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2022.06.19

featuring 中橋 健

ハミルトン ベンチュラの斬新さに惹かれて

お洒落な男性なら誰もがステキな時計を持っているものです。そこでこだわり男子に、こっそり愛用時計にまつわるエピソードをインタビュー。実に興味深いお話がアレコレと飛び出します。

CREDIT :

写真/多田 悟(Rooster) 文・構成/長谷川 剛(TRS)

会社の建物内に紳士・淑女のためのバーをオープン

大出剛士
中橋 健さんは、クラシックなスーツをダンディに着込み、老舗の広告会社を経営するれっきとした紳士。しかしそれだけではありません。なんと夜には別の顔を持ち、文芸キャバレー「ビターズエンドクラブ」のジェネラルマネージャー“ナッキー”として、夜ごと無聊をかこつお客たちを相手に、趣向を凝らした接待を繰り広げていると言います。

今回はそんな素敵でちょっと風変わりなゼンマイ紳士をピックアップ。二足の草鞋ライフを実践するジェントルマンは、一体どんな時計を愛用しているのか、今から興味シンシンです。

「実は自分が働く広告会社の社屋を2019年にリニューアルしまして、フロアのひとつを『ビターズエンドクラブ』というキャバレーにしたんです。これまで我々は、銀座を拠点に広告業を営んできました。時にクライアントなどと交流を深める意味で、夜ともなれば色々なお店に出掛けることもしばしば」
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ビターズエンドクラブ
▲ 今回の取材は中橋さんがジェネラルマネージャーを務める会員制「ビターズエンドクラブ」にて。1920年代を意識したキャバレーの店内はクラシカルでちょっとアヤしげ。今年5月から本格再始動となるそうで、各種イベントも多彩に予定しているとのこと。 https://www.bittersendclub.com
「しかし、昨今は時流もずい分変わって、いかにも銀座らしい!と思えるお店は減少の一途。ならば自分好みのお店を自分自身でプロデュースすればイイだろうと考えたのでした。

もともと僕は1920年代という時代に憧れを持っており、関連する小説や映画を観ると、当時はエンタテインメントも華やかで夜のお店もしつらえだけでなく、非常に洒落たサービスを提供していたことが分かります。そういった要素を旺盛に盛り込んだ夜の店を作ろうと、この『ビターズエンドクラブ』を構想したのです」
ビターズエンドクラブ
▲ 週末には妖艶なバーレスクショーが楽しめるところもこの「ビターズエンドクラブ」の特色。その他20年代風のフラッパーファッションを纏った淑女にも出会えるとか。これまた興味シンシン。
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すべてに華やかな1920年代へのオマージュ

いきなり、かなりスケール感のあるストーリーですが、それにしてもナゼに1920年代なのでしょう?

「ご存知の方も多いと思いますが、1920年代はアートや文芸、それにファッションも含め、いろいろなカルチャーが大きく華開いた時代。それまで存在しなかった斬新なアイデアが次々生みだされ、またそれを広く楽しむ余裕もありました。その黄金時代に僕は若いころからリスペクトを抱いているのです」

なるほど、ピシッと3ピースのスーツでキメられているのも1920年代つながり、ということなのでしょう。確かに現代メンズファッションが確立し、隆盛を見たのが1920、30年代だと言われています。
中橋 健
▲ スーツスタイルが非常に板に付いている中橋さん。服装はもちろん髪形までしっかり整えており、どこから見ても銀座のジェントルマン。ちなみに写真の一着はディストリクト ユナイテッドアローズの3ピース。
「今も昔も男性の一張羅と言えばスーツ。広告マンもつい最近まではスーツが“制服”でした。しかし最近は、同業者もまったく仕事にスーツを用いていない様子。さらに世の中的にも“クールビス”や“カジュアルフライデー”と言って、なにかスーツがお荷物みたいな扱い。しかし、そのお陰でスーツスタイルを貫いている自分は、逆に目に付く存在になっているみたいです(笑)」
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革新的だけど過剰過ぎないベンチュラに共感

