2024.04.26
中川大志、25歳のリアル。「お芝居のことで悩むのは幸せな時間です」
25歳にして15年の芸歴を誇る人気俳優の中川大志さん。作・演出を岸谷五朗さんが務める話題の舞台『儚き光のラプソディ』の主演を控えた中川さんの謙虚でストイックな素顔に迫りました。
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文/岡本ハナ 写真/内田裕介(タイズブリック) スタイリング/徳永貴士 ヘアメイク/堤紗也香 編集/森本 泉(Web LEON)
仕事は引きも切らず、もちろん世の女子たちにも大人気。まさに天下無双状態かと思いきや、話してみれば本人は意外なほど謙虚でストイック。果たして今どきのイケメン俳優はどんなことを考えて仕事をし、日々を過ごしているのか、4月28日から公演が始まる舞台『儚き光のラプソディ』でも主役を務める中川さんに話を伺いました。
俳優以外の選択肢はない、これしかなかった
中川大志さん(以下、中川) 高校を卒業したのがついこの間だと思っていたのですが、けっこう時間が経ってしまっているんですよね。当時の気持ちを思い出すのは難しいのですが(笑)、ひとつはっきりしているのは、小・中・高とこの仕事やってきて、役者以上に自分の心が動くことはなかったということ。何か別のジャンルを学びたいとか、学業としての選択肢はありましたが、別の仕事をゼロからスタートしたいという気持ちはありませんでした。俳優以外の選択肢はない、これしかなかったんです。
中川 その時は思いませんでした。演技以外のことに興味がわいて、また学び直したいと思うことがあれば、その時チャレンジすればいいやと。それは今もそう思っていますけど。
中川 風間さんは大先輩ですね。 初めてご一緒しますが、僕よりずっと前からこの仕事に携わっているので、時代ごとに色んな変化を経験してきたんだろうなと思います。僕も小学生の時から芸能の仕事を始めてますけど、だからこそ、風間さんが持つ年輪と言うか、強さを感じます。ご本人はすごく知的で優しい印象なので、今回は隙のある風間さんの姿が見たいです(笑)。
福君も共演は初めてですが、約13年前に楽屋でご挨拶をしたことがあるんです。僕も幼かったけど、福君はまだ小学生くらい。ポスター撮影時に当時の話をして盛り上がりました。
── やはり子役出身という共通点は、結束力が生まれますか?
中川 大人になってから俳優を始めた方達と何が違うのか、一概には言えませんが、共有できるものは何かしらあるとは思います。昔の芸能界で、幼少の頃だったからこそできた経験もありますからね。
中川 どこにいっても僕が一番年下の現場ばかりでしたが、最近では年下世代の俳優に会う機会が増えてきました。今回も、自分より年下の福君がいることは、うれしさもあり楽しみでもあります。
中川 僕は、頻繁にいろんな人と食事に行くタイプではないです。でも、舞台は稽古も含めて出演者と過ごす時間が長いので、自然と映像作品とは違う距離感になるんです。だからこそ、僕は舞台がすごく好きなのかもしれません。今回の地球ゴージャスは、皆で共有する時間を大事にしていると伺っているので、その一員になれたらうれしいですね。
自分を知って、自分のご機嫌をとることも必要
中川 それが僕はけっこうネガティブなんです(笑)。なので、この仕事に向いてないかもしれないなと思うこともあります。大体、自分の状態が整っていないと、芝居やパフォーマンスはできません。俳優という仕事を続けるためには、自分を知って、自分のご機嫌をとることが必要です。自分も常々コントロールはしていますが、新しい壁にぶつかると修正が難しいと感じることもあります。
── 落ち込むとしたら、それはどんな場合ですか? 難しい役柄とか?
中川 いや、お芝居のことで悩むのは幸せな時間だから、そこで落ち込むことはないです。それよりももっと違う要素。僕たち俳優は毎日同じ場所・時間・メンバーと共に仕事をするわけではない、いわゆる“期間限定”の方達とひとつのものをつくります。そんな中で、意見を出し合うことは当然ですが、初対面の方に「自分はこういう人間です」「あの人はこういう人なんだな」と、リスペクトし合って意見交換し合うことは、すごくエネルギーを使う作業なんです。
中川 そういう中で「もっとうまく伝えられたら」と思うこともあるし、逆に相手が意図していないことを僕が誤って捉えてしまうこともあるかもしれないので、慎重に言葉を汲み取るようにしています。どんなお仕事もそうかもしれないけれど、誰かと会っては別れの繰り返しなので。そういう時にもっとスムーズに進行できるように、コミュ力を高めていきたいとは思います。
なんてこの人達は楽しそうなんだ! と嫉妬するぐらい感動
中川 高校生くらいの時ですね。当時は映像の仕事ばかりで。演劇に憧れていて「舞台をやってみたい」と言い続けていました。舞台を観ることも好きで色々な作品を観ていましたが、2016年公演の地球ゴージャスの舞台『The Love Bugs』を鑑賞した時に、燃え上がるように興奮したのを今でも覚えています。「エンタテインメントの仕事って最高だな」って感動しました。
── どんなところに高いエンタメ要素を感じたのでしょう?
