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2023.12.17

「ザ・リッツ・カールトン福岡」は稀にみる夕陽の絶景ホテルでした!

2023年6月、ついに「ザ・リッツ・カールトン福岡」が開業。いま大きな発展を遂げる福岡に久しぶりに誕生したラグジュアリーホテルとして注目を集めています。その空間と体験はいかなるものか、実態をレポートします!

CREDIT :

文・写真/大石智子

ザ・リッツ・カールトン福岡 客室

福岡好き待望のラグジュアリーホテル

いま、福岡は「100年に一度」と言われる再開発プロジェクトが進行中。九州一の繁華街、天神で進む再開発事業「天神ビッグバン」では、対象エリアにある70棟のビルが2026年までに建て替わる見通しです。

さて、そこのところは経済誌などで読んでいただくとして、福岡って本当に楽しい街ですよね。何の知識なしに行っても、中洲を歩いているだけでワクワクしてくる。今回行った時も、九州中の若者が「飲むぞ!」と集まってきたような活気を感じて、つられて高揚しました。外国人観光客と地元民が入り混じる屋台もエネルギッシュ。あまり周りを気にせず、自分たちのテーブルや目の前の酒に一点集中している雰囲気には、欧州の酒場を思い出したりもします。

空港から中心部まで近いですし(クルマで約15分)、2022年5月からいち早く地下鉄にクレジットカードのタッチ決済を採用しているのも流石。随所が効率的で、そこに大らかさが合わさり快適です。

というわけで福岡好きであり、「ザ・リッツ・カールトン」好きでもある筆者。今年6月に「ザ・リッツ・カールトン福岡」が開業したと聞き、期待して向かいました。都市の規模のわりにラグジュアリーホテルが少なく、いきなり最高峰の誕生。外資だと他に「ヒルトン福岡シーホーク」が1995年に開業、「グランド ハイアット 福岡」が1996年に開業していますが、20年近くホテル事情は静かでした。
ザ・リッツ・カールトン福岡 鏡面仕上げのビル上部が「ザ・リッツ・カールトン福岡」。
▲ 鏡面仕上げのビル上部が「ザ・リッツ・カールトン福岡」。
立地は先に話した「天神ビッグバン」の大型案件となる「福岡大名ガーデンシティ」内。高さ111m、地上25階の複合ビルで、地上1・3階、18〜24階が「ザ・リッツ・カールトン福岡」です。福岡は空港から市街までが近いため航空法でビルの高さが70m前後に制限されていましたが、再開発特区では100m超まで緩和。交通量の多い明治通り沿いに、そのビルは壁面に空を映しそびえ立っていました。
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外の喧騒を忘れる静謐な空間

ラグジュアリーホテルは一歩足を踏み入れた瞬間、まったく異なる空間に連れていってくれるものですが、「ザ・リッツ・カールトン福岡」もそうでした。和紙を使った静寂な廊下が贅沢な世界を予感させ、たどり着くのはアライバルロビー。そこにはホテルのデザインコンセプトである“織り”を感じさせる糸のアートが壁一面に広がっていました。
ザ・リッツ・カールトン福岡 障子がモチーフの廊下。
▲ 障子がモチーフの廊下。
ザ・リッツ・カールトン福岡 ブラックオーキッドが香るアライバルロビー。壁には博多織の糸。
▲ ブラックオーキッドが香るアライバルロビー。壁には博多織の糸。
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18階のエレベーターホールで目にするのは、月と玄界灘を表す大きな屏風と、枯山水がモチーフの床。玄界灘を入口にもってくる渋いラグジュアリーがツボにはまります。全体のテーマを“織り”にしたことでキラキラし過ぎず、深みが備わり落ち着く。テンションとしては、「ザ・リッツ・カールトン日光」に通ずるものを感じました。
ザ・リッツ・カールトン福岡 1階のエレベーター前にも同じテーマの屏風があり、連動しています。
▲ 1階のエレベーター前にも同じテーマの屏風があり、連動しています。
ザ・リッツ・カールトン福岡 仕切り(左側)が透け感のある博多織の紋紙だから圧迫感がありません。
▲ 仕切り(左側)が透け感のある博多織の紋紙だから圧迫感がありません。
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そして、ロビーの窓の向こうは博多湾。湾に並行して大きく窓がとられているので、海の景色で到着を歓迎された気持ちになります。風が気持ちいいテラスもあり、チェックインより少し早く到着して、ここで待つくらいが正解と思えてきます。
ザ・リッツ・カールトン福岡 高い天井と低めの家具のコントラストがよい。
▲ 高い天井と低めの家具のコントラストがよい。
ザ・リッツ・カールトン福岡 和食「幻珠」の入口もこの重厚さ。
▲ 和食「幻珠」の入口もこの重厚さ。
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つい手が出てしまうラウンジの料理

