2023.12.24
「ザ・ホテル青龍 京都清水」
京都好きなら一度は泊まりたい唯一無二のヘリテージホテル。大人だからこそ楽しめる仕掛けとは?
コロナ渦中の2020年にオープンした京都東山のラグジュアリーホテル、「ザ・ホテル青龍 京都清水」。昭和8年に建てられた元清水小学校を保存・活用して造られた京都随一のヘリテージ(遺産)ホテルは、3年目を迎えてますますその存在感を増しているのでした。
- CREDIT :
文/森本 泉(LEON.JP)
子供たちが通った学舎としての面影が残る佇まいは唯一無二
昭和8年に建てられた小学校校舎を保存、活用して作られた館内には、子供たちが通った学舎としての面影が随所に色濃く感じられます。そのノスタルジックな佇まいは、間違いなく唯一無二のもの。
すぐれた機能や最新のデザインなら予算が許せばいくらでも新たに手に入りますが、歴史はそうはいきません。だからこそ、このホテルが持つ価値は贅沢でかけがえのないもの。違いのわかる旅慣れた大人にこそ味わってほしい。というわけでホテルの魅力に迫ってみました。
古いのに新しい。過去と現在が美しく同居するホテル
ホテルフロントのある南棟は人造石の洗い出し仕上げ&タイル張りで、最上階にはアーチ状の連窓が並び、赤いスパニッシュ瓦葺きの屋根が印象的です。この南棟を含めた3棟がコの字型に配置され、センターの大きな階段で繋がれています。
でも、それが単なる博物館の陳列とは違って、得も言われぬストーリー性を持って迫って来る。それは過去の遺構を最新のラグジュアリーホテルのデザインの中にうまく組み込んで、過去と現代が調和する独自の世界観を作り出しているから。
ゆえにこのホテルは全体として「古いのに新しい」という不思議な印象もたらします。その感覚は他では味わったことのないものでした。
▲ アーカイブコーナーには小学校として使われていた当時の写真や地域にまつわる資料などが保存・展示されている。
3階部分に増築された廊下からは、元講堂だった南棟の屋根を支えていた木製の腕木が、今はデザインとして壁を飾っているのを見ることができる。
▲ 校舎前の校庭だったスペースには芝生が敷かれ宿泊客が憩える空間になっている。ここからも八坂の塔が印象的な姿を見せる。左には「ブノワ京都」が。
▲ 後から新築した部分の建物はすべて黒で統一。以前からの建物との境がひと目でわかるようになっている。
▲ アーカイブコーナーには小学校として使われていた当時の写真や地域にまつわる資料などが保存・展示されている。
3階部分に増築された廊下からは、元講堂だった南棟の屋根を支えていた木製の腕木が、今はデザインとして壁を飾っているのを見ることができる。
▲ 校舎前の校庭だったスペースには芝生が敷かれ宿泊客が憩える空間になっている。ここからも八坂の塔が印象的な姿を見せる。左には「ブノワ京都」が。
▲ 後から新築した部分の建物はすべて黒で統一。以前からの建物との境がひと目でわかるようになっている。
京都という街の魅力をドラマティックな空間づくりで演出
ポイントは東山のシンボルである法観寺・八坂の塔。500年以上前に再建された美しい塔は京都好きにとって欠かせないモニュメントですが、ホテルではその姿を実にうまく取り込むことに成功しています。
「パノラミックスイート」など一部の部屋からは塔を主役にした京の街の風景が望めるほか、宿泊客専用のゲストラウンジでも、塔に向かって開けた全面のガラス壁から、四季を通じてそのドラマティックな姿を拝むことができます。目の前には桜の木が植えてあり、春には桜越しの塔を眺めることもできるって最高ではないですか。
どちらも居心地の良さは格別です。法観寺・八坂の塔を望む絶景を独り占めできる贅沢な空間はこのホテルの強い武器。歴史と地の利を生かしたドラマティックな演出は、ホテルに素晴らしいストーリー性を与えています。
追憶を刺激する仕掛けが控えめに盛り込まれる巧みさ
さらに「九食」の食器には、この地で伝統的に作られてきた焼き物である清水焼を使用。ホテル館内のデザインをモチーフにしたオリジナルの器を手掛けている「蘇嶐窯(そりゅうがま)」は、ホテルから5分ほどの場所に夫婦二人で営んでいる窯。娘さんは元清水小学校の出身だったというご縁もあるそうです。
▲ まるで図書館の中にいるかのように懐かしい思い出が蘇る「restaurant library the hotel seiryu」。
▲ 「Well-being Breakfast」と名付けられた朝食は「京の和朝食」「京の朝鍋」など7種類から選べる。写真は「卵2個をお好みのスタイルで 京都ポーク添え」。テラス席でいただく朝食は最高に気持ちいい!
「九食」に使われる器はホテル館内をモチーフにした遊び心あふれるオリジナル制作の清水焼。
▲ 「九食」の器を制作している「蘇嶐窯」の涌波まどかさん。福岡・小石原焼の窯元に生まれ、「蘇嶐窯」の涌波蘇嶐さんと結婚。以来、ふたりで作陶を続けてきた。ホテルから5分ほどの工房を兼ねたショップでは作品を買うこともできる。HP/https://soryu-gama.com/
▲ まるで図書館の中にいるかのように懐かしい思い出が蘇る「restaurant library the hotel seiryu」。
▲ 「Well-being Breakfast」と名付けられた朝食は「京の和朝食」「京の朝鍋」など7種類から選べる。写真は「卵2個をお好みのスタイルで 京都ポーク添え」。テラス席でいただく朝食は最高に気持ちいい!
「九食」に使われる器はホテル館内をモチーフにした遊び心あふれるオリジナル制作の清水焼。
▲ 「九食」の器を制作している「蘇嶐窯」の涌波まどかさん。福岡・小石原焼の窯元に生まれ、「蘇嶐窯」の涌波蘇嶐さんと結婚。以来、ふたりで作陶を続けてきた。ホテルから5分ほどの工房を兼ねたショップでは作品を買うこともできる。HP/https://soryu-gama.com/
そもそも学校というのは誰にとっても郷愁を誘う場所。感受性の豊かな子供時代に見た光景は大人になってもずっと心のどこかに残っているものです。そんな追憶を刺激する仕掛けが「いかにも」ではなく、控えめに盛り込まれることで、宿泊者はいつの間にかホテルの創りあげるドラマの主人公になったような気分になれるのです。その演出の巧みさは実に心憎いものです。
京都をこよなく愛するアラン・デュカスのビストロも
例えばこのホテルにはプールもスパもなければ、常設のレストランすらありません※。祇園も近いこの場所では、少し歩けば美味しい店もいっぱいあるし、好きなように食べてください。その代わり、美味しい朝食は用意していますというホテルのメッセージを感じます。
旅慣れたモテるあなたにこそ泊まって欲しい特別なホテル
ここはそんな余裕のある大人にこそふさわしい、つまりは旅慣れたモテるあなたにこそぜひ泊まって欲しい特別なホテル。歴史と文化のストーリーを纏った贅沢な大人時間が味わえます。