
これだと思うディテールには大胆に寄りましょう
化粧品や時計の広告を多く手がけていたスタジオで腕を磨いた。その経験が現在に続くスタイルなのだそう。
「コスメや時計とスケールは違えども、クルマもガラスと鉄で出来た“光りモノ”じゃないか、という考え方でした。そのプロダクト美を通じて、“クルマは思っているより美しい”ことに気づいてもらいたいし、写真としても格好いいと感じてもらえる表現がしたい」
クルマの広告撮影はディテールを見せるため、白バックと言われる、白い壁(白ホリ)や白い板で囲んで光を回す手法が一般的だが、岡村さんの現場はほとんどが黒バックだ。
「シャドーが効いているところから少しずつ強調したい部分を選んで、ギュッと詰まった感じで撮りたいんです。美しさを感じるのに、ディテール全部を見せる必要はないですから」
これだと思うディテールには大胆に寄り、シャドウとグラデ―ションとエッジを映し込んで切り取る。
「屋外ロケでクルマを撮ることも多いですけど、このクルマのここは、スタジオでこう撮りたいなぁとか、いつも考えていますね」
ボディの抑揚をモノクロの光と影で表現しました

911ならではのディテールに思い切って寄りました

斜め上からの強い光でボディの抑揚感を表現しました

複雑なディテールをハイライトと影のグラデーションで浮かび上がらせました

被写体と正対することで、強調すべきポイントが見えてきます

クルマの特性を象徴するディテールを切り取りましょう

時には大胆に目線をかえて見ると、新たな発見があります

● 岡村昌宏
大学を卒業後3年間、中央官庁の外郭団体に勤めていたという異色のフォトグラファー。その後スタジオ修行でコスメや時計などの撮影に携わる。クルマのプロダクト美をスタジオワークで引き出す第一人者として、メンズ誌やライフスタイル誌、自動車雑誌で表紙や連載を多数担当。現在もクルマ以外に、時計などのプロダクトの撮影をはじめ、人物や旅の写真などジャンルにとらわれる事なく幅広く撮影をしている。
URL/www.crossover-inc.jp
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