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2025.02.28

【第17回】

イタリア人が「コーヒー1杯」で女性を口説けると思っている理由とは?

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。

CREDIT :

文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)

イタリアのカフェ文化には多くの慣習やルールがある⁉

「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのイタリア人ライター、マッシさんが、今回はイタリア人の人生に欠かせない存在「コーヒー」についてお話しします。
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イタリアではエスプレッソが最も一般的な飲み物であることは知っているよね? ある統計によると、イタリア人は1日に平均4杯のエスプレッソを飲むのだそう。自宅やカフェ、職場など、さまざまな場所で飲まれているみたい。確かに、僕もどんなに忙しくてもバールでエスプレッソを立ち飲みすることは欠かさなかった。

実は、イタリアのカフェ文化には、自発的に守られる多くの慣習やルールがあるのを知っていた? 今回は、日本であまり知られていない習慣を公開したいから、みなさんもコーヒー片手にイタリア人気分で楽しんでみてね。
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空気と愛情のように、コーヒーがなければ生きていけない

イタリア人にとって、コーヒーを飲むのに最適な時間帯というのが特にあるわけじゃない。 朝起きてすぐや午前中、昼食後、午後、さらには夕食後など、どんな時でも温かいコーヒーを一杯味わう機会を逃さない。「コーヒーを飲まない」という日はなく、無意識のうちに頼んで飲んでいる。わかりやすく言うと、空気と愛情のように、コーヒーがなければ生きていけないんだ。

逆に飲まない時がある? と聞かれたらなかなか返事がすぐ出ない気がするけど、もしイタリア人がコーヒーを避ける時間帯があるとすれば、食欲を損なわないための食事の直前くらい。

コーヒーは一日のはじまりであり、何よりも大切なもの。 朝はコーヒーなしでは一日が始まらない、という人がほとんどだ。仕事の前には必ずコーヒーを飲んでから、会議や電話などに取り掛かる。イタリア人にとってコーヒーを飲むことは、まるで息をするように自然な行為なのよ。
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▲ ローマの風景。
イタリアでは、飲む時間以外に「容器」にもこだわっている。日本人はここまで考えたことがあるかどうか分からないけど、イタリア人にとっては、コーヒーは「陶器」や「ガラス」のカップで飲むのが一番なんだ。

紙コップやプラスチックカップに入ったコーヒーは、ほとんど選択肢としてない。というより、信じられない。「本格的なコーヒーを味わいたい」というイタリア人のこだわりが、こうした習慣を生み出している。オフィスや移動中など、どうしても紙コップのコーヒーを選ばざるを得ない状況もあるけど、基本的には陶器やガラスのカップでコーヒーを楽しむ。熱々の陶器を手で持つ時からコーヒータイムが始まるんだ。僕も紙やプラスチックのカップが出る時に、なんとなく胸が痛んでいつもよりちょっと違うような気持ちになる。
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カプチーノを食後に頼むと店員さんに驚かれるよ

逆に、僕にとってイタリアでは考えられないけど日本では平気な習慣がある。それは、カプチーノを午後や食後に飲むことだ。というのも、実はイタリアでは、カプチーノは朝食メニューなんだ! イタリア人からすると、カプチーノを飲んで良い時間帯はお昼の12時までと相場が決まっている。

朝はカプチーノを飲みながら一日を始める人が多いけど、昼食後や夕食後にカプチーノを飲む人はほとんどいない。イタリア人にとってカプチーノは、ミルクが入っていて少し重い飲み物だから、食後には消化に悪いと考えられているんだ。

食事の後や、午後の休憩時間には、エスプレッソといった濃いめのコーヒーを少量飲むのがイタリア式。信じられない方は、ぜひイタリアに行かれた際にカプチーノを食後に頼んでみてほしい。店員さんに驚いた表情で「え? 本当に? 冗談だと言ってくれ!」と、何回も確認されるというか、注意されるから(笑)。
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もう一つの違いがある。イタリア人は、外で歩きながらコーヒーを飲む習慣はないんだ。バールで立ち飲みしたり、テーブルに座ってコーヒーをゆっくりと飲んだりして楽しむのが一般的だよ。日本では持ち帰りや歩きながらコーヒーを飲むこともあるよね。その光景を初めて見た時にカルチャーショックを受けた記憶がある。イタリアでコーヒーといえば、「スローリーな生活」を代表するものとされているから、たとえエスプレッソを数秒でぐいっと飲んだとしても、その瞬間の余韻をゆっくりと味わうんだ。

「コーヒーでもどう?」は最高の口説き文句なんだ!

さらに、コーヒーの存在は人間関係においてとても重要な意味を持つ。イタリアでは、「コーヒーでもどう?」という言葉は、人と会うための定番の誘い方だということを知っていた?

カフェでコーヒーを飲みながら近況を報告したり、悩みを相談したり、ただ単に一緒に時間を過ごしたりする。コーヒーを飲むことは、単に飲み物を飲むだけでなく、人と交流するためのきっかけとなる大切な時間。僕も、気になっていた女性に何度もコーヒーのお誘いをして、2人の時間を作っていた記憶がある。コーヒーからパワーをもらって、より楽しい会話をしているうちに女性と付き合っている、なんてこともあった。「コーヒーでもどう?」は、あなたと一緒に過ごしたいよ、という最高の口説き文句なんだ!
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これは、バールだけではなく、自宅でも同じことがいえる。イタリアでは、コーヒーは人を招く際の定番のおもてなし。 ほとんどのイタリアの家庭には、macchinetta(マッキネッタ)という直火式のエスプレッソメーカーが置いてあり、いつでもコーヒーを淹れることができる。

お客さまが自宅に入って、椅子に座る前にもうすでにコーヒーの準備をしていることも。いつ来客があっても良いように、マッキネッタとコーヒーの用意は欠かさないんだ。よく考えたら、日本でも大体の家庭にコーヒーが置いてあるよね? イタリア人と日本人は、もしかしたらすごく近い存在かもしれないよ。

自宅でもバールでもレストランでも職場でも、コーヒは最高の仲間であり人生に欠かせない存在だ。僕たちの心を支えてくれていて、だからこそ、朝から夜まで離れられない。日本人も、コーヒーをただの飲み物ではなく、大切な存在という考え方に変えて行ければ、きっと新たな人生が始まるかもよ?
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● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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