2023.11.10
【第26回】さとうほなみ(女優)前編
ゲス極「ほな・いこか」=女優さとうほなみさんの攻めすぎ濃厚シーンには腰を抜かしました!
世のオヤジを代表して作家の樋口毅宏さんが時代の先端を走る女神たちに接近遭遇! 今回のゲストは、女優のさとうほなみさんです。バンド「ゲスの極み乙女」のドラマーほな・いこかとしての顔も持つほなみさんが映画『花腐し』で、綾野 剛さんと柄本 佑さんという二大モテ男優と共演。見事な存在感を放つ、その素顔に迫りました。
- CREDIT :
取材/樋口毅宏 文/井上真規子 写真/内田裕介(タイズブリック) スタイリング/中澤咲希 ヘアメイク/Asuka Takei(株式会社 a-pro.) 編集/森本 泉(LEON.JP)
実はさとうさん、「ゲスの極み乙女」のドラマーとしてデビューするずっと以前、小学生時代から女優として活動。バンドのブレイク後は音楽活動が中心でしたが、2017年から「俳優さとうほなみ」としても本格的に活動を始め、ここ数年は映画やドラマなど多くのヒット作に出演されているのです。
11月10日に公開となる映画『花腐し』では、綾野 剛さん演じる前彼と柄本 佑さん演じる元彼という二人の男性に惚れられるヒロイン・祥子として、見事な存在感を放っています。表現者として類稀なる才能をもつさとうさんの本音に樋口さんが迫ります!
「“俳優さとうほなみ”に、まんまと騙されました!」(樋口)
さとうほなみさん(以下、さとう) そうだったんですね。ありがとうございます。
樋口 そして今作『花腐し』、観せていただきました。1人の女性を介して男性2人の友情を描くというピンク映画へのオマージュがありましたね。さとうさん演じる売れない劇団の女優・祥子は、とても男の手に負えるような女性ではなかったわけですが、栩谷(綾野 剛)と伊関(柄本 佑)という2人の男は、自分は彼女のことをすべて知っているとそれぞれに思い込んでいた。男を代表して言わせていただくと、男は馬鹿で「俺は愛する女のことはちゃんと知ってる」と思っているんです。もちろん大いなる勘違いなんですが。
さとう アハハ(笑)。
さとう う〜ん、私は単純明快ですよ(笑)。“謎多き”みたいな役が続いたのもあって、そう言われることもたまにありますが、実際関わってもらうとすごくわかりやすい人間だなって思うのじゃないでしょうか。
樋口 そうなんですか〜。さとうさんは、作品の中でちゃんと影を纏うことができていて、こういう俳優さんってなかなかいなかったなって思いました。
さとう そう言っていただけるとうれしいです。今回は2回オーディションがあったのですが、1回目の時に監督(荒井晴彦さん)から「祥子は暗い人間だけど、あなた明るいよね」って言われて、あ、落ちたなと思ったんです。でも思いがけず2回目もお声がけいただいて、監督の中で何が起きたのかしら?って思って。それから映画祭で私がオーディションの時の話をしたら、監督が「最初からほなみに決まってたよ」って仰るから、嘘ばっかりって思いました(笑)。
さとう いえ〜い! 私は寝たら忘れるタイプだし、(笑いの)ツボも浅いので、楽しそうだな自分とは思います。
樋口 そうなんですか。
さとう あ、でも、明るいっていうのは荒井監督が仰っただけで、私自身は底抜けに明るいと思っているわけじゃないんですよ。
樋口 えっ、どっち?(笑)
さとう 逆に、監督は「祥子が暗い」と仰ったけど、私はそう思ってないんです。祥子は選択を間違っただけで、本当はちゃんと人に心も開けるし、すごくいろんな顔を持ってる子だと思っていました。
樋口 人間はそう一面的に捉えられるはずもないですからね。ますますわからなくなってきましたが(笑)。
「祥子が選んだ行動の理由は、観た人に感じてもらいたい」(さとう)
さとう 祥子も栩谷も伊関も確かにどこか不安定なところがあるんですが、そういう、何もないのにふと不安が襲ってくるとか、疑問を抱いていたものが 時折爆発してしまうみたいなことって誰しもあるような気がしていて。完成した映画を見て、そういう共感性がある作品だなと思いました。
樋口 なるほど。
さとう ただ、祥子が選んだことの理由については、観た人に感じてもらいたいので、私は言及しないようにしてるんです。でも、監督はパンフレットのインタビューで普通に仰ってました(笑)。監督の見解は、私の見解とはまた違うんですけど。
さとう それはないかな……。祥子の選択はすごく切ないもので、世間にもこういう選択をしてはいけないというのが大前提としてありますよね。この作品で祥子は2人の男性の思い出話の中にしか登場しないので、祥子がその選択に至るまでの葛藤というのは多くは描かれてはいないんですけど、私の中ではやっぱりそういう判断は想像できないと思います。
さとう 荒井監督の作品は以前からよく拝見していて、直近では映画『火口のふたり』を試写で観ました。原作も知らずに行ったので最後の展開で、マジ? って声が出ちゃったんです(笑)。今回オーディションの時に、試写で声を出してしまったことを監督に直接謝りに行きました。
樋口 『火口のふたり』は僕の作家としての師匠の白石一文の小説なんですよ。
さとう そうだったんですね!
