2022.09.14
ホンモノ志向の洒落者が注目! イタリア老舗バッグブランド「セラピアン」の現在地とは?
イタリア・ミラノで1928年に創業した老舗ラグジュアリーレザーブランド・セラピアンのCEOジャコモ・コルテシ氏が来日。来年に創業95年を控えてまさに躍進しつつあるセラピアンの今、これから、そしてプライベートなことまで、色々と聞いちゃいました。
- CREDIT :
文/安岡将文 写真/内田裕介(Ucci)
そんな同ブランドのCEOであるジャコモ・コルテシ氏の来日に合わせて行った今回のインタビューでは、2024年には日本にフラッグシップショップをオープンさせる予定とのスクープ情報も! さらには、コルテシ氏のお子さんとLEONには密接な関係性があったという事実も判明しました。
我々の繊細なクリエイションは、日本の方にこそ見ていただきたい
コルテシ まず、セラピアンが属するリシュモングループは、例え規模は小さくとも長い歴史、そして確かな技術力を備えたブランドを大切に育ててゆくという哲学があります。セラピアンは、まさにその一つです。
セラピアンは、来年95周年を迎えます。数あるイタリアのラグジュアリーブランドの中でも、とても歴史の長いブランドです。そして、レザークリエイションにおいて確かな実績を誇ります。さらに、メンズもレディスもともに評価が高いことは稀有と言えるでしょう。
—— CEO就任から5年。その中で見えてきたセラピアンの魅力、または課題とは。
コルテシ セラピアンは、実にエレガントなブランドだと感じました。それは、創業者ステファノ・セラピアンの妻ジーナによるところが大きいのではと考えています。当初彼女はレディスを担当していましたが、次第にメンズのクリエイションにも関わってきます。セラピアンのメンズバッグがエレガントに見えるのは、そんな彼女のDNAでしょう。
この5年間では、アーカイブを徹底して精査しました。それまでのセラピアンは拡大路線を取っており、いわば何にでも手を広げた状態。アーカイブを精査する中で、原点に立ち返ることが最良だと気づきました。それが、最上の素材選び、優れたクラフトマンシップ、メイド・イン・ミラノであることです。
コルテシ この5年間で、様々な国での展開を行いました。中東やアフリカ、アメリカやカナダも好調です。今後はパリ、そして日本には2024年にフラッグシップショップをオープンする予定です。ミラノ本店もリニューアルしますし、今後さらにセラピアンのクリエイションに触れていただく機会が増えると思います。
—— 日本のマーケットをどのように捉えていらっしゃいますか。
コルテシ 日本のカスタマーには、最も親しみを感じています。歴史やクラフトマンシップに対してリスペクトする姿勢は、日本とイタリアは共通しているからです。個人的にも、日本の方と仕事をするのはとても楽しいですしね。
それから、日本はクオリティに対する期待値がすごく高いと感じています。ブランドによっては緊張を生むのかも知れませんが、セラピアンにとっては喜ばしいこと。モザイコシリーズのような繊細なクリエイションは、日本の方にこそ見ていただきたいのです。
—— 昨今、多くのメゾンやラグジュアリーブランドがストリートを意識したデザインを披露しています。セラピアンにその考えは?
コルテシ ありません。セラピアンのクリエイションは、タイムレスであることが命題。もちろん、トレンドをまったく無視するわけではありませんが、長く使い続けられるデザインこそがアイデンティティなのです。だから、ロゴも大きくしたりはしません。技術そのものがアイコンなのです。
一方で、ニーズの変化には対応しています。昨今はバッグのコンパクト化が顕著。そうしたカスタマーの実情的なニーズへの答えは、コレクションにしっかりと反映させています。
コルテシ より大量に生産する必要があるブランドであれば、それは戦略的にあり得ることでしょう。しかし、セラピアンにおいてはイタリア生産にこだわり続けます。技術の継承はもちろんですが、例えばモザイコシリーズはルネッサンス期のイタリア絵画からインスピレーションを得ています。そうした感性は、リモートでは養えないのです。
実は息子のひとりは名前がLEONと言うんです
コルテシ どんなことにも情熱を持って取り組み、すべての人に対してリスペクトを持つこと。情熱のない仕事は、塩の入っていない料理と一緒ですから(笑)。
それから、仕事をするうえでは俯瞰して全体を把握することを大切にしています。私はサルヴァトーレ・フェラガモがキャリアのスタートでしたが、当時チーフオペレーティングオフィサーという立場から、生産から販売まですべての工程を知ることができました。すべての工程を知っておくと、他の部門の人たちへの理解、つまりリスペクトを持つようになります。セラピアンでも、新たに入ってきた人にはまず生産から販売まですべての工程に触れ、学ぶことを課しています。
コルテシ ええ、父が経営しています。私は飲む専門ですがね(笑)。ワインの生産も、一から百まですべて目を行き届かせる必要があります。大変な仕事だと思います。それこそ、情熱がなければできないでしょう。
—— CEO就任から度々来日されていますが、日本ではどんな過ごし方を?
