2021.06.28
第7回
腕時計の基本、3大複雑機構のひとつ「ミニッツリピーター」とは?
音で時を知らせる「ミニッツリピーター」は、機械式時計ファンの垂涎の的。でも、その聞き方は? どうやって音を鳴らしているの? そんな疑問にお答えします。
- CREDIT :
文/高井智世
音で時を知らせるミニッツリピーター
「リピーター(repearer)」とは、ひと言でいうと、音で時刻を知らせることができる機能のこと。その中でもミニッツリピーターは、分単位で知らせる細やかな精度を備えています。
ロマンティックな世界へ誘う美しいな音色、古い起源、そして、複雑な機構ゆえの希少性──。まさに時計愛好家たちの憧れの的といった魅力を備えるミニッツリピーターについて紹介します。
闇夜に時を知るための機構として誕生
発明当時は鐘の付いた置き時計でしたが、1783年にアブラアン-ルイ・ブレゲが鐘に相当するパーツをリング状のゴングに置き換えたことで、懐中時計に収まるまでに小さくなりました。この方式が現在のリピーターウォッチの原型となっています。やがて精度も30分、15分などの大まかな単位から、1分単位に対応するミニッツリピーターへと発達していきました。
精緻な組み立てにより、美しい音色を叶える
操作をした瞬間が何時何分かを伝えるミニッツリピーターは、一般的には高音と低音の音を鳴らす2つのゴングと、それを打つハンマーの組み合わせによって、「時単位」「15分単位」「分単位」の3種類の時間が表されます。低音が「時」、高音と低音の交互が「15分」、高音が「分」の音です。
例えば、以下のムービーの最後のシーン。まず「時」を表すゴングが12回、次いで「15分」の2音の組み合わせが2回、さらに「分」のゴングが6回鳴っています。それにより知らされる時間は、12時36分(15×2+6)という事になります。
現在でも時計技術の最高峰に君臨し、時計愛好家たちの垂涎の的であり続けています。
趣はそのままに進化するミニッツリピーター
1969年、クオーツ式時計の登場(いわゆる“クオーツショック”)により、スイスの機械式時計メーカーの多くが姿を消しましたが、1980年代後半からは機械式時計ならではの機構の魅力を前面に打ち出すことにより人気を回復させていきました。
このゴングは音波の伝導を考慮し、風防のガラスと一体で作られています。透明感溢れる音色は、まさに技術の進歩がもたらしたものでした。
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