最大の特徴は、新開発の5.2リッターV型12気筒エンジン。
ヴァンキッシュは、今回で3代目になります。最大の特徴は、5.2リッターV型12気筒エンジン。なんと、世のなかが電気自動車へと(ゆるく)向かうなかにあって、新開発というまことに大胆なことをやりとげてしまったのです。
ボディは、側面から見たときの流れるようなシルエットに、ためいきが出るほど。より美しいスタイルが欲しいと、先代ともいえる「DBS」よりホイールベースを延ばしています。これも大胆、だけどクルマ好きにはうれしい英断です。
ボンネットの造型しかり、フロントタイヤ背後のエアアウトレットしかり、後端がめくれるように持ち上がってリアスポイラーの働きをするダックテールしかり、すぱっと垂直に切り落としたようなコーダトロンカっていうリアエンドしかり、であります。
とりわけ、1956年の「DBR1」や、63年と64年の「DP212」「DP214」それに「DP215」(DPはディベロプメントプロジェクトの略)といった、レーシングカーを彷彿させます。
伝統的のスタイリッシュさがさらに進化
「ヴァンキッシュは、ウルトララグジュアリーなパフォーマンスと、英国製スポーツカーのスタイリングを合わせたもの」。アストンマーティンでチーフクリエイティブオフィサーを務めるマレク・ライヒマン氏は、舞台になったサルディニアで語っていました。
いたずらに過激なデザインでなく、伝統的なスタイリッシュさを特徴とするアストンマーティン。今回のヴァンキッシュも、スーツ、似合うと思いますよ。オシャレしたデートにもいいかんじ。さすが英国製と感じさせるキャラクターです。
ドライブすると、このエンジン、すごいのひと言。1000Nmもの最大トルクが2500rpmから出ますから、発進からしてたいそう力強く、エンジン回転が4000rpmにさしかかるあたりから、ターボチャージャーが効きはじめて、怒濤の、というかんじで大パワーが後輪を駆動して、車体を押し出します。
クルマ好きのオヤジさんならわかっていただけると思いますが、12気筒のよさとは、トルク感。つまり、アクセルペダルを軽く踏んだだけで、すぐに加速していく力強さにあります。
ノングノーズ後輪駆動でもカーブは得意です
いつまで乗っていられるかわからない12気筒ゆえにいまこそ、という思いを持つクルマ好きが多いということです。ハイブリッドを含めた電動車にも魅力はあるものの、12気筒エンジンというぜいたくなイメージもまた大事なのですね。
小さなカーブだろうとすいすいと曲がるし、カーブを抜けたあとのダッシュ力もたいしたもんです。スポーツカーでもっとも重要なパーツのひとつであるブレーキはたいへんよく効き、自分のからだがヴァンキッシュと合体したような感覚でドライブできます。
価格は、33万英ポンド。1ポンド=195円として、6430万円になります。アストンマーティンジャパンによると、日本での価格は販売店に問い合わせてほしいとのことです。
■ Aston Martin Vanquish
【SPEC】
全長×全幅×全高=4850×1980×1290mm
ホイールベース=2885mm
5204ccV型12気筒 後輪駆動
最高出力/614kW@6500rpm
最大トルク/1000Nm@2500〜5000rpm
8段オートマチック変速機
車重/1774kg
価格/33万英ポンド
■ アストンマーティンジャパン
HP/https://www.astonmartin.com/ja
● 小川フミオ
クルマ雑誌、グルメ雑誌の編集長を経て、フリーランスのライフスタイルジャーナリストとして活躍中。新車の試乗記などクルマ関連を中心に、グルメ、ファッション(ときどき)、他分野のプロダクト、人物インタビューなどさまざまなジャンルの記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。