2023.10.22
【第83回】
クセ強なオトコに引っかかり続けた美女の恋愛の顛末は?
美人とは「美」という高スペックを備えたスーパーカーのような存在。その“スーパーぶり”に男は憧れるわけですが、果たしてそのスペックは彼女に何をもたらすのか? バーのマスターであり、大人の恋愛に関する著書を執筆する林 伸次さんが、世の美人たちの隠された恋愛事情に迫ってみる連載です。
- CREDIT :
取材/林 伸次 写真/田中駿伍(MAETTICO) 文/木村千鶴 編集/岸澤美希(LEON.JP)
テーマは今どきの美女たちの”悩める恋愛事情”。美人が出会った最低男を裏テーマに、彼女たちの恋愛体験(主に失敗)談と本音の恋愛観に迫ります。
第83回目のゲストは、前回に続いて環奈さん(27)です。前編では、留学中に2人の男性を好きになってしまったことや、真面目そうな職業の男性と付き合ってきたことを伺いました。後編では、過去の彼氏との苦労エピソードを話していただきます。
大学生の頃はモラハラ彼氏と付き合っていて
「偏見かもしれませんが、私の経験上、専門的な職業の方ってひとつのことに集中するのはできるけど、細やかな気配りはできませんという感じの人も多いんですね。その後にお付き合いした救急隊員の方とはつらい恋愛になりましたね」
── どんな人だったんですか。
「ちょっとナルシスト。自分にも厳しいのかもしれないけど、人に対して厳しい。当時私は大学生でしたが、経済的にもいろんな面でも独り立ちをしてないことに対して結構言われました」
── そんな、学生相手に厳しいことを言うんですね。
「当時は進路に悩んでいる時で、両親にあまり応援されてない道を行こうとしていたので、ひとりで頑張るしかないって思い詰めていたんですね。その人からも厳しく言われるので、余計自滅してしまって」
── そうか、支えてくれる人じゃなかったんですね。
「そうですね。私のことはペットみたいに扱っていたと思います。見下している感じも嫌でしたね。その後ちょっとした事件が起きて」
── その事件のことは聞いても大丈夫ですか。
心身が健康じゃない時に、好きと言ってくる人は危ない
── それは遠いですね。夜ですもんね。
「はい、彼が救急隊員というのもあり、絶対に救急車の厄介にだけはなるまいと必死だったんですけど、どうしても症状を鎮められなくて、彼に電話しちゃったんですよ」
── それは仕方ないですよ。
「それで迎えにきて家に連れて行かれたんですが、私は道で転けて傷だらけで、心もぐちゃぐちゃ、入った部屋は真っ暗で、寝室にあった大きな鏡につまずいてしまい、鏡が割れちゃったんです」
── 大変! 大丈夫だったんですか?
「そうしたら彼は、私の心配はほどほどに鏡が割れたことを責めるんです。『これは手作りのもので何万円もしたんだ』みたいなことを言われて、そんなボロボロな状態で自分で掃除をしました。金額のことをあまり言われるので『じゃあ弁償します』と言ったら『もちろんそうだよね』と振込先を渡されました」
「振り込みましたよ。だって怖いし。別れる時にも一悶着ありました。ヤバい男でした」
── それはモラハラですよ。大変な目に遭いましたね。
「やっぱりあれはモラハラですよね?」
── そう思います。そういう目に遭ってしまうと動けなくなってしまうものですか?
「当時は自分が健康じゃなかったんです。親にも友達にも相談できない、ひとりで頑張らなきゃと思い込んでいましたから」
── そこにつけ込んでくるなんてとんでもない。
「私もいけなかったんです。この人と対等になれるぐらいの人間になれば乗り越えられるとか、厳しいけどこれに耐えたら鍛えられるんじゃないかと、それをメリットのように思ってしまったんですね」
── そうか、そう考えてしまったんですね。
「やっぱり心身ともに健康でいることは大事です。自分がダメな時に自分のことを好きと言ってくる人はどこかおかしいですよ。いらない経験だったと思います」
ポリアモリーの彼の生き方を受け入れようと思いましたが……
「悪い人というわけではないですが、社会人になってすぐの頃に付き合った男性がポリアモリーでした」
── ポリアモリーというのは、お付き合いする人がひとりに限定されていない人ですよね?
