2022.04.28
50人以上の美女をインタビューしてわかった「いい女」たちの恋愛事情
人気連載「美人はスーパーカーである」で数多くの美人さんを取材し、そのプライベートを根掘り葉掘り聞いてきた作家にしてバーのオーナーでもある林伸次さん。これまでの取材から見えてきた美女=いい女たちの恋愛事情を教えてもらいました。
- CREDIT :
文/木村千鶴
インタビュー以外にも、日々カウンター越しに女性たちの“秘密”の話を聞き続けてきた林さんの目から見て、いまどきの「いい女」たちの恋愛事情はどのように映っているのでしょう?
恋愛強者はとにかくバッターボックスに立っています
林 今の時代、「美人」という言葉を使うのは良くないという思いもありますが、連載当初は美人というのは“美”という高スペックを備えたスーパーカーみたいなもので、自分自身がうまくコントロールできれば凄く楽しめるけど、一方で、乗りこなすのが大変なことも多い、という意味でタイトルにつけました。実のところ美人に生まれればすべてがハッピーというわけではなく、そこで恋愛にまつわる話から仕事の話まで、成功も失敗もいろいろ盛り込んで、出演者の半生が伝わるようにインタビューしています。
── 出演してくださった女性たちは世間で言うところのいわゆる「いい女」の方ばかりだと思うのですが、実際のところ、そういう女性たちはすごくモテているのでしょうか。
林 そうですね、スーパーカーを乗りこなせている人たちは、ずっとモテ続けて恋愛も楽しめている、いわゆる「恋愛強者」になっています。でも一方で、高嶺の花みたいになってしまい「高校を卒業するまで彼氏がいませんでした」という人も結構いました。そして美人ゆえにいろんな男につきまとわれるとか、逆に悪い男にどうしても惹かれてしまって、恋愛で転び続けてしまう人も、実は少なくないんです。
林 簡単に言うとやはり恋愛強者は社交的な人が多いですね。恋愛って男女問わず、友達になりやすい感じの人がうまくいきがちです。それは男兄弟がいるとか、学校が共学だったとか、ある種、運の部分もありますが、男性がいる環境で育った人は男性の気持ちや男性との距離感も学べるので、男性を見る目も育つのかなと。
── 男性に理想を求めすぎないんでしょうね。
林 はい。若い時から男友達が多いと、出会いのある場でうまく知り合いにもなれて、連絡先を交換できるとか、SNSで知り合った時にうまくやり取りできるとか、コミュニケーション能力って言ってしまえばそれまでなんですが、結果モテていく。
── 確かに学生までの時期にいい恋愛をしている人は、男性に対して否定的な感情が少ないでしょうね。
林 成功体験を重ねることで、男性の見分け方がわかるし、自己肯定感もアップする。あと、モテてる人はバッターボックスに立ってますね、いろんなところに行って出会う行動もしていると感じます。
── すべてが好循環ですね(笑)。一方で転び続けてしまう人たちに共通点はありますか。
林 自己肯定感の低さって言葉でまとめたくはないんですが、きれいでも自信のない人はうまくいってない人が多いですね。例えば美人さんなのに小さい頃に身内とかに容姿を否定されたりしていた人が意外に多いんです。あとは若い頃に体目的の遊びで近づいてきた男性とそういう関係になってしまって、自分だけ夢中になってしまう、みたいな経験をしてしまった人が、何度も失敗している傾向はありました。
悪い男に対する免疫はつくと思います
林 コリドー街にナンパされに行ってた女性ですね。なんでワンナイトラブがそんなにもいいんですかって聞いたら、「セックスをしている間だけは、相手の男性が私のことを真剣に見て、私のことだけに夢中になっている。その瞬間が心地よいから、それを繰り返してしまうんです」って言ってて。うわ〜そうなんだな〜、これは男性にない感情かもしれないなあって、びっくりしました。
── それも自己肯定感が低いということでしょうか。
林 でも彼女は自分の自己肯定感の低さも自覚していて、それでも堂々としているんです。だから、余計驚きでした。男性から求められてる、見られてる、好きだ好きだと言われるのが、そんなに気持ちいいんだと。逆に男性はそんなに言われても気持ちよくないんです。好きって言われるより、ギリギリの感じで追いかけるのが気持ちがいいので。
── なるほど。男女の大きな違いを感じたのですね。
林 連載の中ではダメ男にハマる女性も多かったんですが、彼女たちの心理も男性にはわかりづらいです。「これ続けてたらダメだってわかってますよね」と聞いたら「わかってます、でもやめられないんです」ってみんな言いますから(笑)。
── 自分の意思でコントロールできるものではないのですね。
林 あれは相談されたらなんて答えればいいのか、今も解決策が見つかっていないです。宗教みたいなもので、やめられないんでしょうか(笑)。
林 何回か失敗して、このパターンはダメってわかると、早い時期に止めることが出来るようになるみたいですけど。それが出来るまでは何度でも転んじゃうんです。
── 免疫力を付けるしかないようですね(笑)。
林 でも女性関係に問題があるとか、ギャンブルに夢中になっているとか、凄くダメっぽい男性相手でも、上手に転がしてうまく行ってるカップルもいますからね。結局は関係性の問題なのかなぁ(笑)。
カウンター越しの恋愛相談は、男性心理と出会いについて
林 これは全世界のバーテンダーがよく聞かれる質問だと思いますが、僕は凄く多いです。男性はまず恋愛の話はしないんです。ほとんどが仕事の話です。でも女性は恋愛の話が多くて、内容としては、出会いがないってことと、恋人や好きな人にこんなことを言われたんだけど、されたんだけど、その男性心理はなんなのでしょう、というのが圧倒的に多いです。
── 林さんは以前出会いの会などもされていました。
