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2024.06.30

改めて見直したい。レクサスLCは日本が世界に誇るべきプレミアムカーだ!

豊田章男社長(当時)のもと、レクサスブランド再興のため2017年から販売が開始されたレクサスLC。少量生産のため街で見かけることすら少ないものの、筆者はこのクルマが日本ならではの魅力に満ちた世界に誇るべきプレミアムカーだと語ります。

CREDIT :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第236回

最近、レクサスLC500に想うこと!

イラスト 溝呂木 陽 メルセデス ベンツGクラス
2012年のデトロイト モーターショー、、すでに12年も前のことだが、未だ鮮烈な思い出が頭に残っているモデルがある。レクサスLCのコンセプトカーだ。

当時のレクサスは、完全に色褪せたブランドに成り下がっていた。それを、豊田章男社長(当時)が再生すべく動き出したのだが、その具体的なアクション第1弾がレクサスLCだった。

レクサスのブランド再生にあたっては、僕もいろいろ意見を聞かれたり、議論に参加したりしたが、いつも気合が入っていた。

世界一の自動車生産国なのに、「世界に誇れるプレミアムブランドがない」ということに、とても悔しい思いを抱いていたからだ。
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1989年、初代レクサスLSはセンセーショナルな世界デビューを果たした。フランクフルトで開催された国際試乗会でお披露目されたLSは、世界中のジャーナリストから拍手喝采で迎えられた。

果たして、世界中の雑誌や新聞に出たLSの記事は賛辞に満ちていた。とくに、静粛性と品質に関しては、賛辞を超えて驚嘆の言葉が並んでいた。

そして、最重要市場の北米では、一躍人気車になり、レクサスの名を、一気に何段階も引き上げ、プレミアムブランドとして認めさせることに成功したのだ。

、、だが、その後、モデルチェンジは重ねたものの、2017年の5代目まで人の心を惹くような目立った進化はなかった。そして、レクサス全体も長い停滞期に入ることになる。

そんな状況を変え、レクサスに活気を呼び戻したのが、2009年からトヨタを率いることになった豊田章男社長だった。
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まずはスーパースポーツ「レクサスLFA」を送り出した。560psを引き出す4.8ℓV10は、「天使の咆哮」と呼ばれる快音を響かせ、クルマ好きたちのレクサスブランドへの注目度を一気に高めた。

しかし、LFAは最初から採算を度外視した企画であり、3750万円の価格でも大赤字。ゆえに500台の限定車とされた。

となれば、当然希少品となり、高額での取引が生まれるが、現状では1億円を超える取引も珍しくないと聞く。

こうして、トヨタはレクサスにかける熱い思いをまずはLFAで表現。次いで、現実的なクルマとして送り出されたのがLCである。

ここで、再び、2012年のデトロイト モーターショーに話を戻す。

「レクサスLC-LF」の名で発表されたエレガントで美しいスポーツクーペのコンセプトカーは、カバーを外すなり、一気に幾重もの人垣に囲まれた。
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何十年も世界のモーターショーを見続けてきた僕だが、日本メーカーのブースがこれほどの熱気に包まれたのは記憶になかった。

その後、別室で記者会見が行われたが、これまたすごい人人、、。広い会議室だったのだが、通路まで埋めつくされたのには驚いた。

僕は帰国してすぐ、トヨタのしかるべき立場の人たちにこのことを伝え、併せて僕の思いも伝えた。かなり熱い伝え方だったと記憶している。

それゆえにかどうかはわからない。だが、LCの開発に正式なGOサインが出るまで、時間はかからなかった。

美しいシルエットを守り、低いボンネットの下にどうやってV8を載せるのか。エンジニアにとってはこの辺りがもっとも厳しい問題だったようだが、クリアした。

そして、2017年に発売。LC500には自然吸気式5ℓ直噴V8が積まれ、LC500hにはハイブリッド式3.5ℓ直噴V6が積まれた。
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セレブたちが集まる欧米のしかるべき街にも場所にも、意気揚々と乗って出かけられる日本車がようやく出た。すごくワクワクした。