「ざっくりとはそうですね。私、それまでポリアモリーという概念を全然知らなくて、本人も実はなんとなくしか分かっていなかった。それで『自分は他にも好きな人ができたりする、そういう感じなんだけど大丈夫?』みたいな感じで言われて『でも彼女は私なんでしょ? だったら大丈夫』と言ってしまったんですよ」
── あ〜、理解できるかもしれないと。
「はい、勉強してみたらポリアモリーの考え方はすごくいいなと思ったんです。私にも留学の時にふたり同時に好きになった経験があるし、そういう人ってきっと多いし、それ自体は悪いことではないと思うので、受け入れられるようになりたいと思ってはいたんですが」
── 実際には難しかった?
「はい。同じ業界の人だったので、彼が他の好きな女の子と一緒にいる場面を見ることが多かった。やっぱり目の前でイチャイチャするのは見たくなかったですね。私たちは付き合っていたことを周りに隠していたんです。同業者だし、好きな女の子の耳に入ったら相手が悲しむかもしれないと思って」
── 優しすぎませんか!
「ですよね(笑)。すると周囲は他の女の子の方を親密な関係だと認識するわけで、次第に苦しくなりました。私が彼女なんだけど、なんで!? って」
── どうしてそんなに我慢しちゃったんですか。
「留学での経験が大きいかな。そもそも異文化交流に興味があったから留学したんですが、さまざまなバックグラウンドを持った、文化も考え方も違う人とお話をするのが楽しかったんです。でも全然違う相手だからこそ、リスペクトや理解がないと深い関係になっていくのは難しいですよね。だからできるだけ相手のことを否定せずに、理解をするためにチャレンジしてみようと思ってしまったんです」
心に余裕がなくなって泣いてばかりいました
「ええ、そこまで我慢をすると心の余裕がどんどんなくなって、視野が狭くなるというか、自分らしさを失っていくんだなと気づきました。泣いてばかりいましたね」
── 普通に考えて、その状況で恋愛を続けるのは難しいです。
「しかも相手はポリアモリーのことを勉強していないんですよ。『みんなは一対一で恋愛するってことは理解しています、自分はなんとなくいろんな人を好きになります、以上』みたいな感じ。私は当事者ではないので、本を読んだりセミナーに参加しようと応募したりしましたけど」
── 環奈さんが真面目に学んで理解しようとしていることに対して、彼からの感謝はありましたか?
「どうだろう。寄り添いはするけど、解決に向けて行動する人ではなかった。ある時、彼に聞いたんです。私はどうしたら自分が好きな私でいられるのか、もしくはあなたの好きな私になれるのかって。そうしたら『もう少し心に余裕があった方がいいと思うよ』って。その瞬間に気づいたんです。『は? 心に余裕なくなってんのお前のせいだから!!』って(笑)」
── 本当にそうです!
「それで、もういい、やめようって思えましたね」
── 向こうに合わせなくていいです。彼はそんなに魅力的な人だったんですか。
── 最近の恋愛状況はどうなんですか?
「とても素敵な人と出会い、今は婚約中です。あの頃が地獄だとしたら今は天にいるくらいの気持ちです♡」
── わあ〜良かった! 本当に幸せになってください!
【林さんから〆のひと言】
あれば、そうではないときもあるものなんですね。でも今は素晴らしい方といるようで、ホッとしています。幸せになってくださいね。
■ bar bossa(バール ボッサ)
ワインを中心に手料理のおいしいおつまみや季節のチーズなどを取り揃えたバー。BGMは静かなボサノヴァ。
住所/東京都渋谷区宇田川町41-23 第2大久保ビル1F
営業時間/19:00〜24:00
定休日/日・祝
TEL/03-5458-4185
● 林 伸次(はやし・しんじ)
1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CDライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセイ「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)、『なぜ、あの飲食店にお客が集まるのか』(旭屋出版)、『大人の条件』(産業編集センター)。最新刊は『結局、人の悩みは人間関係』(産業編集センター)。