2024.11.14
山田孝之×仲野太賀が語る“トラウマレベル”の過酷な白石組現場とは?
白石和彌監督の集団抗争時代劇『十一人の賊軍』にW主演している山田孝之さんと仲野太賀さん。同じ事務所の先輩後輩でもある二人が語る、白石組の過酷だった撮影現場の様子とお互いの奮闘とは?
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文/浜野雪江 写真/新井徹也 スタイリング/五月桃(山田・ROOSTER)、石井 大(仲野) ヘアメイク/灯(山田・ROOSTER)、高橋将氣(仲野) 編集/森本 泉(Web LEON)
お二人の年齢差はちょうど10歳。所属事務所の先輩・後輩でもあるお二人は、お互いをどのように見つめ、撮影に臨んだのでしょうか。6年ぶりの共演を通して感じたことや、粘り強い撮影で知られる白石監督の魅力、子供時代の映画体験から、演じることの醍醐味までをうかがいました。
仲野太賀さん(以下、仲野) これは孝之さんには何度もお伝えしていることですが、僕は小学生の時、当時19歳の孝之さんが出ていたドラマ(「ウォーターボーイズ」)を見て、自分も演技がやりたい! と思ったんです。
山田孝之さん(以下、山田) 僕はこれまでの共演経験を通して、太賀の芝居に対する本気度は肌で感じていたし、最近の高い評価も日々聞いていたので、太賀とできるというのはとてもうれしく、楽しみでしたね。
山田 僕はただただ「太賀、やっぱりいいなぁ」と思って見ていました。そして自分も、ちゃんと政として生き、政に徹することができたかなと思います。
仲野 僕は、スタッフもキャストも時間をかけて大変な撮影をして、本当に苦労して作ったものが無事完成した喜びと、ホッとした気持ちがまずありました。ボリューム感のある作品ですが、それを感じさせない勢いと熱量があり、アクション・エンタテイメントとしても見応えのあるものになっていてうれしかったです。撮影を終えて、これまでにない達成感があります。
── そして6年ぶりの共演はいかがでしたか?
仲野 孝之さんには、役を演じる上でのストイックさも、「用意、スタート!」がかかってからのギアの上がり方もすごくて、すべてにおいて圧倒されてばかりでした。特に、政という役を懸命に生き、その思いを全うしようとする姿は圧巻で、何度ご一緒しても惚れ惚れします。
撮影にあたり、賊を演じる俳優たちが一丸となれる環境を物理的に整えてくれたのも孝之さん。精神的にも肉体的にも支えてくださって本当に感謝していますし、そういう座長の姿を間近で見て刺激を受け、自分ももっと頑張らなきゃダメだな!と思いました。
待ち時間によもやま話で盛り上がりすぎて、録音部さんから怒られたこともありますけど(笑)、それは、撮影があまりに過酷で、役者たちは待ち時間にワイワイしゃべることで気を紛らわすしかなかったからで。
仲野 待ち時間の雑談でバカ話をすることで、なんとか乗り切りました(笑)。
山田 いろいろありますけど、たぶん、一番慎重になったのは立ち回りです。もちろん本物の刀を振り回すわけではないのですが、本気でやれば刺さるし斬れる。
殺陣のシーンは何十手も先まで動きが決まっていて、仮に1人のタイミングが0.1秒ずれたら、そこから15手先にはズレが1秒になるかもしれず、そのズレた1秒によって刀がバン!と顔に当たる危険性もあるので。
仲野 アクションシーンは緊張感のある撮影がずっと続いて、怖いし、当たれば痛いし、夏だったのでとにかく暑くて、やってる時は常にひりひりする感じでした。
暑いと言えば、僕が演じた政の格好は、下はふんどし、上がマットを切って作った半纏だったので、重いし、暑いし、マットだから(もそもそして)かゆいし、さらに、劇中で“ある液体”をかぶって以降はず~っと臭かった(笑)。
仲野 僕は、物語の中盤ぐらいに出てくる、暴風と雨の中で作戦に臨むシーンを数日かけて撮影したのが強烈でした。普通、〝雨降らし〟というと、大体1発本番でワンカットだけ撮るような撮影が多いのですが、今回は長いシーンだったこともあり、一日中水浸しのまま全力で撮影。過酷に過酷を極めました。
山田 実はその間、別の企画が持ち上がりましたが、実現に至りませんでした。僕にとって、過去にお仕事をした監督からもう1回オファーをいただけるのは本当にうれしいこと。今回も、心身ともに相当苦しい撮影になるだろうなと思いましたが、やりたい気持ちのほうが断然強かったです。
仲野 前々から、白石監督といつかご一緒してみたいと思っていたので、まず白石監督からオファーをいただけたことがすごくうれしかったです。さらに孝之さんとW主演と聞いて、「こんな(夢みたいな)ことがあるんだ!?」と。