そんな気骨溢れるドレッサーによって選ばれた時計が、ハミルトンのベンチュラというワケなのです。
ハミルトン ベンチュラ
▲ 革新的なフォルムやラグ形状、それに文字盤デザインに魅了され購入したハミルトンのベンチュラ。約10年前、国内の時計店にて購入したものとのこと。中橋さん自身は「目立ち過ぎたり高価過ぎる時計はスタイルを崩します。自分は目立つよりも似合っているねと言われたい」と語ります。
「そうですね、ベンチュラが誕生したのは1950年代。あのエルビス・プレスリーが着用したことでも知られる名品ですが、僕はこの一本にアールデコの精神に通じるオーラを感じました。

時計でありながら大胆なアシンメトリック・デザインや世界初のエレクトリックムーブメントなど、1920年代マインドに共通するエポックメイキングなスペックこそベンチュラの魅力。

今愛用しているモデルは2010年くらいに手に入れたものですが、以来オンもオフもだいたいベンチュラで通しています」
ハミルトン ベンチュラ
▲ オリジナルに近い黒文字盤かつ黒ストラップにて愛用。10余年の愛用期間中、ストラップは3回交換したとのこと。できればもう一本、メタルブレス仕様のベンチュラが欲しいと語ります。
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目立つより「似合っている」と言われたい

確かにお似合いですが、スーツスタイルにマッチさせる時計となると、他のモデルも候補として上がったのではないでしょうか?

「そう、カルティエのタンクなども非常に気になる時計です。でも、僕は生来、ガチャガチャした人間。夜は店頭に立って接客などもしますし、繊細な本格時計はすぐに傷つけてしまいそうで……。

確かに知り合いからは『もっと高い時計をしたら』と言われることもあります。しかし身に着けるアイテムばかりが突出した装いは、スタイルとしてバランスが悪いと感じています」
「まあ、決して高価な時計ではないベンチュラですが、コレが意外に銀座のクラブなどではウケがイイんです。場所柄そういった人が非常に少ないということもありますが、スーツスタイルにこの風変わりな時計の組み合わせは、一定以上のサプライズを引き起こすポテンシャルを持っているようです(笑)」
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旅の相棒となった形見のシーマスター

そんな中橋さんに、もう一本のコレクションを見せていただきました。それはオメガのダイバーズ。非常に年季の入ったシーマスターでした。
オメガ シーマスター プロフェッショナル
▲ 父親から譲り受けた思いで深い一本だと中橋さんが語る、オメガのシーマスター プロフェッショナル 300m。初出は1993年。ジェームズ・ボンドの時計としても知られている高機能ダイバーズウォッチです。
「これは僕の父親の形見。恐らくですが、外国の免税店などで思い付きのまま購入した一本かと(笑)。父は泳ぐのが大好きで、映画の『007』もお気に入り。そういったシンプルなチョイスだと思っています。

ただ父は晩年、コレを何する時にも身に付けており、それゆえにキズが全体に付きまくり。ですが個人的にはそういった使い方が非常に好ましく、僕も気にせずガンガン付けるようにしたいと思っています。
オメガ シーマスター プロフェッショナル
▲ 気を遣い過ぎることなくモノをしっかり使い切りたいと考える中橋さん。父譲りのシーマスターはそんな中橋さんにぴったりの時計。モノって納まるべきところにちゃんと納まるものなんです。
シーマスターは防水時計なので、主な使用シーンはバカンスの時が多いですね。バリやシンガポールを旅するのが好きなので、そういった旅行の際には、ベンチュラからこのシーマスターに付け替えて出掛けます。

ピカピカすぎないのが、むしろ海外旅行には丁度良いように思っています(笑)」
中橋 健 (株式会社 三弘社 代表取締役社長 兼 ビターズエンドクラブ ジェネラルマネージャー)

● 中橋 健 (株式会社 三弘社 代表取締役社長 兼 ビターズエンドクラブ ジェネラルマネージャー)

銀座にて100年以上の歴史を持つ広告会社を取り仕切るエグゼクティブ。2019年に自社社屋をリニューアルし、その一部を会員制の文芸キャバレー「ビターズエンドクラブ」としてオープン。当店舗の責任者も兼任する。

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