2019.07.26
ワイン会は店選びが9割⁉ 幹事の心得いよいよ最終編へ突入
5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多いときは月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。
- CREDIT :
文/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)
さて、ワイン会の掟もいよいよ最終段階の幹事編です。ワインスクールのクラスも何期かこなし、ワイン会も定期的に出席するあなたは今やワイピ(=ワインピープル)界のライジングスター。遅からずワイン会の幹事のお役目が回ってくるのは、中学生の時に朝礼当番が回って来たのと同様に必然だと言えましょう。
ワイン会の掟 ~ その4幹事編(1)
順を追って見ていきましょう。なお、ここでは参加者各自がワインをお店に持ち込んで食事とともに楽しむパターンのワイン会を大前提として話を進めますのでお含みおきください。
何といっても大切なのは、まずは会場の選定です。開催場所が決まらないワイン会は、行き先未定の遠足のようなもので盛り上がりません。細かい選定のポイントは、次の通りです。
数多くのワイピが過去幾度となくワイン会を開催し、ワイピ界においてワイン会「㊜マーク」を取得しているこのようなお店は多数存在しますので、ワイピの仲間入りをしたあなたも、常日頃から自分に合った㊜マーク店の発掘につとめましょう。このような店は有名ワインメーカー来日の際のディナー会場になることも珍しくありません。ソムリエはワイピ界でも一目置かれているケースも多いです。上級ワイピともなればこのようなソムリエとの交流も深く「今度のワイン会は何処にしようかなあ」と余裕綽々です。
そもそも、無理にチャレンジ会など開催しなくとも良いと思うのですが「通常は持込NGの◯◯に僕の顔を効かせて特別にワインを持ち込ませてもらった」「▽▽始まって以来のワイン会を自分が開催した」などの勲章はワイピが最も好むマウンティング素材であり、マタタビを見せられた猫と同じくらいの陶酔度で食いつく習性があります。チャレンジ会をスタンプラリーよろしくいろんな店で開催するのに躍起になっているワイピ、あなたの周りにもいませんか?
おっと、初級ワイピのあなた、チャレンジ会に挑戦するのはまだ早いですよ!無謀なことはせず、ワイピランクが上がってからの楽しみに取っておきましょう。そうでないと、お店と参加者双方にとって不幸な結果を招きます。チャレンジ会の難しさを具体的に説明しましょう。
チャレンジ会に挑戦する場合、少なくともワイン会以外で何度か利用実績のある店、可能ならばご自身が相当な常連で融通が利く店が望ましいです。ワイン会は、お店にとって採算や手間の観点から手放しで歓迎出来ない点が多々あるからです。それでも開催を快諾してくれるのは長年上客として貢献してきたあなたに対するお店の恩返しだと考え感謝しましょう。親しくないお店でチャレンジ会に挑戦するのは、初訪問の鮨屋で常連向けの裏メニューを注文してヒンシュクを買うようなものです。
✔ 打ち合わせは綿密に。
チャレンジ会の場合、普段ワイン会対応をしていないお店で開催するわけですから、テーブルの広さ、サービス方法、料理のタイミング、グラスの数、デカンターなど什器・備品の有無など打合せは綿密に行いましょう。その点、私が定期的に参加しているある有名ソムリエ主催のワイン会は見事なものです。時おり初開催の店でのチャレンジ会となりますが、ワインのテイスティングに重点を置いてブラインド(ワインの銘柄を知らせずに味わう)で行うにもかからず、ワインと料理を楽しむ時間の配分を絶妙に予測し、進めていきます。初級ワイピが下手に真似すると閉店時間後までお店に居座って大迷惑になりかねません。身の程を知らないゴルファーがフルバックティーからプレーして後続の組から大ブーイングを受けるようなものです。
✔ お店に気遣いを見せる。
ワインを置いている店であればお店からも1本オーダーする、ワインの売上げが少なくなる埋め合わせとして高めの料理をオーダーする、珍しいワインはお店にもテイスティングをオススメする(グランメゾンなどでは従業員のお客様の前でのテイスティングNGの規則もあるのでボトルにワインを残して下げてもらう)など、細かい配慮も出来るようになればチャレンジ会もこなせる上級ワイピですね!
お店が決まったら、次は参加者の募集・案内ですね。これは次回のお楽しみです。
(*1) ワインの中には抜栓してから数時間(ワインによっては1日以上)経過しないと本来のポテンシャルを発揮せず十分に楽しめないものもある。ワイン会㊜マーク店には、このようなワインを事前に抜栓してデキャンターに移したり、さらにはもう一度ボトルに戻したり(ダブルデキャンティング)してくれるソムリエも多い。
(*2) お店側のポリシーでワインの持込を受付けていない場合もある。過去にトラブルがあった、すでに料理に合うこだわりのワイン(お酒)リストがある等など理由もさまざま。お鮨屋さんでは、万一ワインをこぼした場合、白木のカウンターが汚れるので赤ワインは持込NGというケースもある模様。
連載Vol.02 「モテるのは片手にワイングラス8脚をモテる男」
連載Vol.03 「一目置かれるワイン会の掟、お教えします」
連載Vol.04 「ワインのカジュアル・フォーマルはここで決まる!」
連載Vol.05 「ダジャレで選ぶワイン、ありやなしや」
連載Vol.06 「ワインを愛するならまず『ワインセラー』を買いなさい」
連載Vol.07 「人のワインを笑うな、けなすな、値段を聞くな」
連載Vol.08 「古酒は小さなグラスにちょびちょびと注ぐべし」
連載Vol.09 「あなたはなぜワインを飲むのか? と聞かれたら」
● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa
1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。