そして、2020年にコンバーチブル モデルが加わった時、ワクワクはさらに加速した。

これで、レクサスはいよいよ「本物のプレミアム クラブ参加資格?」が整ったと思った。

初期LCの走り味 / 乗り味については、不満な点もあれこれあったが、継続的に改良は進められた。しかし、欧米の代表車種との対比では、まだ残された課題は少なくない。

上記のように、LC500には自然吸気式V8と、ハイブリッド式V6が積まれたが、コンバーチブル モデルに積まれるのはV8のみ。

クーペも自然吸気式V8の人気は圧倒的だが、コンバーチブルはよりその度合いが強くなるのは明らかと予測したからだろう。
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僕もLCはV8が好きだ。ハイブリッド式や過給式のV8は今も少なくないが、高効率化への流れに押され、自然吸気式V8はごく少数派になっている。

最高出力477ps、最大トルク55.1kgmを引き出す5ℓV8は、素晴らしい回転感と伸び、そして刺激的でありながら繊細さをも感じさせる咆哮で惹きつける。

欧米のこの種のクルマは、今やパワー競争の体を呈していて、600psや800psなどザラにある。なので、絶対的パフォーマンスといったことになると「平凡な」としかいえない。

でも、僕の感覚では「これでいい!」「これで満足!」だ。昔からそうなのだが、僕は自分の身に余る、持て余してしまう類のものがあまり好きになれない。

手の中で転がすとまではいわないが、頑張ればなんとか持てるものを引き出し切れる、、そんなレベルの性能のクルマが好きなのだ。

夢中になって走らせ、夢中になって性能を引き出し、そのクルマの懐深く入り込めた、、そう感じられた時、僕はすごく満ち足りた気持ちになれるし、ハッピーになれる。
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「上を見ればキリがない」し、際限なく上がっていく天井を追い続けてもいつか虚しくなる、僕は自分の限界を知っているつもりだから、無駄追い、無理追いはしない。

それにしても、レクサスLCはスタイリッシュだ。クーペもコンバーチブルもエレガントでかつ美しい。

欧米のライバルたちは、美しくありながらも、どこか過剰さというか、動物に例えれば獰猛さ、、的な雰囲気を持っているものが少なくない。草食系、肉食系といった表現があるが、LCは間違いなく前者だ。

とてもモダンな家なのだが、そのひと隅にさり気なく飾られた繊細な書道掛け軸がピッタリ決まる。、、そんな例えもできるだろう。

つまり、レクサスLCのエレガントな姿佇まいは「日本的美しさ」、「日本からしか生まれえなかった美しさ」と言えるのではないか。

インテリアも上質かつ上品で、日本ならでは丁寧な作り込みがひと目でわかる。
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LCは、元町工場内の専用ラインで少数が生産される。効率重視の流れ作業ではなく、訓練を受けた作業員が1人で多くの工程を丁寧に入念にこなすライン構成になっている。

レクサスLCには夢中になった。日本でも、こんなにも「プレミアムなクルマができるんだ!」とうれしくて仕方がなかった。

クーペのルーフに近い、エレガントで美しいソフトトップのコンバーチブルが出た時も舞い上がるような気持ちだった。

しかし、もともと少量生産であり、街で見かけることもほとんどない。なので、最近、僕の意識から、その存在感は遠のいていた。

ところが、ふとしたきっかけでLCのホームページを開いたのだが、そのとたん、「いいなぁ~‼」との想いが再びハネ上がった。

LCって、日本でもっとも美しくエレガントなクルマだし、自然吸気式V8を積んでいるし、遠からぬうちに生産終了になるかもしれないし、生産台数も少ないし、、。
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さらには、日本最上位のプレミアムなブランドから生まれたクルマだし、自然吸気式V8の快感を後世に残すサンプルだし、希少性も高いし、、といったあれこれが浮かんできた。

つまり、レクサスLC、とくに5ℓV8を積んだLC500は、10年後20年後には価値あるクラシックの地位を獲得しているかもしれない。そんな想いが強く湧き上がってきたのだ。

さて、この僕の妄想、、みなさんはどうお感じでしょうか?

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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