2024.04.28
中川大志、25歳の挑戦。「俳優の演技は自分の中にあるものしか出てこない」
25歳にして15年の芸歴を誇る人気俳優の中川大志さん。作・演出を岸谷五朗さんが務める話題の舞台『儚き光のラプソディ』の主演を控えた中川さんの謙虚でストイックな素顔に迫りました。その後編です。
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文/岡本ハナ 写真/内田裕介(タイズブリック) スタイリング/徳永貴士 ヘアメイク/堤紗也香 編集/森本 泉(Web LEON)
果たして今どきのイケメン俳優はどんなことを考えて仕事をし、日々を過ごしているのか、4月28日から始まる舞台『儚き光のラプソディ』でも主役を務める中川さんに話を伺いました。その後編です(前編はこちら)。
監督と出演を同時に行うことは本当に難しい
中川大志さん(以下、中川) 演出家であり、脚本家でありプレイヤーでもあるという岸谷さんを(取材時の段階では)まだ見ていないので、どういう風にやるんだろうというのは気になるし楽しみです。もちろん一緒にお芝居するのも楽しみです。
ただ昨年、自分が映画を制作した時に実感したのですが、監督と出演を同時に行うことは本当に難しい。改めて、僕はマルチタスクが苦手な人間なんだなと思いました。でも、岸谷さんは作品の生みの親であり、俳優として演じ、全体を見てみんなを導くということを何度もやり遂げている。これは本当にすごいことです。その姿を近くで見て勉強できることは、めったにない機会だと思います。
中川 作品への向かい合い方、役へのアプローチの仕方など細やかなところまで感想をいただきました。演出家であり役者でもある岸谷さんならではの視点でいただく言葉は一つひとつに重みがあり、身が引き締まる思いで聞きました。
── 寺脇さんとは何度か共演しているとのことですが、久しぶりに共演するお気持ちは?
中川 寺脇さんと初めて共演したのは、僕が小学校6年生くらい。ポスター撮影の時にお会いした時は、親戚のおじさんのように「大きくなったなぁ!」と言われました(笑)。地球ゴージャスの舞台を観に行かせてもらった時に、楽屋で挨拶させてもらったこともあり、よく遊んでもらっていたんです。そんな寺脇さんと同じ舞台に立てるなんて夢のよう。今回は自分が成長した姿を少しでも見せることができればいいなと思っています。
感覚の演技を芝居の技術として明確化したい
中川 それは少しずつ変わってきていて、10代の頃と今でも違うんですが、実は悔しい思いもいっぱいありました。「なんでもっとうまくできないんだろう」とか自分の力不足を感じる瞬間が日々たくさんあって。それは今でもそうです。
自分自身が何をされたらうれしいのか、何をされたら悲しいのか。そういう感情の湧き出てくる部分は、結局僕でしかないと思っているので。そこを役柄とどういう風に結び付けられるかは、すごく考えています。
── 自分をよく知り、把握して、役に擦り合わせているのですね。
中川 ある役が悲しんでいる状況だったら、自分はこれぐらい悲しい状況って何だろう? みたいなことはすごく考えています。一方で意外に自分のことが分からない部分もあるんです。監督や演出家に自分が知らない自分を見つけていただくこともあり、そんな時は新鮮な気持ちになります。
── そういう演技に対する思いというのは、いつ頃からあったのでしょう?
中川 僕は子役の時代から演技を専門的に勉強したわけでもなく、いきなりオーディションに行って、わからないことだらけの中で、自分の経験を通じて吸収してきたので、感覚で芝居をしてきた部分が多かったので。それでいいと言われる時もダメと言われる時もあったけれど、自分では、何故良かったのか、何故悪かったのかが分かりませんでした。
中川 はい。この世界はプロかアマチュアか明確な線引きがないので「俳優」を名乗るのであれば、もっと技術を持ちたいと思いました。それで20代に入ってから、自分の中で漠然としていたものを芝居の技術として明確化したいという気持ちになったんです。
僕にしかできない仕事をしたいという気持ちで臨んでいる
中川 僕は色々何でもやりたい人間です。作品ジャンルを問わず、どんなキャラクターでも偏らずにやりたい。撮影現場が違えば求められるもの、当たり前とされていることも、本当にすべてが違います。出演オファーをいただく立場としては、求められていることに120%応えることが、まず大前提。その上に、プラスαで自分なりに提案をして、監督や現場が求めていることに擦りあわせ、その仕事をクリアできたら、それが一番ベストだなって思います。
中川 はい。自分としては常に僕にしかできない仕事をしたいという気持ちで臨んでいるので、作品完成後に「中川大志が演じたからいいものができた」と言ってもらえることが一番うれしいです。
── 歌で高い評価を得ていることについては、どう考えますか?
中川 高い評価? 自分では全然そんな風には思っていなくて(笑)。けっこう練習はしていますが、焦りますね。歌もダンスもそうなんですけど、普段やらないことをやるのは、ものすごくカロリーを使うし、今回も共演者の皆さんは、技術が高くて……今まで練習を積み重ねてきたんだな、と感じています。自分もこんな風に歌いたい、踊りたいと思いながら、周り以上に努力しなきゃいけないなと思っています。でも、それがすごく楽しいです(笑)。
── 今後は歌も武器にしていきたい?
中川 武器だなんてそんな(笑)。僕は演じる役の感情に歌をのせて作り込んでいきます。芝居が良くなれば、歌も良くなっていく。その相乗効果がとても面白いんです。
中川 舞台の世界では、僕はまだ経験が少ないので、色々なジャンルの作品に挑戦したいですね。今後も舞台をやり続けることができれば幸せです。
● 中川大志(なかがわ・たいし)
1998年6月14日生まれ、東京都出身。2009年俳優デビュー。NHK連続テレビ小説『なつぞら』、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』など話題作に出演。映画『坂道のアポロン』と『覚悟はいいかそこの女子。』で第42回日本アカデミー賞新人賞を受賞。2022年には本格的舞台初出演にして初主演を務めた音楽劇『歌妖曲〜中川大志之丞変化〜』を完遂。現在、テレビ東京『95』、MBS『滅相も無い』が絶賛放送中。待機作に映画『碁盤斬り』(5月17日公開)がある。
Daiwa House Special 地球ゴージャス三十周年記念公演『儚き光のラプソディ』
岸谷五朗と寺脇康文による演劇ユニット「地球ゴージャス」の30周年記念公演。物語の舞台は"謎の白い部屋"。そんな部屋へ、ひとり、またひとりと人が集まっていく。孤児院で育ったという青年、謎のジョッキー、軍服を身に纏った男、ホテル支配人、ひまわり畑からきたふたりの男、老婆。時空を超え、様々な場所から、集まった男女7人に共通することはただひとつ。"逃げ出したい"という強い感情が溢れ出しそうになった瞬間に、目の前に扉が現れたという。扉を開けた先の白い部屋で繰り広げられる会話により、互いの環境が微妙に、そして確実に変化していく。本作は、地球ゴージャス30周年記念公演。作・演出/岸谷五郎 出演/中川大志、風間俊介、鈴木福、岸谷五朗、寺脇康文ほか。
企画・製作/株式会社アミューズ
期間/4月28日~5月26日 明治座
HP/Daiwa House Special 地球ゴージャス 三十周年記念公演 『儚き光のラプソディ』