見た目そのままで刷新された「タンク マスト」
このタンクの揺ぎ無いスタイルをベースにしつつも、ダイヤルのデザインやカラーリングで新しい表現に挑戦したのが、1970年代に誕生したマスト ドゥ カルティエでした。このコレクションはクオーツムーブメントなど、当時の最新技術を積極的に取り入れることで若い世代を中心に大ヒット。つまり、タンクという時計はクラシカルで優雅に見えますが、いつだって前衛的で、モダンで、最先端だったということ。
そしてその哲学が、2021年の新作タンク マストへと受け継がれたのです。
中身もストラップも“エコ”に進化!
まずはクオーツムーブメントから解説していきましょう。タンクの繊細なケースデザインには、小さく設計できるクオーツムーブメントが適しています。それは70年代のマスト ドゥ カルティエにて、すでに実践済みです。
しかしタンク マストでは、ただのクオーツムーブメントではなく、電池寿命が約8年という高効率のクオーツムーブメントを採用しました。通常のクオーツムーブメントは約2年で電池を交換することを考えると、そのロングライフ性能は見事。電池交換に頻度が伸びれば廃棄電池も減りますから、結果的にエコになるのです。
光を駆動源とするモデルも登場
しかし「カルティエ」は、意外な方法でその問題を解決しました。ダイヤルのローマン数字のインデックスをくり抜いて、下のソーラーセルに光を当てているのです。つまり、ソーラーセルとダイヤルを2層構造にしたということ。
こうして、ダイヤルの高級感を維持したまま、ソーラー発電を可能にしたのです。ただし、これだけ小さなスペースだと、発電量は微々たるもの。それでも時計を動かすために、発電効率を高めつつIC回路などを省エネ化も図りました。
タンクの先進性は、このようにしてタンク マストへと受け継がれる── 。見た目はクラシカルなまま、中身は先端を歩んでいるのです。
そして、高性能のクオーツムーブメントとソーラー発電という2つのエコ技術を語ってきましたが、実はストラップでもエコを実現しています。一部のラグジュアリーメソンでは“ファーフリー宣言”とともに、動物由来の毛皮や革素材の使用を縮小しつつありますが、「カルティエ」も新素材ストラップの開発に着手。
ソーラーモデルのストラップは、素材の40%がスイスやドイツ、イタリアの農産物加工産業用に栽培されたリンゴの廃棄物からできています。しかしながら、見た目もさわり心地もカーフストラップそのものなのだから、驚きです。
こういった試みは、時計業界ではまだまだ始まったばかり。しかし「カルティエ」のようなビッグメゾンが先んじて行動することは、業界を動かす大きな原動力になるでしょう。現代のタンキストとは、地球環境と未来を見据えて行動できるオトコのこと。それって、とってもカッコいいことですよね。
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カルティエ カスタマー サービスセンター 0120-301-757