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2023.08.15

VOL.12 「電気自動車ってなんだ?」

BMWとトヨタが強力タッグ! 電気を超える!?水素でクルマ社会に変革を

自動車ブランドとして初めてサステナビリティに関する部署を設けて50年。BMWという会社の、もうひとつの顔がそこにはある。そして、その活動を全面的にバックアップしているのが世界のトヨタなのだ──。

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文/藤野太一 編集/近藤高史(LEON)

世界で最も「サステイナブル(持続可能)」な自動車メーカー

「BMW iX5 Hydrogen」
「Sheer Driving Pleasure(駆けぬける歓び)」というスローガンを長年にわたって掲げているBMW。それだけを見ると、走ることにばかり傾注していて、環境への配慮がおろそかになっているのではと思われる人もいるかもしれない。けれどBMWは、実は世界でもっとも先進的な取り組みをしている自動車メーカーのひとつである。

1973年には、自動車メーカーとしては初めて社内にサステイナビリティ&環境保護部門を設立。1999年に設立されたダウ・ジョーンズ・サステイナビリティ・インデックス(DJSI)では、長年にわたって世界で最も「サステイナブル(持続可能)」な自動車メーカーとして、選定を受けている。
「BMW i3」
▲「BMW i3」
2013年に発表された同社初の市販BEV&レンジエクステンダーEV、i3は、軽量化のために車台の大部分にカーボン(CFRP)を採用。インテリアではシートにはリサイクルペッドボトル、加飾パネルにはユーカリなど環境に配慮した木材を使用。製造を行うドイツ・ライプツィヒ工場では、必要な電力を工場内に設置した風力発電で賄うなど、サステイナブルを具現化してきた。近年は世界で初めて従来の原油に代わり、有機廃棄物から得られるナフサやバイオメタンなどを原料とする防錆コートとマット塗料を採用。さらに塗料製造に伴うCO2排出量を40%削減するなどしている。
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日本で発表したFCEVの未来図

環境問題への意識は高いが、だからといってすべてをBEVにする、と言わないのがBMWらしいところ。2025年までのBEVの累計目標販売数は200万台、2030年にはグローバルでセールスの50%をBEVと見込んでいる。2030年に100%を目標として掲げるメーカーが多いなかで、極めて冷静な判断といえるかもしれない。

したがってBMWは現在、ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車、プラグインハイブリッド車、48Vマイルドハイブリッド車、電気自動車とさまざまなラインアップを用意する。そして7月25日には、日本においてFCEV(燃料電池車)「BMW iX5 Hydrogen」の公道走行を開始すると発表した。
「BMW iX5 Hydrogen」
▲「BMW iX5 Hydrogen」
ちなみにFCEVとは、燃料として水素を充填し、水素と酸素の化学反応によって生まれた電気エネルギーを使ってモーターを駆動する、いわゆる電気自動車だ。

メリットとしては、走行時に発生するのは水蒸気のみで、排出ガスを一切出さない。そして長時間の充電が必要なBEVと違ってわずか3~4分で水素タンクの充填が完了する。それでいてBMW iX5 Hydrogenの航続可能距離は最大504kmを達成。要は従来の内燃エンジン車と同様の使い勝手ながら、排出ガスゼロを実現しているのだ。
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一方でデメリットは、燃料電池スタックは高コストで、水素タンクは高圧に耐える必要があるため小型化が難しく必然的にコンパクトカーへの採用が難しい。また水素ステーションをはじめとする供給インフラもまだ十分とはいえない。

ちなみに現在市販されている燃料電池車はトヨタMIRAI、ヒョンデネッソのみ。ホンダのクラリティはすでに生産終了している(開発は継続しているという)。
このような状況下で、なぜBMWはFCEVの実証実験を始めるのか。実はBMWは、2006年に水素エンジン車の実証実験を行っていた。当時の7シリーズをベースとしたHydrogen7は、今回と同様に日本の道でも実験が行われていた。