中川 歌、ダンス、アクションなど様々なパフォーマンスを取り入れているんですが、そのパフォーマンス一つひとつにエネルギーがあって、純粋に圧倒されました。岸谷さんと寺脇さんのおふたりがつくる空気感なのか、カンパニーとしての結束というか繋がりの強さが見ていて感じられるんです。「なんてこの人達は楽しそうなんだ!」って、観ている方が嫉妬するくらいでした(笑)。
中川 そうですね。掲げるテーマもシンプルだけど、それに様々な肉付けがあることで、色んな面から刺さってくる。圧倒的なパフォーマンスと明確なメッセージ性を兼ね備えていると思いました。
── 舞台に立つことが憧れだったとのことですが、一昨年(2022年)には主演を務められましたね。
中川 はい。音楽劇『歌妖曲〜中川大志之丞変化〜』で主演を務めたことは、ものすごく大きな経験です。体力的、肉体的にも大変な作品だったので、しびれるような日々でしたが、エンタテインメントを作るひとりの人間として「ナマモノという舞台に立ち続けていきたい」という思いを改めて実感しました。
中川 映像は舞台とは違い、瞬発力なども必要になってきます。演劇に深く関わっている先輩方と話をする時、言語化できないスゴさ、秘めている強さのようなものを感じていました。僕は、自分が主演を務めた舞台に立った時に、ようやくその何かを少しだけ知ることができた気がします。
── 自分自身の成長を実感できた瞬間ですね。
中川 自分がどうというより、主演舞台をきっかけに、スタッフをはじめ役者の方達、演劇を作るすべての方達へのリスペクトがものすごく大きくなりました。何もないゼロの状態からひとつカタチにすることが、こんなにも大きなことだなんて。そこに足を踏み入れたことが、僕からするとうれしくてたまらないことでした。
中川 準備期間と公演を含めると2カ月以上も役と共に時間を過ごさなければなりませんからね。でも、だからこそ、気づきがあるんです。前回主演を務めた舞台では、肉体的なアプローチも難しく、精神的な部分でもツラい役でしたが、次第に役と一心同体になり、演じている感覚がなくなり、本当の意味で自由になれた気がしました。時間をかけるからこそ達することができる境地があることを知ることができたのは貴重な経験でした。
── その舞台を岸谷さんがご覧になって、本作出演のオファーがあったとのことですよね。
中川 はい。いつになるか分からないけど「また舞台に立てたら」と思っていた矢先に、憧れの地球ゴージャスさんからお声がけいただけるとは本当に想像もしていませんでした。高校生の時の自分からしたら、想像もできないようなスペシャルなこと! こんなスゴい世界を作りあげる方達の舞台には簡単に立てるものではないと思っていたプレッシャーもありますが、それも含めて楽しみにしています。
※後編(こちら)に続きます。
● 中川大志(なかがわ・たいし)
1998年6月14日生まれ、東京都出身。2009年俳優デビュー。NHK連続テレビ小説『なつぞら』、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』など話題作に出演。映画『坂道のアポロン』と『覚悟はいいかそこの女子。』で第42回日本アカデミー賞新人賞を受賞。2022年には本格的舞台初出演にして初主演を務めた音楽劇『歌妖曲〜中川大志之丞変化〜』を完遂。現在、テレビ東京『95』、MBS『滅相も無い』が絶賛放送中。待機作に映画『碁盤斬り』(5月17日公開)がある。
Daiwa House Special 地球ゴージャス三十周年記念公演『儚き光のラプソディ』
岸谷五朗と寺脇康文による演劇ユニット「地球ゴージャス」の30周年記念公演。物語の舞台は"謎の白い部屋"。そんな部屋へ、ひとり、またひとりと人が集まっていく。孤児院で育ったという青年、謎のジョッキー、軍服を身に纏った男、ホテル支配人、ひまわり畑からきたふたりの男、老婆。時空を超え、様々な場所から、集まった男女7人に共通することはただひとつ。"逃げ出したい"という強い感情が溢れ出しそうになった瞬間に、目の前に扉が現れたという。扉を開けた先の白い部屋で繰り広げられる会話により、互いの環境が微妙に、そして確実に変化していく。本作は、地球ゴージャス30周年記念公演。作・演出/岸谷五郎 出演/中川大志、風間俊介、鈴木福、岸谷五朗、寺脇康文ほか。
企画・製作/株式会社アミューズ
期間/4月28日~5月26日 明治座
HP/Daiwa House Special 地球ゴージャス 三十周年記念公演 『儚き光のラプソディ』