2020.10.03
Vol.03
【名品・腕時計】ヴァシュロン・コンスタンタンのあの名作が愛され続ける理由
数多の時計のなかでも「名作」と呼ばれるモデルを、時計のプロが語ります。第3回目は、"ラグジュアリースポーツウォッチ"として名高い、「ヴァシュロン・コンスタンタン」のオーヴァーシーズ。3度の世代交代を経てもなお、アイコニックであり続けるワケを探ります。
- CREDIT :
写真/蜂谷哲実(hachiya studio) 文/鈴木裕之
10年単位でスタイルを変えてきた、トラベルウォッチの名モデル
大海原を越えるというネーミングが示すように、このモデルに秘められたコンセプトは“現代の旅時計”。そのスポーティな肢体には、トラベルウォッチとしての堅牢さが現れています。今回は、3度の世代交代を経てきたオーヴァーシーズの変遷を追います。
〜オーヴァーシーズがアイコニックな3つのポイント〜
(1)オーヴァーシーズのルーツは「222」にあらず?
(2)ラグジュアリースポーツにあらず、本質は旅時計
(3)旅時計だからこそ、チェンジストラップが面白い!
(1)オーヴァーシーズのルーツは「222」にあらず?
が、敢えてここで“それは違うぞ”と言ってみると、時計好き同士が集う酒の席で、かなりのマウントが取れる(かもしれない)。ポイントは、なぜ222からオーヴァーシーズまで、一気に20年近くもワープするのか、なのです。
▲1977年に登場した222。ベゼルには脱着工具を引っ掛けるために無数のミゾがある。
▲1984年から5年間だけ製造された333は、カドの取れた八角形ケースに。直径も32mmと小ぶり。ブレスレットのデザインは、222から引き継がれているのがわかる。
▲333の後に登場したフィディアスは、再びラウンドケースに。ベゼルが印象的ではあるが、オーヴァーシーズのようなデザイン性はまだない。
▲1977年に登場した222。ベゼルには脱着工具を引っ掛けるために無数のミゾがある。
▲1984年から5年間だけ製造された333は、カドの取れた八角形ケースに。直径も32mmと小ぶり。ブレスレットのデザインは、222から引き継がれているのがわかる。
▲333の後に登場したフィディアスは、再びラウンドケースに。ベゼルが印象的ではあるが、オーヴァーシーズのようなデザイン性はまだない。
ベゼルに設けられた、脱着工具を引っかけるミゾが、後のオーヴァーシーズとの類似項とされますが、これが222の絶対的なアイコンだったわけではありません。というのも、222にはスクエアモデルすらあったのだから。
これから考えられるのは、初代オーヴァーシーズとは、フィディアスをベースに、スポーティさを盛り込む試みだったということ。
初代のデザインワークに参加したディノ・モドロ氏と、「ヴァシュロン・コンスタンタン」のデザインチームは、この新型スポーツウォッチに、マルタ十字のフォルムを模したベゼルと、インゴットのようなデザインの薄い3ロウブレスレットを与えました。フィディアスの面影を残すのは、わずかにリュウズガードのみ。これはまったく新しいデザインワークと言っていいでしょう。
(2)ラグジュアリースポーツにあらず、本質は旅時計
そんなオーヴァーシーズが第2世代へと進化するのは、2004年のこと。マルタ十字のモチーフはブレスレットにも盛り込まれるようになりました。第1世代から現行の第3世代を含め、もっともマニッシュな力強さを持っているのは、第2世代でしょう。
▲「オーヴァーシーズ・デュアルタイム」自動巻き、SSケース(41mm)×ブレスレット(アリゲーターストラップとラバーストラップが付属)、15気圧防水。266万円/ヴァシュロン・コンスタンタン
▲現行オーヴァーシーズが持つ魅力のひとつが、かなり手の込んだダイアル。全色がラッカー仕上げとなるが、色味によって大きく仕上げと表情が異なるのも特徴。写真のシルバーは、視認性の高いしっとりとした質感だが、これがブルーなどになると、下地の違いによるアニメーション効果なども楽しめる。ダイアルカラーの選択は、オーヴァーシーズを選ぶ際に最も悩むポイントだろう。
▲「オーヴァーシーズ・デュアルタイム」自動巻き、SSケース(41mm)×ブレスレット(アリゲーターストラップとラバーストラップが付属)、15気圧防水。266万円/ヴァシュロン・コンスタンタン
▲現行オーヴァーシーズが持つ魅力のひとつが、かなり手の込んだダイアル。全色がラッカー仕上げとなるが、色味によって大きく仕上げと表情が異なるのも特徴。写真のシルバーは、視認性の高いしっとりとした質感だが、これがブルーなどになると、下地の違いによるアニメーション効果なども楽しめる。ダイアルカラーの選択は、オーヴァーシーズを選ぶ際に最も悩むポイントだろう。
(3)旅時計だからこそ、チェンジストラップが面白い!
現行モデルとなるこのジェネレーションでは、他に先駆けて本格的なインターチェンジャブルブレスレットが導入されました。ケースデザイン自体も、荒々しさが目立った第2世代よりぐっとソフィスティケートされ、上質感が増しています。
エレガンスと両立できる十分な強さと、1本でさまざまなシーンに対応する柔軟さ。オーヴァーシーズの本質である“旅時計”は、1本で10年間楽しめる時計と言うこともできるでしょう。そして10年後には、次の世代のオーヴァーシーズが、新たな楽しみ方を提案してくれるかもしれません。
■ お問い合わせ
ヴァシュロン・コンスタンタン 0120-63-1755