BMW iX5 Hydrogenの発表会のために来日していたBMWグループ 水素燃料電池テクノロジー・プロジェクト本部長 ユルゲン・グルドナー氏はその点についてこのように振り返る。
「BMW iX5 Hydrogen」
▲ 発表会で登壇したユルゲン・グルドナー氏。
「乗用車において水素を直接燃焼させることは効率の面で大きな課題があるという結論に達した。そのため、現在は水素を発電に使う燃料電池へと方針を転換している」
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実はトヨタとBMWは2013年に、燃料電池の開発において協業する正式契約を締結している。シンプルにいえば、MIRAIの技術供与を受けているというわけだ。2015年には初代MIRAIのFCシステムをベースとした5シリーズGTをつくって実験をはじめており、このiX5 Hydrogenは、2代目MIRAIをベースとしたものという。BMWらしいのは、アウトバーンを走行することを想定し、MIRAIそのものではなく、高出力モーターを使ってアシストすることで最高出力400PSオーバーの高性能モデルに仕立てていることだ。
「BMWのサステイナビリティ戦略においては、使えるすべての技術を使って脱炭素を図っていかなければならない。そして原材料を調達するところから生産まで脱炭素化が必要で、その結果、燃料電池も使っていなければならないという結論に至った」という。

ちなみにトヨタは電動化において「マルチパスウェイ」という方針を打ち出しており、BEV、PHEV、FCEV、HEVのすべてに取り組んでいる。そして、FCEVは「商用車を軸に量産化」を目論んでいるという。このあたりはBMWの見立てとも共通しており、乗用車、小型商用車あたりはBEVで、中型トラックをさかいに大型トラックなどをFCEVでカバーするのが現実的なラインと想定しているという。
「BMW iX5 Hydrogen」
▲ FCEV発展には水素ステーションの普及が不可欠。
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水素社会を実現するための課題とは?

FCEVを活用するためには新たに水素ステーションの設置が必要になるが、欧州でのケースをマッキンゼーが試算したところによると、2050年に公道を走る車両が100%BEVになった場合に比べて、FCEVを併用したほうが状況によっては3割以上資産投資総額を低く抑えることができるとしている。インフラ整備のコストを含めてもFCEVを活用したほうが、経済性が高いという。この試算はおそらく日本にもあてはまるだろう。

ちなみに商用車を軸に量産化した場合、気になるのは乗用車のFCEVはどうなるのかだが、その点について水素の利活用推進に関するシンポジウムに登壇したトヨタ自動車 水素ファクトリー プレジデント 山形光正氏は次のように述べた。
「水素については“つくる”、“はこぶ”、“ためる”、“つかう”という4つの要素を同時に進めることが肝要で、乗用車よりも多くの水素を必要とする大型の商用車をFCEVに置き換えることで水素の利用量を増やし、関連するさまざまな事業者がビジネスとして成立することが前提となる。こうした水素市場の拡大によって、乗用車のFCEVもより走りやすい環境が整い、水素社会が進歩していく」
BMWとトヨタの提携は、Z4とスープラというスポーツカーの姉妹車を生み出した一方で、こうした先進的なFCEVの姉妹車が誕生している点はとても興味深い。いずれにせよ、プレイヤーが増えなければ、マーケットの拡大は見込めない。BMWグループは、2020年代後半にはこうした燃料電池車を市場投入する予定というが、一日も早い発売を期待したい。
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「BMW iX5 Hydrogen」

◆ 「BMW iX5 Hydrogen」(G05 FCEV)の主要諸元

・最高出力:295kw〔401PS〕
・2本の水素タンク(気体)のトータル容量:6㎏
・0-100 km/h加速性能:6秒未満
・最高速度:180km/h以上
・一充填走行距離(WLTPモード):504km
・水素燃料消費率(複合、 WLTPモード) :119 km/kg
・車両重量はX5のPHEVモデルと同等、X5のBEVより軽いという

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