2021.05.24
Vol.08
セラミック時計といえばシャネル「J12」! その魅力と進化に迫る
数多の時計のなかでも「名作」と呼ばれるモデルを、時計のプロが語ります。第8回目は、「シャネル」のJ12。セラミックを使った腕時計の先駆けとして登場し、20年以上に渡って進化し続けるアイコンなのです。
- CREDIT :
文/鈴木裕之
シャネルの“不変のスタイル”を体現するアイコン
ブランドのコードカラーであるブラック&ホワイトの世界感を、セラミックで表現したJ12。今回は、J12がどのようにしてアイコンへと進化したのかを考えます。
「J12」が不変のアイコンである3つのポイント
(1)セラミックモデルの先駆となったブラック&ホワイト
(2)何も変えずにすべてが変わった現行モデル
(3)ポップな進化と真面目な進化
(1)セラミックモデルの先駆となったブラック&ホワイト
そのデザインを手掛けたのは、18歳でシャネルに入社し、40年もの長きにわたってアーティスティックディレクターの重責を担った故ジャック・エリュ。パリのヴァンドーム広場や、香水「シャネル N°5」のボトルストッパーに範を取ったレディースウォッチプルミエール(1987年)のデザインも手掛けた人物でした。
彼のチームが新しい男性用腕時計の開発に着手したのは1993年頃。そのコード名は「エクス・ニヒロ」(ゼロから生ずるの意味)であったと言われています。これが後のJ12となるのですが、驚くべきことにこのモデルは、決して斬新なデザインではなく、むしろクラシックとも呼べるようなディテールで構成されていました。
ただし、ひとつひとつのディテールが重なり合って醸し出すバランス感覚は完璧。セラミックという素材を除けば、J12は生まれながらにして、完璧な古典だったのです。
(2)何も変えずにすべてを変えた現行モデル
▲ 2019年にフルリニューアルを経た新生J12。一見しても変化はわかりにくいですが、実にパーツの70%に変更が加えられています。「J12」自動巻き、高耐性セラミック×SSケース(38mm)×ブレスレット。200m防水。73万1500円/シャネル(シャネル カスタマーケア)
▲ 「J12」自動巻き、高耐性セラミック×SSケース(38mm)×ブレスレット。200m防水。73万1500円/シャネル(シャネル カスタマーケア)
▲ シースルーバックからのぞくのは、自社製ムーブメントCal.12.1。
▲ 2019年にフルリニューアルを経た新生J12。一見しても変化はわかりにくいですが、実にパーツの70%に変更が加えられています。「J12」自動巻き、高耐性セラミック×SSケース(38mm)×ブレスレット。200m防水。73万1500円/シャネル(シャネル カスタマーケア)
▲ 「J12」自動巻き、高耐性セラミック×SSケース(38mm)×ブレスレット。200m防水。73万1500円/シャネル(シャネル カスタマーケア)
▲ シースルーバックからのぞくのは、自社製ムーブメントCal.12.1。
リニューアルのコンセプトは「何も変えずに、すべてを変える」。キーとなったのは、「シャネル」も資本参加しているケニッシによるオリジナルムーブメントの導入でした。「チューダー」や「ブライトリング」といった時計業界の本格派たちと基本設計を共有する新しい心臓は、従来機よりもさらに繊細で、何よりエクスクルーシブな存在だったのです。
それに伴い、スティール製のソリッドバックだったケース裏まで高耐性ハイテク セラミック製となり、さらにシースルー化されています。ディテールは煮詰めたにせよ、腕にした感覚はまさにJ12そのまま。
古典ゆえに何も変えられないという制約を逆手にとって、すべてをゼロから作り直した新生J12は、新たなアイコンとして生まれ変わったのです。
(3)ポップな進化&真面目な進化
製法自体はやや乱暴にも思えますが、その寸法精度は長年セラミックの焼成技術を磨いてきた「シャネル」ならでは。最も防水性に負荷のかかるバックケースのサファイアガラス外周には、新たにスティール製のリングが加えられるなど、技術的なバックアップも十分なものでした。
どちらも外装をポップに進化させるだけでなく、シャネル自社製ムーブメントの流れを汲むキャリバー3.1を搭載し、“マニュファクチュール・シャネル”の実力を存分に見せつけているのです。
■ お問い合わせ
シャネル カスタマーケア 0120-525-519