2024.01.30
西野亮廣が着る、“染まらない”オトコのスタイル PART3
時代のエッジを凝縮させたモードスタイルには、大人の色気とエレガンス、そしてファッションの楽しみがつまっています。そんなモードのポテンシャルを、著名人が華麗に披露するこの連載。第8回目のゲストは、芸人や童話作家としての活動に留まらず、新たな地平を求めて飛躍する、キングコングの西野亮廣さんです。
- CREDIT :
主演/西野亮廣 写真/前田 晃 スタイリスト/久 修一郎 ヘアメイク/Hanjee(SIGNO) 文/大塚綾子 編集/伊藤勇司(LEON.JP)
大人なモードの遊び方 第8回 主演 西野亮廣
“染まらない”オトコ PART 3
分業制で制作した絵本『えんとつ町のプペル』は大ヒット、その後もアニメーション映画やブロードウェイでのミュージカル制作など、次々と新しい挑戦を続け、独立独歩で自分の信じる道を行く、まさに“染まらない”オトコなのです。
そんな西野亮廣さんを主演に迎えた「大人なモードの遊び方」第8回は、“染まらない”オトコがテーマ。最先端のモードを纏いながらもどこか懐かしい、モノクローム映画のような世界へと誘います。
BOTTEGA VENETA
軽やかに裏切る、ウィットに富んだレザーシャツ
縫製は一切せず、手作業で編み上げたイントレチャートのバッグは、メゾンの優れたクラフトマンシップを体現するユニークなピース。ほのかにブルーがかった繊細な色合いのカーフレザーには、大胆にブラックのブラッシュペイント加工を施して味のある表情に。装いに唯一無二の個性をもたらす飛び道具です。
VALENTINO
大人のプレッピーは、“染まらない”がキーワード
表情豊かなブークレウールのネイビージャケットは、パイピングやボタンもネイビーゆえに控えめでシック。その分、胸ポケットにあしらった純白のロゴ刺繍が、品よく際立ちます。白×黒のボーダーニットで潮の香りを漂わせつつ、ストライプシャツのルーズに結んだタイや、ウォッシュがかかったワイドデニムでほどよい抜け感を演出するのが正解。
正統派プレッピーなスタイルに敬意を払いつつも、決してそれ一色に“染まらない”のが大人なモードのさじ加減なのです。
■ Interview
尽きることのない好奇心を胸に、挑戦は続く
かつては芸人から絵本作家へと転身を遂げ、その後もアニメーション映画やブロードウェイでのミュージカルの制作など、次々と未知の領域のプロジェクトに挑む西野さんにとって、挑戦とは? その原動力やかつての思いなど、たっぷりとうかがいました。
誰もが踏み出す勇気をもらえるインタビューです。
── 活動の軸足を置いていたテレビから離れてみようと、決めたきっかけはあったのでしょうか。テレビのレギュラー番組を降りて、絵本作家に挑戦するのは怖くなかったのですか?
