最終選考の舞台となった私のライブで、1人ひとりに課題曲を歌ってもらった後、悩みに悩みましたが、最後は自分の直感を信じて『この声をプロデュースしてみたい!』という候補を選びました」
しかし、どんなにすばらしい素質を持っていても、原石が原石のまま終わってしまうことも少なくない。選ばれた歌姫候補に対して、すでに真の歌姫になるためのレッスンが始まっているという。
「本物の歌姫になるために努力できるかどうかは、今見ています。どんなにセンスや資質があっても、コツコツ努力しないと、作品はいいものになっていきません。ですから、やはり練習量が重要になりますし、日頃から自分の魅力を追求することや、自己研鑽を積み重ねることが、プロとして活動を続けていくうえで必要不可欠だと思っています」
「最終選考の手前で落ちてしまった子がいます。私の大好きな歌声で、この子は通したいと思っていました。でも、発声法がよくなくて、声を壊すような歌い方をしていました。
その結果、審査当日に体調を崩してしまい、会場に来てくれたのですが、私が歌わせなかったんです。すごく葛藤があったのですが、涙をのんで落としました。
あの声はなかなかないし、根性もあるし、彼女が持っているバックグラウンドは、私にはない層に突き刺さると感じたので、あの子はいけるんじゃないかと思います。読んでくれていたら、DMをくれるといいのになあ」
広瀬さんは、これまで歌手として数々のオーディションを受け、たくさん受かってもきたが、たくさん落ちてもきた。受かったときのことはあまり覚えておらず、むしろ落ちたときこそ、その理由を考え、結果をバネにして成長してきたと言う。
最終審査を通過した候補だけではなく、悔しい思いをした候補が、いつか歌姫になって広瀬さんの目の前に現れる日が来るかもしれない。
世界で輝く歌姫を育てる
一方、栗原さんは、世界中に輸出されるお手本番組を生み出した存在だ。その栗原さんと手を組んだ広瀬さんは、海外展開に向けてこう語る。
「例えば、日本では、ステージでうまく歌えないと、よくイヤーモニターのせいにする人がいます。でも、私の教え子たちには、それを絶対に許しません。
海外のアーティストは、イヤモニがなくても普通に歌います。海外の過酷さや世界のスターのレベルの高さを日本はまだまだ知らないなと思いますし、環境や人のせいにばかりしていると、日本のエンタメがどんどん遅れていってしまいます。
そんな中、今回私が選んだ歌姫は、歌声に関して世界で通用する素材を持っていると確信しています。本人が志を持って努力を積み重ねていけば、十分世界で活躍できる可能性があると思っています」
「後で気づいたのですが、栗原さんの中には大きな球体のようなものがあるんですよ。その半径から私がはみ出さないかを見守っている。『広瀬さん、自由にやっていただいていいですよ』って言うから、私は自由に動いたんです。
でもね、栗原さんは、あっちまで行ったら、こう編集しようとか、経験からありとあらゆる計算をしていたんだと思いました。私が最終的に通過者は1人もいないと言おうが、AKB48のようなグループをつくりたいと言おうが、すべて栗原さんの想定内だったんだと。
次は、『自由にやってください』って言われたら、もっと暴れちゃうよ!えええーーーっ!っていうところまではみ出しちゃうよ!(笑)」
栗原さんが応える。
「問題ないですよ。何が起きても大丈夫なように考えてるんで(笑)。前々からお会いしていて、広瀬さんのことをわかったうえで企画しています。それでも、今回は想像をはるかに超えて、本物感がすごかったです。
やっぱりプロって、すごいなと思いました。ぼくは、プロが好きで、その道を極めてきた人って、やっぱり何かが違いますよね。番組をきっかけに、それを垣間見たかったんです。広瀬さんがどうやって成功し、どうやって30年やってきたのかがオーディションの随所に出ている番組がつくれたと思います」
広瀬香美と栗原 甚。2人の世界タッグが、どのような歌姫を世界に送り出すことになるのか。今から楽しみでならない。
川下和彦さんの連載は……
ココが違う!結果びと
「今年こそは頑張るぞ!」と誓っても、新年の抱負の掲げた人のうち約9割は年末までに達成できていなかった、という調査結果があります。では、結果を出している人とそうでない人の間には、どのような差があるのでしょうか。各分野で輝かしい実績を残しているフロントランナーたちから結果の出し方を引き出します。
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