2021.07.24
Vol.08
【名作腕時計】なぜ、タグ・ホイヤー「カレラ」は生まれたのか?
数多の時計の中でも「名作」と呼ばれるモデルを、時計のプロが語ります。第8回目はモータースポーツウォッチの雄「タグ・ホイヤー」の『カレラ』です。パフォーマンスを追求して作られたその誕生エピソードをどうぞ。
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文/福田 豊
モータースポーツと歩みをともにする「カレラ」の魅力
前身である「ホイヤー」が創業したのは1860年。創業当初から「時間を計測すること」に着目し、ストップウォッチやクロノグラフの開発に心血を注いでいました。1889年にはパリ万国博覧会でスプリットセコンドクロノグラフ搭載の懐中時計を出品し、銀メダルを受賞。1916年には他に先駈けて1/100秒計測可能のストップウォッチ「マイクログラフ」と「マイクロスプリット」を開発。
その革新的な技術と精度が認められ、1920年のアントワープ大会から3回連続でオリンピックの公式計時を担当するなど、次々と名声を獲得しました。タグ・ホイヤーはホイヤーの時代から、まさにスポーツウォッチの名門として世界に知られる存在だったのです。
モータースポーツウォッチの名作「カレラ」の3つのポイント
(1)タグ・ホイヤーとモータースポーツの親密な関係から誕生
(2)トップレーサーが愛した確かな視認性
(3)タグ・ホイヤーとポルシェの新たなコラボレーション
(1)タグ・ホイヤーとモータースポーツの親密な関係から誕生
そしてそんな中で誕生したのが、モータースポーツウォッチの歴史的名作カレラです。
閑話休題。
カレラを作ったのは創業家4代目で、現在の名誉顧問である、ジャック・ホイヤー氏。モデル名は1950年代の伝説的な公道レース「ラ・カレラ・パンアメリカーナ・メキシコ」(ラ・カレラ パナメリカーナ メヒコ)から採られたものです。
当時、「ホイヤー」はアメリカのセブリング24時間レースの公式計時を担当していました。そのレース中に、ジャック・ホイヤー氏はラ・カレラ・パンアメリカーナ・メキシコのことを耳にしたそうです。同レースは3000kmを超える長距離に加え、ヒルクライムやハイスピードコーナーなど難コースが連続するハードなもの。F1チャンピオンらも参戦する人気レースでしたが、あまりの過酷さに死傷事故が多発、わずか5回の開催で1954年に幕を閉じました。
ジャック・ホイヤー氏は、その「カレラ」という名前に魅了されます。ジャック・ホイヤー氏の自伝『THE TIMES OF MY LIFE』にはこんな風に書かれています。
“カレラ”とはスペイン語で「レース」の意味。しかしそれ以外にも「キャリア」や「道」「コース」などさまざまな意味がある。そしてそれらはすべてホイヤーにとって大切なものである。そこでスイスに戻るとすぐに「ホイヤー カレラ」を商標登録。次につくる時計は“カレラ”と呼ぶべきだと考えた、と。
(2)トップレーサーが愛した確かな視認性
ジャック・ホイヤー氏は、1958年に「ホイヤー」に入社。同年、2つのラリーに参加します。最初のラリーではドライバーを務め善戦。2戦目でジャック・ホイヤー氏はボーイスカウト時代に培った地図読みという特技があったため、副操縦士の役割を担当しました。ラリーは順調に進んだものの、終盤にストップウォッチ「オータヴィア」のダイヤルを1分単位で読み間違え、その結果1位から3位へ降格してしまったそう。
そこでジャック・ホイヤー氏は激怒するとともに「オータヴィア」のダイヤルが見難いことに気付き、そしてより視認性に富んだダッシュボードストップウォッチの名作「モンテカルロ」を作ったのです。
そして実際、「カレラ」はその優れた性能と機能性がレーシングドライバーたちの人気を集めることになります。わけてもニキ・ラウダやジル・ヴィルヌーブといったトップレーサーに愛用されたことが“伝説”となったのです。
でも、ジャック・ホイヤー氏はラリーに参加していたものの、プロのレーサーだったなんて聞いたことがない。本人だってビックリするんじゃないかしら。ということで、トンデモ記事には、ご注意を。
(3)タグ・ホイヤーとポルシェの新たなコラボレーション
そんな長い関係がありつつも、実はこれまでタグ・ホイヤーとポルシェのパートナーシップの時計はつくられたことはなく、2021年のタグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ ポルシェスペシャルエディションが記念すべき初モデルとなったのです。
▲ 「タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ ポルシェスペシャルエディション」自動巻き、SSケース(44mm)×ブレスレット。100m防水。71万5000円/タグ・ホイヤー(LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー)
▲ 「タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ ポルシェスペシャルエディション」自動巻き、SSケース(44mm)、レザーストラップ。100m防水。69万3000円/タグ・ホイヤー(LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー)
▲ 「タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ ポルシェスペシャルエディション」自動巻き、SSケース(44mm)×ブレスレット。100m防水。71万5000円/タグ・ホイヤー(LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー)
▲ 「タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ ポルシェスペシャルエディション」自動巻き、SSケース(44mm)、レザーストラップ。100m防水。69万3000円/タグ・ホイヤー(LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー)
ケースバックに覗く自動巻きのローターも、「ポルシェ」のステアリングホイール=ハンドルのデザインに。独特のダイヤルは、レーシングコールのアスファルトを模したものです。そして何より、こんなスペシャルなモデルが限定ではないのが素晴らしい。
なお、「タグ・ホイヤー」と「ポルシェ」のパートナーシップは今後も続くそう。新たな蜜月を、我々ファンも楽しませてもらいましょう。
■ お問い合わせ
LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー 03-5635-7054