林 はい、出会いがないと悩んでいる人には、知り合いを紹介したり、出会いの会を開催したりも一時期はしていました。あとは、趣味のサークルに入るのを進めています。僕の知り合いの女性が、サッカーの応援をするサークルに入って、みんなで肩組んで応援したり、勝ったら飲み会に行ったりするうちに、あっという間に恋人ができて結婚したんです。そういう話を教えたりもします。
── 男性心理についてはどうでしょう。悩みの内容についてもじっくり聞いて答えているんですか。
林 そうですね、人それぞれですから、その男性がどんな人なのか、仕事は何か、趣味は何かとかをよく聞いて、それこそ男性の写真を見せてもらったりもしながら相談に乗っています。どちらかというと僕はあまり男性っぽくはないので、“多くの男性はこう思ってるかも知れないよ”という答え方になりますけど。僕は人間関係の話を聞くのが好きなんです。仕事の話も面白いですけど、個人的な人間関係の話は好きです。
林 いや〜! 「俺が俺が」って人がモテてます、結局(笑)。バーテンダーの友達で、イケメンでセクシーな奴らとかいるんですけど、彼らはカウンター越しに恋愛相談は受けてないって言ってました。
── やっぱりモテるのは“俺”っぽい人でしたか(笑)。林さんのような男性はバーカウンターの向こうには少ないので、女性からの相談や質問が多いんでしょうね。
林 僕は女性っぽいんだと思います。女性ってちょっと年上で、自分と張り合うようなところもないおばちゃんには、なんでも話しやすいってことがありますよね。それと似たようなことかもしれません(笑)。
どんな人でも相性の良い人はどこかにいる
林 そうですね。注文の仕方とかでも、昔のデートのマニュアルの本には、バーでは男性が女性に「何飲む?」って聞かなきゃいけないとか、女性が飲みやすいカクテルを教えてあげるのがマナーって書いてあったんです。でも最近は一切そういうのがありません。女性が自分で頼みたいものを頼むのが当たり前になっています。それはいい傾向ですよね。昔は世の中的に、男性がリードするのをよしとされていて、そこに従って美しく振る舞うのが理想の女性、みたいな空気があったとは思います。
── 今は女性が男性に従うという発想は特に若い人にはないでしょうね。そういう状況の中で若者たちが考える理想の女性像も変わってきているのでしょうか?
林 う〜ん、やっぱり自立した女性を求めるとか、そういうことでしょうか。最近も、東大生の男の子が、好きなタイプの女性を「賢くて仕事の話もできる人」って言うんです。女性のことをお飾りみたいに思うんじゃなくて、ちゃんとパートナーとしてみる傾向を感じます。
── 人間として対等に渡り合える人が求められている?
林 それはすごく感じますね。よく店に来てくれる通信系、広告系のイケメン男子二人組がいるんですが、彼らは「オペラの話とか、歴史や文学の話を女性としたい。そういう趣味の話ができる女性とはどうやったら知り合えるのか」っていつも話しています。いまはマッチングアプリを使えばいくらでも出会いはあると思うのですが、彼らが求める女性はマッチングアプリを使わない層なんですね。
林 う〜ん、そういう意味では、うちの女性のお客様は既婚者で恋愛大好きな人が多いんです。男性もそうですけどね、すごく遊んでる男性もいるし。やっぱりマッチングアプリの登場が大きかったと思います。
── 男女とも既婚の人がマッチングアプリを使っているのは聞きますね。
林 女性は登録するとすごい人数から「いいね」が来るらしいんです。そういうことが目的の男性はどうやら片っ端から「いいね」をつけて、連絡が返ってきてから始まるみたいな。
── 良くも悪くもありますね。
林 はい、でもやっぱり、マッチングアプリを使うと、普通に暮らしていたら出会えない人と出会えるのはすごいと聞きます。普通だったら職場と、学生時代の友人関係、あとは飲みの場、それくらいじゃないですか。今は職場恋愛NGって会社が多いし、コロナですからお店での出会いもあまりないでしょうし。
── それは確かにそうですね。
林 たくさんの女性の話を聞いて思うのは、どんなに「この人は恋愛に向いてないかも」と思う人でも、どこかに相性の合う相手はいるもんだなと。この人は外国人が合っていたんだとか、草食系の若い男性が合うんだなとか、恋愛に向き不向きはないんだなって思います。つまり今出会えてなくても、バッターボックスに立っていればピッタリくる人が見つかることが多いということ。そういう意味ではマッチングアプリで可能性は確実にが広がっています。なので使い方次第だと思います。もちろん、恋愛がしたいのであれば、ですが。
■ bar bossa(バール ボッサ)
ワインを中心に手料理のおいしいおつまみや季節のチーズなどを取り揃えたバー。 BGMは静かなボサノヴァ。
住所/東京都渋谷区宇田川町41-23 第2大久保ビル1F
営業時間/月〜土 19:00〜24:00
定休日/日・祝
問い合わせ/TEL 03-5458-4185
● 林 伸次(はやし・しんじ)
1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CD ライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセー「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。近著に小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)、『なぜ、あの飲食店にお客が集まるのか』(旭屋出版)など。最新刊はcakesの連載から大人論を抜粋してまとめた『大人の条件』(産業編集センター)。
●清楚から奔放、強い女へ。芸能界で輝いた歴代「いい女」たちを検証してみた【前編】
●いま、40代、50代の「大人の女性」たちが、なぜこんなに魅力的で輝いているのか?
●江口寿史の描く「いい女」は、なぜ時代を超えて愛されるのか?