2024.10.18
【第9回】
外国人がみんな感動する日本の「神様サービス」に気づいているかい?
イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。
- CREDIT :
文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)
イタリアの飲食店では水は頼まないと出てこない
今回は外国人の立場になって、日本の飲食店ツアーに参加してみない? ただ、注意点が一つだけある。この記事を読んだあと、外食の感覚が倍以上に楽しくなるかもよ? 問題がなければ、早速行きましょう!
「ソース」「醤油」「胡麻」「漬物」、そして「がり」まで無料だなんて
もっと深く進むと、一回体験したらやめられない「アレ」が出てくる。そう、熱々の真っ白なおしぼりだ! ただの布なのに、こんなにアットホームな気持ちになって、より料理とその空間を楽しめるなんてすばらしい! と思うのは僕だけではないよね? 使い捨てのおしぼりもあって、食後の時に新しいのをもらえて感動することもある。イタリアでは布のナプキンがあるけど食べる前に使うことはない。食事前に手を拭くという新しい使い方を見て「なんだこれ?」となった。
お店によるけど、テーブルに置いてある「ソース」「醤油」「胡麻」「漬物」など。そしてお寿司屋さんでは「ガリ」もある。これらもなんと、自由に使える。そして、極め付けは「お米のお代わり自由」だ! これ見た時に声が出たよ。「え? これも無料なの?」と思いながら、お代わりしていた。好きなだけ食べられるって海外ではない習慣だから、最初は本当に無料なのか疑問に感じてしまった。
皆がマナーを守って自分が食べられる量だけをお代わりする
日本でこれが成り立つ理由は、皆がマナーを守って自分が食べられる量だけをお代わりするからだろう。「しっかり残さず食べ切る」という人が多い。2回以上のお代わりする人が少ないとか、お代わりしても少量とか。みんなが当たり前にできるから、このようなサービスが普及したんだね。
注文の時に、お米や麺などの量を選択できるのもありがたい。食べられる分を調整できる中で意外な驚きもある。通常サイズより、少量を選択するとなんと、数十円が安くなるのに対して大盛は無料だ。これはイタリアではほとんどない!
飲食店に隠れているもう一つの驚きは、呼び出しボタンだ。イタリアでは満席の時に店員さんをつかまえるのが大変で、呼んでいても気が付かれないことが多いのよ。ここでこの呼び出しボタンを設定することでスムーズに店員さんを呼べる。店員さん側も、どのお客さまに呼ばれているか分かりやすいよね。
イタリアではコぺルト(席料)がある店がほとんどだ
一体、このコペルトという席料はいつから、何が含まれているのか気になるよね? コペルトは、テーブルが「覆われる」(つまり、食事が置かれる)ことに由来すると言われている。食卓で使われる食器やカトラリー、グラス、テーブルクロス、ナプキンなど、食事をする時に一人分として用意されるものの総称なんだって。テーブルに置いてあるパンやグリッシーニ、オリーブオイル、塩胡椒も実は無料ではなく、そのコペルトに含まれているよ。初海外旅行の時にテーブルにあるものを食べたり使ったりして「最高だ!」の気持ちになるけど、実は全部有料だ。
感謝の気持ちを忘れず「無料」を当たり前にしないのが大切
イタリアでなぜコペルトの習慣が始まったか。コペルトの起源は非常に古く、中世までさかのぼる。当時の旅人は、持参した食べ物を宿で食べようとする時、宿のテーブルや食器を借りる代わりに、宿主に料金を支払っていた。この支払いが現在まで残ったんだ。こう聞くと、まぁコペルトも悪くないよね?
日本のこの素晴らしいサービスは、感謝の気持ちを忘れずに美味しく食べて、「無料」を当たり前にしないのが大切だ。日本の飲食店の魅力を守りながら、新発見の気持ちで楽しんでいこう!
● マッシ
本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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