「ザ・リッツ・カールトン」といえばクラブラウンジ目的で泊まる方も多いと思われます。福岡でもせっかくなら最上階(24階)にあるラウンジ「ザ・リッツ・カールトン クラブ」のアクセスが付く客室を。このラウンジをひとことで言うと、大好き。私見では、同ブランドの香港とこちらが2トップとなる印象です。

そう感じる理由は、総料理長の早坂心吾さんとラウンジのシェフの長野圭介さんが、「日本一のラウンジを作る」と明確な目標を掲げているからでしょう。
ザ・リッツ・カールトン福岡 専用のバーや個室もある「ザ・リッツ・カールトン クラブ」(6:30〜23:30)。
▲ 専用のバーや個室もある「ザ・リッツ・カールトン クラブ」(6:30〜23:30)。
ザ・リッツ・カールトン福岡 福岡県産白桃や糸島のプロシュート、八女抹茶などを使ったアフタヌーンティー。
▲ 福岡県産白桃や糸島のプロシュート、八女抹茶などを使ったアフタヌーンティー。
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フードプレゼンテーションは1日5回。福岡の食材をふんだんに使ったアフタヌーンティーに始まり、お肉も十分にいただける夜のオードブル、朝食まで、全体的にビュッフェでもシズル感が高め。普段、あまりビュッフェは気乗りしないのですが、夜のオードブルではつい食べ過ぎてしまいました。舌は素直ですね。

九州和牛のリエットや明太子キッシュは丁寧かつウィットが効いているし、オーダー式のローストポークはしっとりジューシー。先ほどアフタヌーンティーを完食したばかりなのに、隣のテーブルのご家族が、「カレーのクオリティ高いよ!」なんて話しているから、迷わず取りに行きました。結果、カレーが赤ワインを進ませる。そして〆はモンブラン。食後を考慮してか、滑らかなムース仕立てでマロンクリームも品がよかったです。

正直、ビュッフェのシェフは人目につきづらく、お話も聞いていないのですが、料理で「何か違うな」とセンスのよさや実直さを感じました。お皿の上だけで伝えるって凄いことですよね。
ザ・リッツ・カールトン福岡 右上から時計回りに、明太子キッシュ、モンブラン、九州和牛のリエット、帆立貝のマリネと地元野菜のピクルス。
▲ 右上から時計回りに、明太子キッシュ、モンブラン、九州和牛のリエット、帆立貝のマリネと地元野菜のピクルス。
ザ・リッツ・カールトン福岡 マスタードソースが添えられたローストポークと、牛肉がごろっと入ったカレー。
▲ マスタードソースが添えられたローストポークと、牛肉がごろっと入ったカレー。
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あと、都内ホテルのクラブラウンジは夜の営業が22時までのところが多く、「早過ぎる!」と思っていたところ、こちらは23:30までいられるのがありがたい(22時以降はスタッフ不在でセルフ)。ゆっくり自由気ままに過ごせます。
ザ・リッツ・カールトン福岡 フリードリンクには、「福岡クラフトブルーイング」のペールエールやシャンパンも用意。
▲ フリードリンクには、「福岡クラフトブルーイング」のペールエールやシャンパンも用意。

博多湾側の客室が夕陽の特等席

客室は19階から23階に位置し、計167全室が50㎡以上。うちスイートルームは20室で最大は「ザ・リッツ・カールトン スイート」(188㎡)となります。

今回、スイートも含め他の客室も見学しましたが、もう一度泊まるならまた同じ「クラブデラックスキング ベイビュー」(50㎡)に泊まりたい。なぜなら、その角部屋が絶好のサンセットビューだったからです。インパクトは夕暮れ時が一番強いですが、昼に入った瞬間からパワースポットのような絶景でした。
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ザ・リッツ・カールトン福岡 寝ているだけで幸せ。
▲ 寝ているだけで幸せ。
この部屋は理想のレイアウトでもありました。バスルームと寝室の間がガラスなので解放感があり、バスルームの向かいにあるクローゼットも広々。お風呂上がりの身支度も、窓辺でのお茶も、導線上で流れるようにこなせます。