コルテシ とにかく食べるのが大好きなので、色々と食べ歩いています。日本食はどれも好きで、もちろんラーメンも(笑)。イタリアでは今日本食がブームですが、やっぱり本場は違います。日本食は季節ごとに旬な食材を使いますよね。同じお店でも来る度に料理の趣向が変わるのが、とても興味深いです。
▲ ミラノに構えるビスポークサロン。ここで好みのバッグやレザーグッズをオーダーすることができる。
▲ 同じくミラノのビスポークアトリエ。こちらでは限られた職人のみが作ることができるナッパレザーの編み込み「モザイコ」を制作している。
▲ 2022年秋冬コレクションの新作ブリーフケース。素材は1972年に誕生した、コーテッドキャンバスを使用したステパン72。ブランドの頭文字Sが細かく象られている。
▲ ミラノに構えるビスポークサロン。ここで好みのバッグやレザーグッズをオーダーすることができる。
▲ 同じくミラノのビスポークアトリエ。こちらでは限られた職人のみが作ることができるナッパレザーの編み込み「モザイコ」を制作している。
▲ 2022年秋冬コレクションの新作ブリーフケース。素材は1972年に誕生した、コーテッドキャンバスを使用したステパン72。ブランドの頭文字Sが細かく象られている。
コルテシ 毎年、夏休みになると、3人の子ども達に予定を計画させています。その際、私は一切口出しをしません。彼らの計画に沿って過ごすのです。最近、息子達は釣りが好きですね。先日も船で釣りに出かけ、1m近い大物を釣り上げました。
息子達は2人ともサッカーが好きなんです。私は元々プロのサッカー選手でゴールキーパーだったのですが、なんと息子2人もゴールキーパーなんです(笑)。スポーツはとてもたくさんのことを学べます。勝った喜びだけでなく、負けた悔しさも。ライフレッスンにはうってつけです。
そうそう、息子の一人は名前がLEONって言うんですよ! だから日本に来た時には雑誌LEONを必ず買って帰り、息子に「日本では君のことがこんなに大々的に取り上げられているぞ!」ってジョークを言うのがお決まりなんです(笑)。
● Giacomo Cortesi(ジャコモ・コルテシ)
1971年イタリア生まれ。ボローニャ大学の工学部を卒業し、1998年にサルバトーレ フェラガモでキャリアをスタート。2002年にエルメネジルド ゼニアとサルバトーレ フェラガモの合弁会社ZeFersrl にて、レザーグッズとシューズ部門のオペレーションディレクターを担当。2007年にリシュモングループに加わり、2015年にモンブランのレザー部門、2017年にセラピアンCEOに就任。
■ SERAPIAN(セラピアン)
ステファノ・セラピアンによって1928年にミラノにて創業。ファミリービジネスで90年以上の長い歴史を持ち、オードリー・ヘプバーン、イングリッド・バーグマン、フランク・シナトラらが愛用していたことでも知られる。最適な産地の最高品質のレザーを使用し、鞣しから成型まですべての工程をイタリア国内で完結する真のメイドインイタリーを貫き、イタリアの中でもより“洗練”され“エレガント”さが際立つ“ミラネーゼ” がアイデンティティ。レザーの編み込みがユニークな“モザイコ”は、創業者ステファノによって、1947年に考案された。熟練した職人の手により、ソフトラムナッパレザーを丁寧に編み込んで制作されており、メゾンのクラフトマンシップを象徴するアイコンとなっている。創業当初から行っているビスポークもセラピアンの企業精神を象徴するサービス。
HP/Serapian Boutique Online