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2023.10.22

女ゴコロを少しでも知りたいなら? ヒントは女性作家の小説にある!?

「女心と秋の空」なんて言葉もありますが、女性の心を理解することを諦めていてはとてもモテることはできません。まずは、現代の女性の共感を呼んでいる女性作家の小説から、少しでも女ゴコロを知ってみては?

CREDIT :

選書・文/木村美月 イラスト/MJ

現代の女性が共感する4冊をセレクト

「気になる女性の心の中を読みたい」そう思ったことはありませんか? どんなに仲が良かろうと、他人の心の中は覗くことはできませんね。

人の本音を知るのに、小説は最も適した媒体でしょう。小説では、登場人物の心の中が描かれます。みっともなくても、不道徳でも、本音こそリアルな人間の姿です。小説を通して人の心を読み、共感することで、自分の本音にも気づくことができる。また自ずと、相手の心のうちにも敏感になれるのです。

「女心と秋の空」なんて言葉もありますが、「いくつになっても女性の心はわからない……」と諦めるのではなく、少しでも理解しようとし、想像しながら対応することで、ほかのオトコにはない包容力が身に付くはず。

ということで、女ゴコロを知る手始めとして、女性作家の小説を読んでみてはいかがでしょう。現代の女性たちが実際に共感できる4冊を、舞台女優として活躍しながら書評や脚本も執筆する木村美月さんにセレクトしていただきました。

婚活で会ったふたり/言いたいけど言えない気持ち 

辻村深月『傲慢と善良』

▲ 『傲慢と善良』辻村深月、朝日新聞社
▲ 『傲慢と善良』辻村深月、朝日新聞社
19世紀に生まれた恋愛小説の最高傑作のひとつ『高慢と偏見』(ジェイン・オースティン)のタイトルになぞらえ、21世紀の恋愛を緻密に描いた1冊。ミステリー調で一度読み出したら手が止まらないですし、これほど現代らしい視点で純愛を描いた作品はないと思います。

ぜひ男性に読んでいただきたい理由は、フィクションの面白さとリアルな女性の苦しみを両立させていて、小説の面白さを味わいながらも、女ゴコロの解像度を一気に上げることができからです。

ここでいうリアルな女性の姿とは、婚活では優良物件とされる「間違いない人生のルートを普通に歩んできた女性」です。一方、あるシーンで彼女は婚約者の女友達に決め手に欠ける「70点の女だ」と噂され、本人の耳にも入ります。それにショックを受けたことによるすれ違いが原因となって、本作の核となる事件が起こってしまうのですが……。

私にとって色気とは、相手と対峙する時の解像度の高さです。ある人にとっては「70点」でも、その人にしかない優しさや、表情、意外なずるさや隙など、個性と言えるべきものは誰でも持っています。それを見つけていく関心力が、色気なのではないかと思います。

「70点の女」が覆され、唯一無二の彼女になる。そんなどんでん返しが本作では味わえます。自分にきちんと向き合ってくれた相手のことを、女性はなかなか忘れないのです。
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婚約中のゆらぎ/つい二人の男性を比べてしまう

千早 茜『あとかた』 

▲ 『あとかた』千早 茜、新潮社
▲ 『あとかた』千早 茜、新潮社
相手に“痕”を残し、影響し合いながら紡がれていく恋愛連作短編集です。男女がほぼ交互に主人公となり、ふたりの関係性が少しずつ明かされていきます。一作重ねていくごとに作品世界がわかるようになり、深みにはまってしまう読書体験は、まさに読んでいる私たちにも“痕”を残されていくよう。

一章の「ほむら」は、知人を介して偶然出会った男性とつい関係を持ってしまった女性の話。彼女は別の男性と婚約中でした。数年間付き合った彼との関係に不満を持っていたわけではないものの、「気持ちは変化し、みずみずしいものが干からびるように相手への気持ちが失われていく」という、彼女にとって恐らく現実になるであろう将来に、気付いてしまっていました。婚約者への信頼はありつつも、結婚というありきたりな型にはめて関係を保とうとする虚しさを同時に抱えていたのです。

彼女は、そんな時に出会った男性の名前を知ろうとはしませんでした。名前を覚えたら、彼のことが心に刻まれてしまうのではないかと恐れたからです。彼女は、その男との関係性を「かたち」のないものとして心地よく感じてしまいました。もちろん、人を裏切ってはいけないのですが、「本当の自分」が感じている恐怖や虚しさを埋めるように現れた男の前で、彼女は満たされました。

