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2024.11.16

山田孝之×仲野太賀がこだわる「生に執着する人間の醜さと美しさ」とは?

白石和彌監督の集団抗争時代劇『十一人の賊軍』にW主演している山田孝之さんと仲野太賀さん。同じ事務所の先輩後輩でもある二人が語る時代劇の魅力、子供時代の映画体験から、演じることの醍醐味まで。

CREDIT :

文/浜野雪江 写真/新井徹也 スタイリング/五月桃(山田・ROOSTER)、石井 大(仲野)  ヘアメイク/灯(山田・ROOSTER)、高橋将氣(仲野) 編集/森本 泉(Web LEON)

山田孝之 仲野太賀 十一人の賊軍 WebLEON
山田孝之さんと仲野太賀さんが、集団抗争時代劇映画『十一人の賊軍』(白石和彌監督作品/公開中)に W主演。

所属事務所の先輩・後輩でもあるお二人が、撮影現場での互いの奮闘について語った前編(こちら)に続き、対談後編では作品のお話に加え、子供時代の映画体験から、お二人が感じる映画の魅力、演じることの醍醐味までをうかがいました。
── 本作は、『仁義なき戦い』シリーズの脚本家・笠原和夫さんの原案を、白石監督が満を持して映画化した集団抗争時代劇。対談前編で殺陣の難しさのお話がありましたが、時代劇で演じる際の面白さや大変さをどのように感じていますか?

仲野太賀さん(以下、仲野) 僕は中学生ぐらいの時に、孝之さんが出演された『十三人の刺客』(2010) を見てどハマりして。大人になってからも、『仁義なき戦い』シリーズや昔の黒澤映画、岡本喜八監督の作品などを見て、集団抗争時代劇というものの泥臭さや熱量を感じ、いつかやってみたいなと思っていました。

今回、ありがたくも参加できてまず感じたのは、例えば斬ることも斬られることも自分の実感としてなかったことですし、こうした時代劇には、現代劇ではやれることのない気持ちの振れ幅がやっぱりあるなということで。そのアプローチはなかなか激しいものがありました。
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山田孝之 仲野太賀 十一人の賊軍 WebLEON
▲ 仲野●パンツ5万2800円/マーガレット・ハウエル、シューズ6万8200円/エンダースキーマ(スキマ 恵比寿)、そのほかはスタイリスト私物
山田孝之さん(以下、山田) 僕の場合は、役を演じることにおいては、その役として生きることが最重要で、時代はあまり関係ないんです。身につけるものや言葉が違っても、起きていることは結局、いつの時代も変わらないなと思いますし。

今回の映画も、権力を持つ人たちが、それぞれの判断で藩や国を良くするために動いてはいるけれど、それに伴う軋轢や、使われる人たちの苦しみもあるわけで。さまざまな立場の人間が、そこでもがきながらも前に進むことが、生きることの醜さであると同時に美しさであり、その“生に執着する姿”を見せる作品だなと思っていました。

仲野 確かに今、現実世界を見渡すと、戦争や紛争は各地で起こっているし、決して遠すぎる世界の話でもなくて、“時代は関係ない”というのもホントにそうだと思います。そういうものも感じながら、生きることへの執着を自分の体で表現していくことの過酷さを味わった現場でした。
── 役を生きる上で、特に心がけていたことはありますか?

山田 僕が演じた政には、家に残してきた耳の不自由な妻がいて、自分が生きて帰らないことには妻を守れない。まずは一番大事な人を裏切ることができないから、生きて家に帰ることしか考えてないんです。

砦を守る任に着いている間も、政は賊たちとの助け合いや、新政府軍と旧幕府軍の勝敗なんてどうでもよくて、隙あらば逃げようと試みます。それが傍から見ると“自分勝手で汚い”とか“裏切り”に映るかもしれないけれど、政にとってはそれだけが正義。なので、「必ず生きて妻のもとに帰る」という一点で演っていました。

そんな政の姿は、現代の僕らから見ると、社会や会社の中でさまざまな苦労があったとしても、家庭すら守れなかったらそれってどうなの? という気づきになるかもしれないし、その信念は美しいものだと僕は思います。
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仲野 これはネタバレにもなるのですが、僕が演じる兵士郎は、物語の始まりと終わりでは物語上の立ち位置が180度変わっていきます。その様を、自分的にはすごく大事に演じたいなと思っていました。

紛争が続いていく中で、兵士郎自身が信じているものが揺らいでいく様子に人間味が出ればいいなと思っていたし、人間味が出れば出るほど賊になっていく、そういうグラデーションをとにかく丁寧に大事に演じました。

── お二人は、映像や舞台で幅広く活躍されていますが、ドラマとも舞台とも違う映画ならではの魅力をどう感じていますか?

