2017.11.25
“ファッションが売れない”は本当か? #1
ECサイトの好調が聞こえてくる中、一方で、実店舗では洋服やモノが売れないと聞こえてくるのもまた事実。ファッションは今、本当に売れない時代なのだろうか?
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写真/池田圭史(BOIL)、文/池田保行(04)
日本のミレニアルズに向けた成功例
リアル店舗の売上高は落ちていると木村は認めながらも、それは業界全体量を俯瞰した場合のこと。アダストリアグループの総店舗数は国内外で1500を超え、リアル店舗での数字も維持する。
ファッションの物流量はこの10年で2倍に拡大
若者は買い物の仕方が変わった
ファションを支持しているのは実は若者
細分化するニーズに応える戦略とは
80年代には「ポイント」の店名で仕入れ中心のショップを展開していましたが、そこに広がりを見いだせず、90年代にOEM/ODM型のビジネスモデルに転換。オリジナルブランドを立ち上げると好評を博し、アジア圏にも出店。2010年にはSPAに移行してから、業績は加速度を増して上昇している。
「私たちの強みはひとつにはSPA。会社の中でものつくりができているため、クオリティも担保できています。そしてリアル店舗の接客力。店頭で一生懸命に接客してまた来てもらう。そういったお客様は、次はネットでも買ってくれます。ネットで買うためには、リアルのお店が重要なんです。MD展開は早すぎるくらいですが、お客様もそれを求めています。1シーズンで3回ぐらい変わります。それができないと、今の時代はお客様が店舗に来ないのです。なぜなら、売り場が変わらなければ、つまらない。そんな店には顧客がつきません。いつ来ても新鮮であることが大切です。そして、安いから買うではなく、いま欲しいものを買っていただく。いくら安くても、欲しくないものは、いまの若者は買いません。お金の使い方は、昔よりシビアになっているように思います」
いつ、どこで、何が売れたか? 膨大なデータが未来に繋がる
10年後にアパレルが生き残るとすれば
現在、ファションは決して売れない時代ではなく、ECやデジタル戦略を含めて、売り方が大きく転換している。ユーザーにいかに認知してもらうかがさらに重要な時代。また、その一方でリアル店舗の役割も重要だ。以前はインポートの商品が遅れることもあったが、それも含めて商品のキャラクターと好意的に解釈された。だが、いまのユーザーは待ってくれない。彼らの欲しいの瞬間をキャッチアップして、スムーズに届ける物流システムまでを含めてファッションのサービスになっている(文中敬称略)。
● 木村 治 / アダストリア常務取締役
1990年、アダストリアの前身である福田屋洋服店に入社。店長、エリアマネジャー、バイヤーを歴任するも2001年に独立。2007年、「ニコアンド」や「スタジオクリップ」を手がけるトリニティアーツの前身企業と経営統合し、代表取締役社長に就任。その後、2013年再びアダストリアグループに参画。2016年より常務取締役として事業開発部門の責任者も務めている。