ありのままの自分を見据える尾野真千子さんの自然体の美しさに刮目せよ!
第3回ゲスト、尾野真千子さんのvol.02です(vol.01はこちら)。生活の拠点は沖縄に置き、仕事の時だけ本土にやってくるという二重生活を送る尾野さん。自分らしさを大切にする尾野さんを支えるものとは?
【interview 02】
人間らしく生きたいから普通の人間としていよう。それが私のテーマ
尾野真千子さん(以下、尾野) そうです。東京にも家はありますけど仮住まいで、帰る家は沖縄です。みんなによく「どのくらいの割合で東京にいるんですか?」と聞かれるんですけど、その時の仕事とかによって毎年変わるんですよ。
── 普段沖縄では、どんなふうに過ごされているんですか?
尾野 沖縄は自分の居酒屋さんがあって、そこで買い出しから仕込みから、1日やっている感じなので、東京にいる時より忙しいです(笑)。だからちょっとゆっくり自分と旦那との時間を過ごせるのはお店が休みの日曜日ぐらいかな。
尾野 その時によりますけど、映画を観たくなったら映画を観に行くし、イベントをやっていたらイベントに行くし。この間も農業祭みたいなのをやっていたから、それに行ったり、旦那とできることをやっています。海も近いですけど、もうほどんど行かなくて、釣りも沖縄ではあんまり行かないですね。うちの事務所の社長がよく行くので、タイミングが合えば一緒に行く感じで、東京にいる時のほうが行ってるかな。
── 沖縄での生活と東京での俳優業の両立も、徐々に肌に合ってきた感じはありますか?
尾野 それがしたくて沖縄に行ったみたいなところがありますからね。メリハリというか、東京はお仕事をするところ、沖縄は生活をするところというふうにちゃんと分けられているから。ずっと東京にいると、今、自分が休んでいるのか仕事しているのかよくわからないところがあったけど、沖縄ではもう何も構わず、顔がバレても隠さずにいますし。人間らしく生きたいから普通の人間としていよう、みたいな(笑)。それが私のテーマかな。
尾野 ちょうど芸歴20周年のあたりで、何かをやろうと自主制作映画を作るにあたって、「家とか建てたいよね」と私が漠然と言ったところから始まっていて。じゃあどこか家を建てる場所を探しに行こうとなった時に、たまたまうちの事務所の社長の生まれたところが沖縄だったので、「じゃあ、沖縄でも行きますか」って、もう本当にノリみたいな感じで行ったんです。
この20年やってきて、自分の中でモヤモヤしているものが何なのかとか、自分探しみたいなものですね。だから、何でもよかったと言うとおかしいかもしれないけど、そのために何かを作るっていうことをしたかったんですよね。
尾野 それも沖縄だったらどこでもいいっていうわけではなくて、その場所が居心地がよかったんですよ。今帰る仁で「今帰仁(なきじん)」という地名にもなんとなく納得がいったというか。あぁ、ここに帰ってこられるのっていいなって。
その時はまだ旦那と会ってもいなくて結婚とかも全然考えていなかったので、結婚とかそういうことではなく、帰ってくる場所としていいなと思ったんですよね。本当に何もなくて、静かなところなんですけど、その何にもないのがいいところっていうか。
自分が生まれ育った奈良とも全然違うんですけど、だんだんと居心地がいいと感じてくるのがなんか似てるのかも。だからここにいたいと思って。ただ、奈良に帰るのとはまた違って、奈良に帰りたいというわけではなく、自分にとって次のステップアップの場所が沖縄だったんです。
── そういう意味ではご主人との出会いもやはり大きかったのかなと思いますが。
尾野 大きいです。あの人じゃなかったら、こんな生活もしていないし、 自分がこういう気持ちにもなっていないと思うんですよね。
尾野 すべて。私のすべて。すべてをくれる人。何か1個をってことじゃないの。自分が幸せだと思うことすべてを与えてくれる人。
── もし沖縄に移住せず、ずっと東京にい続けていたら、今とはまったく違っていたと思いますか?
尾野 違うと思います。芝居は楽しいから、嫌にはなっていないと思いますけど、今のほうがより楽しくなっているっていう感じですね。
── ご自身の生き方や考え方、価値観も変化してきたと感じますか?
尾野 価値観とかはずっとこういう感じなんで、あんまり変わらないですね。自分の心に従って生きてる。いつも自分の今の気持ちに嘘をつかずに、今やれることをやるだけです。
※vol.03に続きます。
● 尾野真千子(おの・まちこ)
1981年11月4日、奈良県生まれ。1997年に河瀨直美監督作品『萌の朱雀』で主演デビューし、第10回シンガポール国際映画祭最優秀主演女優賞などを受賞。2007年には第60回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作『殯の森』で河瀨直美監督と再びタッグを組む。その後、ドラマ「mother」、NHK連続テレビ小説「カーネーション」、「最高の離婚」、「ライオンの隠れ家」、映画『クライマーズ・ハイ』、『そして父になる』など数々の作品で存在感を発揮。2021年には、『茜色に焼かれる』で第95回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞ほか多数の主演女優賞を受賞。1月9日から「阿修羅のごとく」がNetflixで配信中。早春には「憶えのない殺人」(NHK BS、NHK BSプレミアム4K)が放送予定。
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