山田 映画は、お客さんが自分の時間をさいて劇場まで足を運び、お金を払って暗い中で集中して見るものなので、お客さんの集中力が圧倒的に高いというのがシンプルに強みです。

今は配信ドラマもあり、数のバランスで言えば、テクノロジーの進化とともになんでも二極化していきますが、二極化すればするほどアナログは絶対に残っていくので。音楽も、レコードからカセットテープになって、カセットテープからCDやMDになり、配信に至りましたけど、今、サブスクで配信になればなるほどレコードの売り上げが伸びていますよね。

そんなふうに、映画も絶対になくならないものだと思うので、変な危機感みたいなものも僕はないですし、映画はとても素敵なものだと思います。
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── 撮影に臨む際も、心構えが違いますか?

山田 役者は、配信ドラマでも映画でもやることは変わらないので心構えはひとつです。ただ、こっちも真剣にやっているので、真剣に見てもらえるとやっぱりうれしい。

もちろん、作品によってはラフに見てほしいものもありますけど、たとえば配信の作品を家で掃除しながら片手間に見てもらったりすると、「一瞬、俺が目をちらっと動かしたことに気づいてないだろうな。そこに気づかないとニュアンスが少し違っちゃうんだけどな……」みたいに思うこともあるんです。そういう意味で、集中して見てもらえる映画は自分にとっても大事だし、映画に出るのはすごく好きです。
仲野 僕も、劇場体験というのは特別なことだと思います。大きい画面で、大きい音で映画を見ることは、僕自身が「映画俳優になりたい」と思ったように人生を変えるきっかけにもなるし、テレビで見るドラマや配信作品とは違う「体験」になると思います。

誰かと一緒に映画館に行く喜びも体験として記憶に残りますし、いい映画を見た後に外に出ると、街の景色がちょっと違って見える。僕もそういう小さな体験が自分の中で積み重なって大きな思いになったと思うので、映画が大好きなんです。
── プライベートで好んで見るのはどういう映画が多いですか?

仲野 演劇もそうですが、僕は監督や演出家で見ることが多く、作品を作っている人の色や作家性がしっかり伝わってくる〝作り手の顔が見える作品〟が好きです。俳優としても、そういう作品に関わっていきたいなとすごく思います。

山田 僕はプライベートで見る映画の本数が圧倒的に少なくて、「演じること」が好きなんです。今回の政も、僕が現場で実際に演じるまで、スタッフもキャストも本当の意味では彼のことを知らないわけです。

それを、本番を迎えるまでに、とにかく(役と)話し合って、(役と)同じ気持ちになり、政という1人の人間になって、彼の生きざまを伝えてあげるのが僕の仕事なので。僕が政を託されたということは、僕にしかできない政があるわけで、それを試行錯誤しながら体現できる喜びがまず一番にあります。

勉強のためや、刺激を受けるためには、本当は見たほうがいい作品もあるかもしれないけれど、やはりそれよりも、役作りをして実際に演じ、その人として生ききることのほうが僕は圧倒的に好き。だから役者をやってるみたいなところがあります。
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── 仲野さんは、俳優としての喜びをどういうところに感じていますか?

仲野 僕はお芝居をしている時ももちろん楽しいし、幸せを感じる時もあるんですけど、それと同じくらい、この仕事をやっているからこそ、いろんな人に出会えることが自分の中ではとても大きいです。
俳優って、ひとつの仕事でものすごい数の人と目まぐるしく出会い、一緒に仕事をするんです。そして行く先々で、こんな人と仕事ができるんだ!? という面白い人と出会える。

作品を残すこともとても大事だけれど、そんな面白い人たちと現場でどんなふうに過ごし、どういう言葉をもらって、それが自分の実人生にどう生きるかを体験していくことが本当に楽しくて。それは僕にとって、演じる喜びとはまた別の、俳優であることの喜びなんです。
── 本作では政も兵士郎もそれぞれの信念に従い突き進みますが、お二人も、俳優というお仕事をするうえで何か心に決めていることがあれば教えてください。

