2024.01.08
なぜ今、この名品がモテるのか? 【PART1】ワークブーツ
我々オヤジ世代が何度か通ってきたワークブーツがいま、久々にリバイバルしています。ラグジュアリーブランドからモード、そしてイタリアオヤジも熱視線を注ぐ、タフでボリューミーなワークブーツ現象を徹底検証です!
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文/竹石安宏(シティライツ) イラスト/Isaku Goto 編集/長谷川茂雄
武骨な足元が久々のリバイバル!
それらのブームを通ってきた世代のオヤジさんにとっては、思わず「懐かし〜!」と叫びたくなるはず。なぜなら今回の流行は、1990年代前半から始まったヴィンテージ&レプリカアメカジブーム以来、約30年ぶりとなる本当に久々の本格復活だからです。
では、今回のワークブーツのリバイバルには、果たしてどういった背景があるのか。そして、いま我々オヤジはどのようなワークブーツをチョイスし、どう履きこなせばお洒落に見えて、モテるのか。
あらためて、検証してみようではないですか。
文字通り肉体労働用の長靴であるワークブーツですが、その発祥を特定するのはなかなか難しい。なぜなら、かつては王侯貴族以外の市民が履く靴は、すべてワークシューズだったともいえるからです。
なかでもよりハードな労働に従事するワーカー用に特化した、丈夫な皮革でスネまでカバーするブーツが、現在のワークブーツの原型となったと思われます。
そんな原型のひとつが、現代レザーシューズの生誕地である、スコットランドやアイルランドに古くから伝わる「ブローガン」という作業用の民族ブーツだと言われています。パーフォレーションやピンキングなどのいわゆるブローギングが施された、現在のカントリーブーツに近いスネ丈のブーツですが、これが開拓時代のアメリカへ渡り、我々が知る今日のワークブーツへと進化していったというわけです。
そうした現在のワークブーツを形作った立役者のひとりが、1905年に米国ミネソタ州で創業したレッド・ウィングです。
創業当初はまだドレスシューズに筒をつけたようなワークブーツを製造していましたが、やがて独自のデザインやパーツを考案し、独創的なプロダクトを開発。そして1950年代、タフなオイルドレザーにボリューミーなユーチップデザイン、ホワイトソールを採用した傑作「アイリッシュセッター」を誕生させ、今日のワークブーツのイメージを決定づけたのです。
レッド・ウィングの他にもホワイツやウエスコ、チペワなど、アメリカにはワークブーツを語る上で欠かせないブランドが数多くありますが、ブーム時に双璧としてレッド・ウィングと度々並び称されるのが、1973年にニューハンプシャー州で創業したティンバーランドです。
現在はアウトドアブランドのイメージが強いですが、その原点は世界初の完全防水を実現した山岳労働者用のレザー製ワークブーツ。当時は製材業者を意識した「ティンバーランド」というモデル名でしたが、大好評を受けて社名となり、正式名を「6インチ プレミアム ウォータープルーフブーツ」、通称「イエローブーツ」と呼ばれるようになりました。
シリコンを染み込ませたヌバック素材にボリューミーなラウンドトゥ、アンクルパッド、インジェクションソールなど、独自のアイコニックな要素満載のイエローブーツは、ワーク&アウトドアの枠を超え、ファッションとして大流行したのです。
ボリューミーなブーツがランウェイをも闊歩
これは我が国に限った話ですが、いままでワークブーツは“アメリカンカジュアル”という文脈に則って流行してきました。
つまり、スタジャンにスウェット、ジーンズ、そして足元にはワークブーツというように、あくまでアメカジの足元として履かれてきたわけです。が、今回の流行もアメカジの一環かというと、どうやらそうでもない。
それはラグジュアリーブランドの動向を見れば明らか。彼らがワークブーツ系のブーツを提案する際、アメカジ系の服と合わせているかというと、そんなことはないからです。
またワーク系と同時に、ミリタリー系や山系などのブーツも提案されていることもポイント。そう、つまりラグジュアリーブランドは、“ボリューム感のある男らしいレザーブーツ” を提案したいのであって、それはワークブーツに限らず、アメカジとも関係ないというわけ。
例えば日本のアイ ジュンヤ ワタナベ マンがティンバーランドとコラボし、真っ黒のイエローブーツをこの秋冬に発表しているのも、アメカジではなくモードとしてもワークブーツが注目されている証左でしょう。
こうした動向を検証すると、今回のワークブーツ流行の理由が見えてきます。
それは長らく続いたスニーカーブームがひと段落し、軽やかスポーティな足元に代わるモノを模索した結果、重厚でタフな靴=ワークブーツ(またはミリタリーブーツやクライミングブーツ)に行き着いたという、ファッショントレンドの文脈から生まれた流行ということです。
いまどきのこなし方は、白スニ感覚が正解
まずひとついえることは、先に挙げたまんまアメカジスタイルに合わせるのは、NGということ。なぜなら今回の流行は、アメカジとはほぼ無関係であり、以前の流行を知る人が見れば、そんなスタイルが古っぽく見えてしまうから。
で、こんなときも頼りになるのが、ミラノやフィレンツェを闊歩するイタリアオヤジなんですね。彼らも今回のワークブーツリバイバルを敏感に捉えており、いまやその足元はワーク一択と言っても過言ではないほど。
履きこなしはスーツやジャケット、テーラードコートといったオヤジの定番ワードローブを主軸に、足元のアクセントとして採り入れている印象です。これまで白スニが担ってきた、足元のハズし的なポジションに取って代わったイメージ。
つまり、いつもの装いに採り入れるだけで、ボリューミーで武骨な足元がスタイル全体を新鮮かつ洒脱なバランスに見せてくれるって仕掛けです。ただし、短丈のテーパードパンツやロールアップにより、ブーツの存在感を強調するのが、いまどきなバランスのキモとなるので、お忘れなく。
40代以上のオヤジさんなら、一度は履いたことがあるはずのワークブーツ。今回はかつて履いたアイリッシュセッターやイエローブーツをクローゼットの奥から引っ張り出しても通用するゆえ、ぜひ久々に足を入れてみてください。もちろん、ラグジュアリーブランドの最新作で差をつけるのもありです。
いずれにしろ、久々に履くタフで男らしい存在感のある足元に、きっとあらためて気分がアガるに違いないかと。ただし、かつて一緒に着たアメカジセット一式は、まだ封印しておいてほしいのですが(笑)。