2025.01.26
第3回 尾野真千子 【vol.03】
美しい人、尾野真千子。「隠す必要もない。むしろさらけ出しちゃってます(笑)」
大人の女性の美しさに迫るグラビア連載「美しい人」。第3回目に登場いただくのは尾野真千子さんです。1997年に芸能界デビュー後、数々の映画やドラマに出演、確かな存在感で今や時代を代表する女優と評価されています。どこでも自然体にこだわり自分らしさを大切にする尾野さんの「美」の秘密とは?
- CREDIT :
文/渡辺朋子 写真/渞忠之 スタイリング/大園蓮珠 ヘアメイク/石邑麻由 編集/森本 泉(Web LEON) プロデュース/Kaori Oguri
ありのままの自分を見据える尾野真千子さんの自然体の美しさに刮目せよ!
第3回ゲスト、尾野真千子さんのvol.03です(vol.01はこちら)。俳優として売れていくなかで、普通らしさを失っていく苦しさを感じたという尾野さん。そんな状況から、どう自分を取り戻したのでしょう?
【interview 03】
人に見られる立場になったことがうれしい反面、隠れたりする。その矛盾が嫌だった
尾野真千子さん(以下、尾野) こういう仕事をしていると、なんとなく堂々とできないっていうのかな。街を歩いていても、こそこそ隠れなきゃいけないみたいな。隠れる必要なんて何もないのに、ただ面倒くさいからでしょうね。「あ、◯◯さんだ」と言われるのが面倒くさくて、自分が何をしているか、何を買っているか、その何をというのをみんなに見られたくないから、一生懸命隠そうとしていたんだと思います。
尾野 うれしいですよ。でもそれも、何かのイベントだったり仕事として行っている時はいいんですけど、みんなプライベートは隠そうとしますよね。結婚した、子どもができた、そういうこともなんでも隠すのが普通というか。でも、それって気持ちが悪いですよね。みんなは普通に街を歩いて買い物とかしているのに、なんで私たちは、みたいな思いがあって。
自分はそういう立場になったんだという、ちょっとした優越感なのか、うれしいという気持ちもありましたけど、 その反面、隠れたりするんですよね。だけど、そういう矛盾が嫌だなと思って。ちゃんとみんなと同じように人間らしくいることで得られるものがたくさんあるし、芝居にとってもいいことがたくさんあるから、もう歳も歳ですし、隠す必要もないかと思いまして。
尾野 今は一切隠れてなくて、むしろ、さらけ出しちゃっているのでね(笑)。「尾野さんですか?」と声をかけられたら「そうです〜」って答えるし、時間がない時は「すいません、すいません!」って言いながら歩いてますけど、もう100%隠してないですね。それで喜んでもらえるならありがたいし、それでお店をやれるのも私の特権だし(笑)。
──それはある意味、自分を強く持っていないとできないことのようにも思いますが。
尾野 う~ん、なんだろう。覚悟?(笑) だから、人に見られても大丈夫なようにしていようとは思いますよね。と言っても、女優らしくいようともしてないですし、もう本当にすっぴんでエプロンつけて店のスリッパでその辺を歩いたり、草むしりをしています。「この前、草むしりしてた時に声をかけた者です」って言われたりもしましたね(笑)。まわりからどう見えているかはわからないですけど、本当に地元の人がたまに女優やってますみたいな感じです。でも、なんでも一生懸命やっていれば、誰に見られても恥ずかしくないなと思って一生懸命やってます(笑)。
尾野 それまでもいろんな役をやらせてもらったけど、ただ、こなしてるみたいな気持ちになっちゃったんでしょうね。でも、ただやるだけじゃダメで、そこにちゃんと意味を感じないと、私は納得しない。いろんな役をやらせてもらって、いろんな苦労やいろんな思いをしたけど、あれ? これでいいのかな? って。そういうことにモヤモヤしていたんだと思うんです。だから、このままじゃいけない、ちゃんと自分というものを取り戻さなきゃと思ったんでしょうね。
──そういう思いや経験を経て、今、仕事への向き合い方は変わりましたか?
尾野 今は自分が台本を読んで本当に納得して、今、私がやりたいものを選ばせてもらっています。前も自分で選んではいたけど、あまり何も考えずに来た仕事をこなしている感じだったから。今は芝居するにあたって必要なものとかが前よりは見えている気がします。所詮女優なんで、みんなの力を借りてですけどね。ただ台本を読んでおもしろいっていうだけでやるんじゃなくて、“これは今やるべきだな”と自分でちゃんと思ったものをやれています。それは本当に自分の中の感覚なので、いつも変わるんですけど(笑)。とても充実しているし楽しいです。
尾野 そうですね。今は声の仕事がしたいとか、ミュージックビデオをやりたいとか、 ヤクザの役がやりたいとか、その時の気分というか自分の中のテーマというか。でも、そうやって言っていると意外と叶ったりするので、口に出してみるもんだなと思います(笑)。
──現在Netflixで配信されている『阿修羅のごとく』も今やるべきだと感じた作品でしたか?
尾野 いやもう恐怖でしたけどね。作品的なことも共演者の方もそうですし。どんな人が見てくれるんだろうと思いながらドキドキしていますけど、めちゃめちゃおもしろいし、やっていてもめちゃめちゃ楽しかったです。
──ご自身が四姉妹だということも役に立ちましたか?
尾野 自分が生きてきた今までの人生、すべて役に立たせています。
──今後、役者として、人として、こうなっていきたい、こんなことをしていきたいという思いはありますか?
尾野 それがね、昔からないんですよ。やりたいことも本当にそのときどきで、そのわがままに事務所のみんながつき合ってくれるんです。だから、何かを目指しているっていうものはなくて、長く芝居を続けていけたらなっていう思いです。あとは、沖縄での生活をどんどん充実させていきたいかな。それも、何がしたいかは本当にそのときどきですね(笑)。
● 尾野真千子(おの・まちこ)
1981年11月4日、奈良県生まれ。1997年に河瀨直美監督作品『萌の朱雀』で主演デビューし、第10回シンガポール国際映画祭最優秀主演女優賞などを受賞。2007年には第60回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作『殯の森』で河瀨直美監督と再びタッグを組む。その後、ドラマ「mother」、NHK連続テレビ小説「カーネーション」、「最高の離婚」、「ライオンの隠れ家」、映画『クライマーズ・ハイ』、『そして父になる』など数々の作品で存在感を発揮。2021年には、『茜色に焼かれる』で第95回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞ほか多数の主演女優賞を受賞。現在「阿修羅のごとく」がNetflixで配信中の他、N H K特集ドラマ「憶えのない殺人」(2月22日NHK BS放送)、「まぐだら屋のマリア」(3月29日NHK BS4K放送)の放送が控えている。
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