山田 僕は、仕事をお受けするときはいつも、“自分がワクワクするかどうか”で決めています。とはいえ、オファーが来た作品のひとつ前に、自分がどんな役をやっていたかも気持ち的に影響するので、「うわ、この人と仕事したいなぁ」と思っても、タイミングがどうしても合わない時もあります。

なので、仕事を決める判断基準として、“タイミング”と“自分がワクワクするかどうか”を重要視するというのは今後も変わらないと思います。
仲野 僕は俳優という仕事をできる限り長く続けていきたいですし、自分に対して嘘をつかないような仕事をしていきたいです。自分に正直に、直感を信じて、仕事と向き合っていきたいです。
── ではプライベートでも仕事でも、日々を送る中で心がけていることや、人生の目標はありますか?

山田 日々を楽しく、元気に健康に生きる! それだけです。

仲野 僕は、やりたいことは考えるより先にやってみるほうで、「どこどこに行きたい!」と思ったらまず行って、そこから考えるタイプ。

なので、夢や目標が常に更新されていくような人生を送っているのですが……そんな自分でも漠然と思うのは、長くこの仕事を続けて、年を重ねれば重ねるほど、いい芝居ができるようになりたいということで。できることなら、いい作品をたくさん残したいですね(照笑)。
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山田孝之(やまだ・たかゆき)

1983年生まれ、鹿児島県出身。1999年に俳優デビュー。2003年に「WATER BOYS」(CX)でTVドラマ初主演、翌年には「世界の中心で、愛をさけぶ」(TBS)で話題になる。映画『電車男』(05)で映画初主演を果たして以降、映画を中心に活躍。配信ドラマ「全裸監督」(19・21/NETFLIX)で全世界の注目を浴びる。さらに、映画『ゾッキ』(21)や『MIRRORLIAR FILMS』(22)では俳優の枠を越えて監督やプロデューサーを務める。近年の主な出演作には、映画『はるヲうるひと』(21)、『唄う六人の女』(23)、大河ドラマ「どうする家康」(23/NHK)、配信ドラマ「忍びの家 House of Ninjas」(24/Netflix)などがある。白石和彌監督とは、映画『凶悪』(13)以来の再タッグを果たした。

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仲野太賀(なかの・たいが)

1993年生まれ、東京都出身。2006年に俳優デビュー。2021年に映画『すばらしき世界』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞、ブルーリボン賞助演男優賞、2022年にエランドール賞新人賞を受賞。本作でW主演を務める山田孝之とは、映画『50回目のファーストキス』(18)以来の共演となる。近年の主な出演作に、舞台『もうがまんできない』、『いのち知らず』、『二度目の夏』、映画『熱のあとに』、『笑いのカイブツ』、TVドラマ「新宿野戦病院」「虎に翼」、「季節のない街」、「いちばんすきな花」など。現在、単独初主演となる舞台、M&Oplays プロデュース『峠の我が家』が上演中。他に『本心』(11/8公開)も控えている。また、2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」では、主演の豊臣秀長役を予定している。

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十一人の賊軍 WebLEON  山田孝之 仲野太賀

『十一人の賊軍』

江戸から明治へと時代が変わる中で起こった戊辰戦争を背景に、罪人たちが新発田藩の命令により、新政府軍から命を賭けて砦を守り抜く姿を描いた時代劇アクション。『日本侠客伝』『仁義なき戦い』シリーズなどで知られる名脚本家の笠原和夫が残した幻のプロットを、『孤狼の血』『碁盤斬り』の白石和彌が監督、山田孝之と仲野太賀がW主演を務める。山田孝之は、妻を寝取られた怒りから新発田藩士を殺害して罪人となり、砦を守り抜けば無罪放免の条件で戦場に駆り出される駕籠かき人足の政(まさ)を、仲野太賀は、故郷を守るため罪人と共に戦場に赴く剣術道場の道場主・鷲尾兵士郎役を演じる。他に決死隊となる罪人たちを尾上右近、鞘師里保、佐久本宝、千原せいじ、岡山天音、松浦祐也、一ノ瀬颯、小柳亮太、本山力が演じ、さらに野村周平、音尾琢真、玉木宏、阿部サダヲらが共演。公開中。
公式 HP/https://11zokugun.com/
©2024「⼗⼀⼈の賊軍」製作委員会
配給/東映

※掲載商品はすべて税込み価格です

■ お問い合わせ

スキマ 恵比寿 03-6447-7448
マーガレット・ハウエル 03-5785-6445

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