2022.10.01
フードライターは見た! カジュアルデートで使える店の条件とは【前編】
ひとり1万円台で気軽に楽しめて、もちろん美味しい。さらにデートの会話も弾む店、ないですか? という難問に、年間1000軒外食している高橋綾子さんが答えます。
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写真/八木竜馬 文/秋山 都
そう語るのはフードパブリシト*の高橋綾子さん。ファッションブランドのプレス時代にレストラン通いを始め、現在も年間1000回は外食。美味しいモノを見極める、その“舌”は「綾子さん、最近何食べた?」と多くのファッション業界人からも注目されている存在です。最近では、美食に関するコラムをメディアへ寄稿、テレビにも出演する話題の人でもあります。
「ですよね(笑)。そういう店の見極めはまずテーブルの上にあると思ってください。カジュアルなお店はだいたいテーブルクロスが敷いてないですよね。でも、そのテーブルの上がきちんと清潔に、センスをもって設えられているか、否か。神は細部に宿る、と言うように、ディテールまで心が配られている店はまず合格。
次に、その店を語る文脈がどこにあるか、という点です。デートに連れてこられた女性サイドの視点で考えていただきたいのですが、彼女はけっこう気合を入れて来ているかもしれません。そんな時に、入った店がテーブルクロスのないようなカジュアルな店だった、と。どう思いますか? きっと、顔には出さないけどガッカリしますよね。私って、そのくらいに思われていたんだな、と。
そこで、この“文脈”の登場。
『この店、カジュアルだよね。でも、あの名店XXXから最近独立した人が始めたんだよ』
『今年、日本に初上陸したんだけど、いま世界で話題なんだ』
『この店のオーナー(シェフ)、めちゃ有名人なんだよ』
などなどなど。つまりは、この店こう(カジュアルに)見えるけど実は~というストーリーが必要なんです」
なるほど、つまりはそのお店を選んだ基準がきちんとあればOKということですね。そのストーリーはデートでのふたりの会話の糸口にもなりそうです。
名店「ドンチッチョ」の流れを汲む期待のニューオープン
◆「Filemone」(東京・乃木坂)
「そこを語るにはまず『トラットリアシチリアーナ ドンチッチョ』(以下ドンチッチョ)からご説明しないと。『ドンチッチョ』は元々「トラットリア ダ トンマズィーノ」という名前で国立競技場の近くに2000年にオープンしました。当時、シチリア料理を知る人はほとんどいなかったけれど、野菜や魚介が中心でオリーブオイルやハーブが味の決め手というシンプルでヘルシー、しかもめちゃくちゃ美味しいとくればファッション業界、出版業界、芸能人、文化人などなど、感度の高い人たちが黙っているわけがない。お店は毎夜最先端のファッションを着こなした人々で賑わい、まるでコレクションのパーティー会場にいるみたいでした。
その頃、私はファッション業界でプレスをしていて、貸し出しにいらしたスタイリストさんや編集さんの挨拶代わりが『ドンチッチョ行った?』だったことを覚えています。美味しくて魅力的な料理、気楽でカジュアルな空間なのにサービスは一流、それでいてお財布にやさしい……、そんな『ドンチッチョ』にファッションピーポーたちは通い続け、いまや予約の取れない名店となりました。で、その姉妹店が『シュリシュリ』(外苑前)でして、そこから独立したシェフ、新田大介さんとサービスの森裕太さんがオープンしたのがこの『Filemone』。つまり名店『ドンチッチョ』の系譜であり、その料理やサービスの本質をしっかりと受け継いでいるんです」
「それにメニューがアラカルトなのも嬉しい。このところおまかせコースが主流ですが、スタート時間が決められていたり、気分じゃないものを食べなければいけなかったりで少々お疲れ気味。お願いすればコースも作ってくれますが、『アマトリチャーナはショートパスタにしてみない?』、『今日は軽めに前菜とパスタにしよう』などと食べたいものを話しながら選べば楽しさも倍増します。何カ月も前から予約を入れて気張るのもいいけれど、今は気楽に足を運べてほっこりできるカジュアルデートに心が惹かれますね」
Filemone(フィレモネ)
住所/東京都港区赤坂8-12-12 赤坂アンドロン 1F
お問い合わせ先/03-4363-2887
営業時間/18:00~23:00
定休日/日曜日
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