無垢の木を基調にしたデザインはミニマムにして、別府の網竹に着想を得た引き戸など和のディテールが効いている。一番華やかなのがお風呂の壁というのもよい。
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糸島方面に陽が沈み始めると、客室からの眺望はハイライトを迎えます。夕陽が空を茜色に染め、船が港に戻ってきて旅情もひとしお。泊まった日は燃えるような夕陽で、雲があったから一層赤みが際立っていました。
ザ・リッツ・カールトン福岡 周りに高い建物がないので空が広い。
▲ 周りに高い建物がないので空が広い。
ザ・リッツ・カールトン福岡 神々しく沈む夕陽。
▲ 神々しく沈む夕陽。
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陽が完全に落ちると、次は秒ごとに空の色が移り変わるマジックタイム。もはや客室がマジックルームと化します。やがて街の灯りがポツポツとつき始め、美しい夜景へと変わっていく。時の流れのなかで時間を忘れるひとときです。
ザ・リッツ・カールトン福岡 七色を感じるマジックタイム。
▲ 七色を感じるマジックタイム。
この客室で最後に言いたいのは、夜のバスルームが艶っぽいこと。壁やシンクに使っている石がアートのような大胆な模様で、客室がシンプルな分、華やかなアクセントとなる。「あ〜、ここから眺めるお風呂きれいだなあ」と、ベッドの上から無人空間にしばらく見惚れてしまったのでした。
ザ・リッツ・カールトン福岡 夜に部屋の主役になる風呂(目隠しもあり)。
▲ 夜に部屋の主役になる風呂(目隠しもあり)。
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ザ・リッツ・カールトン福岡 小倉縞縞や久留米絣など福岡の織物をテーマにした作品が並ぶ客室前の廊下。
▲ 小倉縞縞や久留米絣など福岡の織物をテーマにした作品が並ぶ客室前の廊下。

九州男児なライオンもいます

滞在中に一度は会って欲しい相手はスパに常駐。あの、「ザ・リッツ・カールトン」のシンボルであるライオンのキャラクターが福岡では博多祇園山笠仕様なのです。一年のなかで博多が最も熱くなる祭りの装いは、世界のリッツのなかでトップの男気を演出しているかも!?
ザ・リッツ・カールトン福岡 彼女が着るのは博多絹の帯。
▲ 彼女が着るのは博多絹の帯。
スパでは九州の自然の恵みと古代より伝わる文化から着想を得た3種(海・米・竹)のシグネチャートリートメントを用意。もし圧が強い施術が好きなら、温めた竹を使う「ボタニカル・リバイブ」がおすすめです。

市街と博多湾を望む25mのプールは、太陽の光がよく入る気持ちいい空間。プールサイドにフォトスポット的なベッドがあり、主役気分を味わえそうです。男女ともにサウナもありますが水風呂はなし。プールとサウナは有料(3795円)ですが、その分、人が少なくなるのは有料のメリットかと思います。
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ザ・リッツ・カールトン福岡 いっそ派手なポーズで撮影を。
▲ いっそ派手なポーズで撮影を。

グルメシティ福岡の一部として

ダイニングはオールデイダイニング「Viridis(ヴィリディス)」、カフェ「Diva」、「ザ・ロビーラウンジ」、会席、鮨、鉄板焼を揃える「幻珠」の4軒を用意。鮨は北青山のミシュラン一つ星店「鮨 将司」が監修する「幻珠 by 鮨 将司」です。