「昨今ここまでアグレッシブな俳優さんっていなかった」(樋口)
さとう 自分の中では二刀流という感覚はないんです。自分が楽しんでできているっていう点では、どちらも同じなので。
樋口 僕は、一番はじめに『愛なのに』でさとうさんを見て驚いて、その次に水原希子さんとダブル主演されたNetflixの映画『彼女』を観て、またすごく濃厚なシーンがあって、凄いよこの方は、と驚いて。そして今回『花腐し』を見て、もう毎回体当たりで攻めすぎじゃないかと腰を抜かしました。
さとう 観ていただいた作品は、どれも大層な濡れ場があるものなので……(笑)。
さとう ありがとうございます(笑)。
樋口 過去作品と今作を見て、「ミュージシャンが片手間で出ているなんて絶対に思われたくない。俳優さとうほなみとして演じているんだ」というさとうさんの強い思いみたいなものを勝手に感じました。ご自身として俳優業の手応えはどう感じていますか?
さとう 「さとうほなみ」として俳優をやり始めた頃は、「ほな・いこか」と同一人物であることを知ってもらえたらうれしいなと考えていました。でも今は「さとうほなみ」と「ほな・いこか」のそれぞれができることを、精一杯やらせてもらおうと思っています。何より、これまで携わらせていただいた作品はどれもすごくいい作品ばかりで、全力でやらせていただいています。
さとう 私はもともと役者がやりたくて、小学生の頃から活動していたんです。その中で色々環境を変えていこうと思っていた時に、バンドに出会ってのめり込んでやるようになりました。
樋口 最初から、俳優活動されていたんですね!
さとう そうなんです。
さとう 観ていただいたんですね! 私、怖くてまだ観れてないんですよ(笑)。なんでU-NEXTに上がっているのかとびっくりしました。
樋口 あれは「さとうほなみ」「ほな・いこか」のマニアが10万円ぐらいでDVDを取引するようなレベルのものですよね。裏として回ってもおかしくない! それがこんな簡単にネットで見られてしまっていいのか? ってびっくりしました。
さとう アハハ(笑)。便利な世の中になりましたよね。
※後編(11月12日公開予定)に続きます。
● さとうほなみ
1989年8月22日生まれ。東京都出身。2017年よりさとうほなみとして女優活動をスタート。近年の主な映画作品に『窮鼠はチーズの夢を見る』(20/行定勲監督)、Netflix『彼女』(21/廣木隆一監督)、『恋焦がれ歌え』(21/熊坂出監督)、『愛なのに』(22/城定秀夫監督)、『銀平町シネマブルース』(23/城定秀夫監督)。ドラマではABEMA「30までにとうるさくて」(22)、「六本木クラス」(22/EX)、Netflix「今際の国のアリス シーズン2」(22)、「あなたがしてくれなくても」(23/CX)、「彼女たちの犯罪」(23/YTV)など。「ゲスの極み乙女」のほな・いこかとしても活動。
● 樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)
1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新刊『無法の世界』(KADOKAWA)が好評発売中。カバーイラストは江口寿史さん。
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■ 『花腐し』(HANAKUTASHI)
斜陽の一途にあるピンク映画業界。栩谷(綾野 剛)は監督だが、もう5年も映画を撮れていない。梅雨のある日、栩谷は大家から、とあるアパートの住人への立ち退き交渉を頼まれる。その男・伊関(柄本 佑)は、かつてシナリオを描いていた。映画を夢見たふたりの男の人生は、祥子(さとうほなみ)という一人の女優との奇縁によって交錯していく。3人の男女が織りなす切なくも純粋な愛の物語。原作は第123回芥川賞に輝いた松浦寿輝による同名小説。『Wの悲劇』(1984)や『ヴァイブレータ』(2003)などを手掛け、日本を代表する脚本家のひとりでもある荒井晴彦が監督を務めた。
11月10日(金)より全国公開中。
HP/映画『花腐し』公式サイト
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