2022.09.25

【第16回】「荻窪のラーメン」

“激戦区”荻窪のラーメン今昔物語

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博

山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!

荻窪は「ラーメンブーム」の火付け役

1980年代、東京・荻窪はすでにラーメン専門店が多く、激戦地だったと言ってもよい。荻窪駅の目の前を青梅街道が通り、その青梅街道沿いに「春木屋」「丸福」「丸信」があり、「春木屋」の裏手には「十八番」、線路を挟んで反対側には「丸長」と、そのいずれにも常連客が大勢ついていた。荻窪のラーメンが、のちの「ラーメンブーム」の火付け役に一役買ったと言っても過言ではない。

このラーメン人気を見て、1985年に作られたのが伊丹十三監督の映画「たんぽぽ」である。主演の宮本信子がしがないラーメン屋の女主人で、山崎努が扮するトラックの運転手の助けを借りて、ラーメン屋を再生するというストーリー。
春木屋 山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!
▲ 「春木屋」の「中華そば」。
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実は、1982年にすし、そば、てんぷら、うなぎ、とんかつ、ラーメンをガイドした「東京・味のグランプリ」を上梓していたからだろう、伊丹十三監督からお声がかかって、麻布にあった伊丹プロに呼ばれ「繁盛しているラーメン屋の見分け方」を2時間ほど教授させていただいた。

店に入る前、そして店に入ってから、どこを見ればラーメンを食べる前でも「美味しいラーメン」を作っていることが推測できるのか?  カウンター上の割り箸、灰皿、胡椒、爪楊枝などの並べ方、新聞や漫画などの雑誌の片づけ方、テレビがあるのかないのかなど、人気のラーメン屋に共通する話をさせていただいた。

最後には、ラーメン屋の客としてエキストラで出ることにまでなり、砧のスタジオまで出かけて行ったのだが、長時間待った揚げ句、前のシーンの撮影が押してしまって、それは実現しなかった。確か、映画の最後のクレジットにも私の名前があったはずである。
テレビでもテレビ朝日「愛川欽也の探検レストラン」でまったく売れていないラーメン屋を皆で再建するストーリーを作り、そのお手伝いもした。その店が荻窪の「佐久信」で、店は「春木屋」「丸福」の並びにあった。
放映直後は大行列の店となったが、うたい文句の「熱いです!」もいつしか主人の熱がなくなって、暫くして店は失くなってしまった。

当時の「美味しいラーメン屋」の条件は「鶏ガラと人柄」だった。
山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!

筆者が書いた「ダイブル 2001」の「丸福」の記事。

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バラエティに富んだ現在の荻窪ラーメン

麺や正路 山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!
▲ 「麵や正路」の「鯛煮干しらーめん」。
いまでも「春木屋」「十八番」「丸長」など、どちらかと言えば昔ながらのノスタルジックな味を売るラーメン屋だが、最近では、駅に直結しているビル、タウンセブンにある「麵や正路(まさみち)」の端麗なスープの「丸鶏醤油らーめん」と私の大のお気に入り「鯛煮干しらーめん」(傑作です!)、青梅街道環八の先、いつも長い行列が絶えない「味噌っ子ふっく」のにんにく風味の強い味噌ラーメン、天沼の昼は「ねいろ屋」、夜は「人と羊(ひととよう)」と看板が替わる「ねいろ屋」のしょうゆラーメン、「人と羊」の羊のスープと羊肉のパテが添えてあるユニークな「ひつじそば」など実にバラエティに富んでいる。

つまり、今でも荻窪は40年前から続く「ラーメン」激戦区なのである。
ねいろ屋 山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!
▲ 「ねいろ屋」の「しょうゆラーメン」。
人と羊 山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!
▲ 「人と羊」の「ひつじそば」。
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「春木屋」 荻窪本店

住所/東京都杉並区上荻1-4-6
営業時間/11:00~21:00
定休日/火曜
TEL/03-3391-4868
HP/荻窪中華そば春木屋 

「麵や正路」

住所/東京都杉並区上荻1-9-1 慶仁ビル2F
営業時間/11:30〜14:30/18:00〜20:00
定休日/不定休
TEL/03-3398-1293
Twitter

味噌っ子ふっく 山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!

「味噌っ子  ふっく」

住所/東京都杉並区上荻2-40-11
営業時間/Twitterより要確認
定休日/月曜・火曜不定休
TEL/03-6913-6649
Twitter

ねいろ屋 人と羊 山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!

「ねいろ屋」

住所/東京都杉並区天沼3-6-24
営業時間/11:30~22:00L.O.(22:30close) (月 11:30~15:00)
定休日/火曜
TEL/03-6915-1314
Twitter
「人と羊」は毎週月曜と火曜夜限定営業中

山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博 LEON.JP 荻窪 ラーメン革命!

山本益博さんがYouTubeを始めました!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

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