僕は白石監督と孝之さんが組まれた『凶悪』が深く心に残っているので、その“『凶悪』ペア”とできることにもとても興奮しました。
山田 これは白石さんだけということでなく、“頭で理解してほしくない”というタイプの監督はいらっしゃるし、そういう方の現場はやはり極限まで俳優を追い込みます。
それは俳優にとって、精神的にも肉体的にも辛いというのはわかっているけど、ある種“修行”に行くみたいなもので、時にはそこに挑む覚悟を持って、もう自分の頭では整理がつかないぐらいのところに自分を放り込まないといけないよなと思うんです。
その中でも白石さんの現場は大変さを感じることが多いのですが、その甲斐あって、できあがるものが爆発力のある素晴らしい作品になることはわかっているので、どうしたってやりたくなってしまう。たぶん、太賀もやってみてわかったと思うけど、ある意味トラウマレベルになるくらい(笑)しっかりお腹いっぱいにしてくれます。
山田 そう、うれしそうにニコニコしてる。
仲野 普段の監督は、どちらかというとクールだし、言葉もそれほど多くない方なんですけど、現場が過酷を極めてくると、たぶん、映画少年だった頃の白石少年が出てきて、目がキラキラ輝くんだと思います(笑)。その顔を見たらもう、俳優たちはなんとしても応えたい気持ちになります。
後編に続きます。
山田孝之(やまだ・たかゆき)
1983年生まれ、鹿児島県出身。1999年に俳優デビュー。2003年に「WATER BOYS」(CX)でTVドラマ初主演、翌年には「世界の中心で、愛をさけぶ」(TBS)で話題になる。映画『電車男』(05)で映画初主演を果たして以降、映画を中心に活躍。配信ドラマ「全裸監督」(19・21/NETFLIX)で全世界の注目を浴びる。さらに、映画『ゾッキ』(21)や『MIRRORLIAR FILMS』(22)では俳優の枠を越えて監督やプロデューサーを務める。近年の主な出演作には、映画『はるヲうるひと』(21)、『唄う六人の女』(23)、大河ドラマ「どうする家康」(23/NHK)、配信ドラマ「忍びの家 House of Ninjas」(24/NETFLIX)などがある。白石和彌監督とは、映画『凶悪』(13)以来の再タッグを果たす。
仲野大河(なかの・たいが)
1993年生まれ、東京都出身。2006年に俳優デビュー。2021年に映画『すばらしき世界』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞、ブルーリボン賞助演男優賞、2022年にエランドール賞新人賞を受賞。本作でW主演を務める山田孝之とは、映画『50回目のファーストキス』(18)以来の共演となる。近年の主な出演作に、舞台『もうがまんできない』、『いのち知らず』、『二度目の夏』、映画『熱のあとに』、『笑いのカイブツ』、TVドラマ「新宿野戦病院」「虎に翼」、「季節のない街」、「いちばんすきな花」など。現在、単独初主演となる舞台、M&Oplays プロデュース『峠の我が家』が上演中。他に『本心』(11/8公開)も控えている。また、2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」では、主演の豊臣秀長役を予定している。
『十一人の賊軍』
江戸から明治へと時代が変わる中で起こった戊辰戦争を背景に、罪人たちが新発田藩の命令により、新政府軍から命を賭けて砦を守り抜く姿を描いた時代劇アクション。『日本侠客伝』『仁義なき戦い』シリーズなどで知られる名脚本家の笠原和夫が残した幻のプロットを、『孤狼の血』『碁盤斬り』の白石和彌が監督、山田孝之と仲野太賀がW主演を務める。山田孝之は、妻を寝取られた怒りから新発田藩士を殺害して罪人となり、砦を守り抜けば無罪放免の条件で戦場に駆り出される駕籠かき人足の政(まさ)を、仲野太賀は、故郷を守るため罪人と共に戦場に赴く剣術道場の道場主・鷲尾兵士郎役を演じる。他に決死隊となる罪人たちを尾上右近、鞘師里保、佐久本宝、千原せいじ、岡山天音、松浦祐也、一ノ瀬颯、小柳亮太、本山力が演じ、さらに尾上右近、野村周平、音尾琢真、玉木宏、阿部サダヲらが共演。11月1日(金)より全国公開中。
公式 HP/https://11zokugun.com/
©2024「⼗⼀⼈の賊軍」製作委員会
配給/東映
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