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2021.05.13

お店でスマートにワインを選びたい!? そんな大人が知っておくべき4つの方法

5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多い時は月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。

CREDIT :

文・写真/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)

シリーズでお送りしてきました「お店でワインをセレクトする際のモテポイント」もこれで5回目、最終回です。今回は集大成として、実践編です。いままでは理屈を語ってきましたが、最後は「じゃあ一体どうすればいいの⁉️」ってところを考えていきましょう。

モテるワイン道入門~お店でのモテポイント

まず前回までのおさらいです。

その1では、そもそも行ったお店でワインをオーダーするのが正解なのかどうか、飲食店タイプの検討をしました。その2ではワインリストの解読方法でしたね。その3ではワインの価格設定の仕組みについて解説し、前回のその4では具体的にお店の値付けの傾向(良心的なのか強気なのか)を判定するための「ベンチマーク方式」をご紹介しました。

それではシミュレーションしてみましょう。

ワイピのあなたが、誰かをエスコートしてふたりで、もしくは4〜5人のグループの一員としてあるお店を初訪問。ワインのセレクトをまかされたと考えてみてください。初めてのお店ですから勝手はわかりません。まずは、本コラムの「飲食店タイプ分析マトリックス」に沿って考えたところ、どうやらワインを楽しむべきお店のようです。ワインリストの分析も済ませました。なかなかのこだわりです。「ベンチマーク方式」にて価格設定を判定してみたところでも、かなりお値打ちな値付けのお店のようで期待が膨らみます。と・こ・ろ・が!

ワインリストには知っているワインが1本もありません。ある程度のワイン経験値はあると思っていて、かつ「好きなワイン」と聞かれれば10アイテムくらいはすらすら言える自信があるあなたのレーダーに引っかかるものがゼロです。親しみのある生産者の畑違いとかヴィンテージ違い、あるいは飲んだことがある畑の生産者違いもなく、カスリもしていません。さあ、どうしますか?

もちろん、たかがワインです。失敗したところで大したことはありません。お財布とプライドが少しダメージを受けるだけです。でも、やはりいくつかの非常手段をポケットに持っているのは悪くありませんよね。考えていきましょう。
▲ワインの世界はRPGゲームに似ていると、筆者。進めば進むほどコイン(お財布)が減ってしまう……。
1. まず、ほとんどの人が考えるのが「好きなものを飲めばいい」だと思います。おっしゃる通りです。何も小難しいことを考えずに、好きなワインが簡単に注文できる状況ならば苦労はしません。でも、次のシチュエーションを想像してみてください。

先に述べたようにあなたの「好きなワイン」リストは全滅です。もちろん、お店のソムリエに好きなものの特徴を一般論で説明してアドバイスを仰ぐ方法があります。でも考えてみると、自分の好きなワインのタイプを一般化して表現できる時点で相当な上級ワイピのはず。であれば、このような全滅にはそもそもなっていないはずです。

さらに、もうひとつ問題が。考えるべきは「あなたが好きな」ワインではなく、「みんなを満足させるであろう」ワインです。いや、むしろエスコートの立場、ないしはグループを代表してワイン奉行を仰せつかったからには自身の好みを犠牲にしてでも相手の、あるいは全体の好みを忖度すべきではないでしょうか?

もうおわかりでしょう。「好きなものを飲めばいい」作戦はここでは通用しないのです。

2. ならばどうすれば良いのでしょうか?  私自身が初級ワイピの頃にやったのは、知ってるワインが全然ないアウェイ状態だとしても、その中で極力自分の経験値との共通要素が大きいものを選ぶ方法です。具体的に言うと、自分がカリフォルニアワインの経験値がフランスやイタリアに比べて高いと思っているのであればカリフォルニアを、シャルドネを他のブドウ品種対比でよく飲んでいるのなら、シャルドネを選んでみるのです。極力自分のホームグラウンドに近いワイン(だと願って)飲んでみるのです。結果的には思惑が外れ、想像と違うワインかも知れませんが、自分の最得意分野で失敗経験が加わるのはワインキャリア上そんなに悪い話ではありません。1の「好きなものを飲めばいい」と考えてらっしゃる方の多くは、このパターンではないかと推察します。

3. また、2と正反対のアプローチを取ったこともあります。どうせ追い込まれた状況ならば、と普段であれば飲まないけれど「機会があれば」と頭の片隅にある生産地やブドウ品種にチャレンジしてみるのです。相撲で言えば土俵際の徳俵に足が掛かった状態でうっちゃりに出る心境ですね。失敗すれば「大ハズシ」で同伴者に迷惑をかけるリスクもあるので注意が必要ですが、かといって他に無難な方法もない場合の非常手段です。

4. 最後の手段、そして意外と有効なのが、月並みですがソムリエに相談することです。私自身何度もこの方法にお世話になりました。経験上「中途半端にカッコつけない方が上手くいくことが多い」と思います。大抵の場合、ソムリエ側も「よく分かってないのですが」と相談された方が真剣になります。わかってないお客への説明やおすすめは、わかっているお客に対してよりも何倍も難しいからです。自分のイメージするワインを上手く説明できる自信がなれけば、以前ご紹介した「マイBEST3」ワインの写真を見せるのも効果的でしょう。
実践編はいかがでしたか?  最近目にしたネット記事でワインを楽しむことはRPGゲームに似ているとの趣旨の記述があり、言い得て妙だと膝を打ちました。進めば進むほどHPが上がったり、使える技が増えるところが共通点だと言うのです。確かにそうですよね。でも、RPGゲームとワインが違うのは、進めば進むほどコイン(お財布)が減ることでしょうか(笑)。
連載過去記事はコチラ
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● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa

1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。

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