雀荘？ いや、酒場！ 「雀荘當（ジャンソーアタル）」は日本のスピークイージーだ

1920年代、アメリカの禁酒法時代に生まれた秘密の酒場「スピークイージー」については、コチラの記事で解説したとおり。一見、バーや酒場に見えない扉を開けて、その奥に意外な空間が開けているお店は何度出かけてもワクワクするし、誰かを連れていけば「何コレ」→「こんなところ知ってるなんてスゴい」と羨望の眼差しをいただけるはず。要するに、良いことずくめなのであります。

このたび「日本のスピークイージー」を探したのは北千住。東京から日光へ詣でていた日光街道沿い、千住宿として栄えた宿場町であり、ディープな酒場がある歓楽街としても知られています。

今回は住所と店名を材料に店を探していましたが、店名に「雀荘」が入っているので、探すヒントはもちろん「麻雀」。住所を知っていれば探し出すのは簡単でした。ですが、ビルの前まで行って、「ホントにここ？」とためらうことしばし。だって、店の看板もないし、入り口はここホントに酒場なの？ と疑いたくなるほど、そっけないアプローチなんです。ここは自分を信じて階段を上るしかありません。

「麻雀登美」の扉をえいやと開ければ、中は意外にもメタリックな内装のモダンな酒場。麻雀からのインスピレーションか、中国のモチーフが随所に配され、キッチュな雰囲気です。

こちらは実際に昭和50年代から雀荘として営業していた物件を借り受け、21年12月にオープン。北千住で大人気の居酒屋「酒呑倶楽部アタル」や「タチアタル」の系列店ということで、開店からすぐに吞兵衛たちの注目を集め、現在は満席の日も多いとのこと。来店時は予約をおすすめします。

人気の秘密はいわゆる定番の居酒屋メニューにツイストを効かせたつまみと変わりサワー。このどれもが「映え」に終わらず、本格的にウマいんです。

まずは定番のポテトサラダ。一見フツーのポテトサラダですが、スモーキーな黒岩塩で味付け。カリカリに焼いた鯖と半熟たまごをトッピングし、食べるとまるで口の中が温泉たまご！ 見た目からはわからない、滋味に富んだ一皿なのでした。

続いて、やわらかい生ラムを使用し、鉄板でサッと焼きした「スパイスラム焼き」。自家製のヨーグルトサラダと、これまた自家製のサルサを添えればラムの肉臭さも消え、あっさりと無限に食べられそう。

名物の「ウニ焼売」は、牛肉にたまねぎを加えて旨味たっぷりのシュウマイに生ウニをどどんと乗せて。こんなのもう美味しいに決まってます。

「そろそろ〆いきますか」と店長の金子良太さんが鉄板をジュウジュウ言わせ始めました。

できた！ こちらが人気の「焼きビーフン」。「ニラ」「五目あんかけ」「黒酢卵」「焼豚」と4種あるうち、この日は「ニラビーフン」をチョイス。うどんや焼きそばだとちょっと重いな、という日も、ビーフンだと軽いからツルツル入るんですよね。さすが、酒飲みの心をわかっていらっしゃる。

美味しい料理のお供は各種サワーでどうぞ。自家製の漬け込み酒をベースにしているサワーはもはやカクテルの域。

アプローチがユニークで、飲んで食べてだいたい5000円という、日本のスピークイージー「雀荘當」、楽しすぎ！ もう一軒、行きましょう。北千住の夜はディープに更けていきます。

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