贅沢なお籠りとするなら「幻珠」へ。鉄板焼では年間900頭しか出荷されない銘牛の壱岐牛を味わえます。食事の前に注目なのが、エプロンのストラップがホテルのシンボルであるライオンであること。鉄板焼の料理長・谷口祐卓さんが、「お客さまがワクワクするものを」と考案したそうです。確かに「リッツに来たぞ!」という特別感を得られてテンションが上がります。
ザ・リッツ・カールトン福岡 使い心地もよいライオンのストラップ。
▲ 使い心地もよいライオンのストラップ。
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ザ・リッツ・カールトン福岡 谷口祐卓さんは「ザ・リッツ・カールトン東京」の「ひのきざか」の鉄板焼料理長を務めていました。
▲ 谷口祐卓さんは「ザ・リッツ・カールトン東京」の「ひのきざか」の鉄板焼料理長を務めていました。
「幻珠」では壱岐牛以外にも、長浜港にあがった朝採れのヤリイカ、唐津のウニ、宮崎のキャビアなど、福岡を中心に九州の美味しい食材が集結。活き活きとした食材のパワーに都会の洗練されたセンスが重なるコースを提供します。
朝食は「Viridis(ヴィリディス)」やクラブラウンジでのビュッフェもありますが、今回は客室での和朝食に決定。その理由は、総料理長の早坂心吾さんが元は「ザ・リッツ・カールトン日光」の総料理長であったから。日光の朝食といえば美食の玉手箱のようでSNSでも大人気。その話をしたところ、「それなら」とホテルの方に三段重の和朝食をおすすめされたのです。

登場したお重には、博多名物の胡麻カンパチや本日のお造り、豚の角煮や鯵フライ(山椒風味のタルタルまで美味!)が入り、もう「日本酒を開けていいですか?」といった気分になる豪華さ。客室だから誰にもバレないですし、お酒を飲んでそのまま二度寝なんてダメなコースへ誘う朝食です。魅惑的なものを前に怠惰になるのも旅の醍醐味。
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ザ・リッツ・カールトン福岡 お米は佐賀産の「さがびより」を使用。和朝食6500円。
▲ お米は佐賀産の「さがびより」を使用。和朝食6500円。
ちなみにビュッフェでは明太子と明太フランスを常備。ここの明太フランスの明太子の量は尋常ではなく、販売もしているのでお試しください。東京へもって帰り、温めなおして食べたらワイン泥棒でした。
ザ・リッツ・カールトン福岡 流石に明太子の量が多い!
▲ 流石に明太子の量が多い!
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バーでの夕陽のために戻ってきたい

宿泊するのが一番よいですが、難しい場合はぜひ日暮れ前にバー「Bay」へ。今回は1泊だけだったので、滞在中は客室でゆったりして、チェックアウトした日の夕方にバーへ向かいました。「Bay」のテラスからも、海側の客室と同じアングルで美しい夕陽を眺められます。冬は寒いかもしれませんが、それでも心を掴む景色に惹かれて外に出たくなりそう。
ザ・リッツ・カールトン福岡 手前は「明太マティーニ」2400円、奥が博多美人2500円。
▲ 手前は「明太マティーニ」2400円、奥が博多美人2500円。
カクテルは、明太子をインフュージョンしたウォッカを使った「明太マティーニ」、芋焼酎に金木犀とエルダーフラワーが香る「博多美人」など、福岡色の強いシグネチャーをお試しあれ。そのカクテル片手に眺める夕景は本当に幻想的。海外ともまた違う非日常で、記憶に残る1シーンとなるでしょう。このテラスを目がけて福岡に行きたいと思うくらい、気持ちがいい場所でした。
ザ・リッツ・カールトン福岡 DJも常駐するので夜遊び気分が上がります。
▲ DJも常駐するので夜遊び気分が上がります。
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ザ・リッツ・カールトン福岡 落ち着いたムードのテーブル席もあり。
▲ 落ち着いたムードのテーブル席もあり。
以上が、「ザ・リッツ・カールトン福岡」の全容。冬休みや週末旅に、少し贅沢をして新たな福岡を知るために訪問してみては? そのホテルにあったのは、この街をもっと好きになる景色や時間。物理的にも気持ち的にも、福岡を前より近くに感じるような滞在でありました。
ザ・リッツ・カールトン福岡 博多織の老舗「西村織物」による錦糸のアートが見入ってしまう美しさ。ロビーラウンジに展示。
▲ 博多織の老舗「西村織物」による錦糸のアートが見入ってしまう美しさ。ロビーラウンジに展示。

■ ザ・リッツ・カールトン福岡

料金/1泊10万2200円〜(1室2名利用時)
HP/https://www.ritzcarlton.com

大石智子(おおいし・ともこ)

● 大石智子(おおいし・ともこ)

出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

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