西野亮廣さん(以下、西野) 高校を卒業して芸能界に入って、ありがたいことにすぐに売れたんですよね。25歳の時にはMC的な立ち位置で出演してきた『はねるのトびら』が、深夜帯からゴールデンタイムに上がって、レギュラー番組もたくさんいただいて。40代、50代になっても、なんとなく自分はテレビの世界にいるんだろうなと、想像がつきました。ただきっとこのまま軸足というか、両足をテレビに置いていても、いわゆる頂点を極めるのは難しいだろうというのも見えていて。残りの人生をその確認作業で過ごすのは、ちょっと辛すぎたんです。どちらかというと、チャレンジした方がまだマシかも、という消去法ですね。身動きが取れない、選択肢が少ないという状況は、あまりにも危険だから、新しいことを始める。僕はどちらかというと大分、安全策を取るタイプなんです。
そこで、どうせ挑戦するなら、次は海外にも繋がるようなアプローチをしたいと思って、翻訳のハードルが低く、海外の人たちにも伝わりやすい絵本を選びました。ただ最初は全然結果が出なくて、売れるまでにかなり時間がかかっちゃいましたけどね。
芸人から絵本作家へというチャレンジは、先が見えなかったし怖かったんですけれど、いろいろやってきたので、今はもう免疫がつきました。自分が抱えているスタッフは絶対に守ったうえで、今持っているものを捨てるのは全然苦じゃないし、怖くもないんですよね。
西野 とにかく知りたい、わかりたいという好奇心だけが、子供の頃からずっと原動力になっていて、今に至っています。実はエンタメじゃなくて、農業でもなんでもいいんです。結果がいい方に進んでも悪い方に進んでも、誰もやってないことに挑戦するのは、毎回やっぱり面白いですね。
コンプレックスが原動力だと弱いんですよね。瞬発力はめっちゃあるので、瞬間最大風速としてはバッと勢いがあるけれど、成功すれば貧しさは解消されるし、モテないのがネタだったのに女優さんと結婚しちゃったり。そうするとコンプレックスは、いつかどこかで解消されてしまう。でも、好奇心はどこまで行っても終わらないから、ずっとモチベーションが続くし楽しいんですよね。まるで海水を飲んでいるみたいに、ずっと喉が乾いたままなんです。
── テレビで活躍していた時より、今の西野さんの方がずっと自由ですよね。
西野 テレビでは編成の人が番組を決めて、芸人は決まった制作費とルールの中で面白いことをやる。その制限のある中でプレイするゲームも面白いんですけれど、今はルールから自由に自分で作れるからもっと面白いですね。
僕の先輩たちの世代は、テレビ局の上に広告主という圧倒的な親がいて、そこに反抗していると活動できなかったんですよね。それに比べると、僕らはデビューしてすぐテレビに出られて、ちょうどその頃にインターネットが普及したので、世間の認知度を獲得してから、クラウドファンディングやオンラインサロンというお客さんからダイレクトに課金してもらえるインフラが整った世代。広告主がいなくても、YouTubeやSNSなど、活動の場も自分たちで作れます。時代の移り変わりによる恩恵をめっちゃ受けていると感じますね。
西野 50代はぶっちゃけまだ若いです。これからまだ30年、40年と生きていくわけですから、その間に何回も時代が変わる。つまり、このまま逃げ切れる世代ではないんですよ。そうなると、もう知らないこと、新しいことを勉強しまくるしかないなと思います。
僕、定期的に東野幸治さんに捕まるんですよね(笑)。で、ふたりで飲むと、もうずっとインタビューです。「今何が面白くて、何が気になっているのか、全部教えて」って(笑)。芸人として結果を出して、あれほどの立場があるのにまだ教えてと言えるのは、すごくカッコいいし、すごく柔軟だから東野さんはずっと若いんですよ。
人生の先輩方にあまり偉そうなことは言えないのですが、一つ言えるとしたら、知らないことを恐れないで欲しいです。自分が知らないことをなんでも否定して、ご意見番として生きるよりも、自分の知らないこと、弱さを認めたうえで「教えて」と言える大人の方が、断然カッコよくないですか? 僕自身も60代、70代になっても、好奇心の赴くままそれだけは絶対に言い続けていこうと思っています。
● 西野亮廣(にしの・あきひろ)
1980年兵庫県生まれ。芸人·童話作家。 著書は、絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』『みにくいマルコ』、小説に『グッド・ コマーシャル』、ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『バカとつき合うな』(堀江貴文氏と共著)『新世界』『ゴミ人間』などがあり、全作ベストセラーとなる。 2020年12月に公開された映画『えんとつ町のプペル』では脚本・制作総指揮を務め、大ヒットを記録。日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞、アヌシー国際アニメーション映画祭長編映画部門ノミネートなど海外でも高く評価される。国内最大級のオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」を運営するなど、 芸能活動の枠を越え、さまざまなビジネス、表現活動を展開中。
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