ただし、「かたち」ないものは一瞬で無くなってしまうのですが……。本音ってやはり、世間的には綺麗なものではないと思うのです。だからこそ、普段吐露できないような本音を共有できた男性に、女性は安心感を覚え、惹かれてしまうのではないでしょうか。
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年下の彼氏ができた35歳/見た目が変わっていくことへの不安

金原ひとみ「デバッガー」(『アンソーシャルディスタンス』)

▲ 『アンソーシャルディスタンス』金原ひとみ、新潮社
▲ 『アンソーシャルディスタンス』金原ひとみ、新潮社
整形を扱った作品といえば、岡崎京子『ヘルター・スケルター』(祥伝社)でしょうか。数年前まで整形は怖いものというイメージでしたが、最近は本当に気軽にできるようになりましたね。なかにはある種の“努力のうち”だと認識している人も多いのではないでしょうか。本作の主人公は「老い」を「バグ」のように感じ、整形にどハマりします。

35歳の彼女は、友人が順調に恋愛〜結婚〜出産を経験するのを傍目に、自身の人生を簡単に始まっては終わってゆくパズルゲームにたとえ、「恋愛において先が見ていない」状況をなんとか軽く捉えようとしているよう。もしくは、彼女にとってはゲームにたとえることこそが、実感に近かったのでしょうか。主人公の抱える「痛み」に、私はひどく共感しました。

作者の金原ひとみは10代の頃『蛇にピアス』(集英社)で、刺青やピアス穴を開けるリアルな「痛み」によって生きる感覚を得る若者を描きました。若者の胸を打つような寂しさ、刹那的な魅力がありましたが、本作で描かれる痛みは「イタい」と言われるような弱さを伴うもの、若さにしがみつくような不格好さです。

歳をとれば誰もが身体的に少しずつ弱くなっていきます。若さにしがみつく、若い誰かと自分を比較することは、非常に虚しい時間です。ですが、そういう時間を経て得た、諦めにも似た自分らしさには、若い頃にあった強さとは段違いの、人間らしい匂いがあると思うのです。

人間味のある異性や、相手の人間らしい弱さを受け入れる器のある異性は、男女問わず経験を経た「大人の色気」を持っていると言えるのではないでしょうか。主人公が自分を受け入れ、諦める様をぜひ見届けていただきたいです。
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ラブが最優先のアクセル女子/余裕は無邪気には勝てない 

角田光代「タクシーをぶっ飛ばす日まで」(『愛してるなんていうわけないだろ』)

▲ 『愛してるなんていうわけないだろ』角田光代、中央公論新社
▲ 『愛してるなんていうわけないだろ』角田光代、中央公論新社
短いエッセイ集の中の一つ。今となっては非常に有名な作家である著者が20代前半、1991年に書いたものですが、恋愛において時代はあまり関係がないような気がします。今の若者も、同じようなことで頭を悩ませるのではないでしょうか。

もうずいぶん大人になった気がしている人も、やはり若い自分を心の中に持っていて、時々発動させてしまうことがあるはずです。「夜中にタクシーをぶっ飛ばして会いに行く」、そんないてもたってもいられないような恋愛をしたい、と本作には書いてあるのですが、私も完全に同意で、お財布のことや明日のことなんて関係なく会いに行きたいし、会いに来て欲しいです(笑)。

しかし、そう書いているにも関わらず著者はその行為ができないそう。なぜかというと、タクシーをぶっ飛ばして会いに行くことは、恋愛において「全面的に負け」だから。ですが、著者は気付いています。やはりこの行為ができる人は、ストレートすぎて時々損はすれど、「最後に勝ちを握って笑う」魅力に溢れているのだと。

「全面的な負け」には「試合に負けて勝負に勝つ」ような清々しい魅力があると思います。余裕は無邪気に勝てないと私は思うのです。大人になると「完璧な恋の病」に落ちている人を茶化しがちですが、時にはそんな愚者を受け入れること、もしくは自分もなりきってしまうことも必要なことなのかもしれません。
木村美月(きむら・みつき)

● 木村美月(きむら・みつき)

1994年3月15日生まれ。東京都出身。9歳から舞台に出演。立教大学文学部文芸・思想専修在学中に虚構の劇団に入団し、俳優としての活動を始める。以降、俳優業と執筆業を両立。学生時、朝日中高生新聞にて書評を連載。虚構の劇団退団後、2018年に阿佐ヶ谷スパイダースのメンバーとなる。2019年、木村美月の企画を旗揚げ。プロデュース公演を行い、主に脚本と出演をする。主な執筆作品に、『幽霊塔と私と乱歩の話』、『まざまざと夢』、幻都『朗読劇ロミオとジュリエット』脚本構成など。

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