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2025.02.15

毎熊克哉「男としての折り返し地点を過ぎたら、ふわふわと脱力して生きるのが理想です」

切れ長の目と憂いや苦味を感じさせる表情、また自在な身のこなしで、出演する作品それぞれで強い印象を残す俳優・毎熊克哉さん。今、最も脂の乗った37歳の俳優に、自らの仕事である“演技”について思うこと、今後、目指す方向性について聞きました。

CREDIT :

写真/トヨダリョウ ヘアメイク/星野加奈子 スタイリング/カワサキタカフミ 編集・文/アキヤマケイコ

周りの人から「何だかいつも楽しそう」と思われているのがカッコいい

俳優・毎熊克哉
20代後半で出演したインディペンデント映画で注目を集めて以来、着々とキャリアを重ねてきた俳優・毎熊克哉さん。ここ数年は、TVドラマで重要な役を演じ、退場時に“毎熊ロス”現象を引き起こすこともあったほど。

唯一無二の存在感を持つ毎熊さんに、愛する映画についてや、そこで演じることへの思いを語っていただきました。
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元・映画少年としては、常にいろいろなタイプの映画が揃っていてほしいんです

俳優・毎熊克哉
── 昨年はTVドラマでの活躍が目立ちました。そして今年は映画の公開も続きますね。

毎熊  ドラマでは、いい機会をたくさんいただいてありがたかったです。映画は、もともと映画少年からこの世界を目指したので、すごく思い入れがありますね。

映画って、メジャーからインディペンデントまで、いろいろなタイプの作品が揃っているほうが、見る側も楽しいですよね。だから業界全体が盛り上がってほしいし、自分もそこに常に参加していたいと思っているんです。
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── ドラマでも映画でも、印象に残る脇役を演じられることが多かった気がしますが、役を選ぶときの基準は何かあるんですか?

毎熊 「毎熊っていえばこういう役だよね」と思われないようにしたいというのはありますね。すごくいい人の役をやったら、次は怖くて嫌な役をやるとか。「あなたって、どっちなんですか?」って、いつも思われているくらいがちょうどいいかな。あとは、この役が自分にとって新しい挑戦になるかは考えますかね。

こんなイメージがつくからやめようとか、この人と付き合いがあるからやろう、というのではなく、「今、この役をやるべきかどうか」と考えて、引き受けた結果が挑戦に繋がっているといいなと思います。

すべて自分の思いどおりに作品を選べるわけではないのですが、今のところ運良く、この仕事を続けさせていただいているので、挑戦もしつつ、オファーをくださる方の期待にも応えられればと思っています。
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ヤバそうな“謎の男”に、なぜか近づいていく人たち。そこに注目してもらいたい

俳優・毎熊克哉
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── まもなく主演映画『初級演技レッスン』が公開されます。演じられた演技講師・蝶野は、“謎の人物”ですよね。こういう役は、どんなふうに演じようと思うんですか?

毎熊  確かにミステリアスで、何を考えているか分からないし、服装は黒ずくめで、歩いているのを見かけたら、ヤバイと感じるような男ですよね(笑)。正直、最初に台本を読んだ時は、すんなり内容も役柄も頭に入ってきたわけではなかったです。

でも、監督の串田壮史さんは、以前、ウエブCMでご一緒したことがあったのですが、その後、撮影された映画作品『写真の女』がとてもよかったんですよね。構図が細かくて、攻めた表現もあって、“ザ・映画”という感じ。僕の好きなタイプの映画でした。CMで作られるポップな世界観と、まったく違うのも面白かった。だから今回、オファーをもらえたのがうれしかったです。

串田さんは、その次の映画『マイマザーズアイズ』もそうだったんですが、映像で魅せつつ、物語を緻密に構築していく監督だと思います。だから『初級演技レッスン』も、いい作品に仕上がるだろうという確信がありました。
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独特の世界観で、エンタメ性がある。僕の好きなタイプの映画です

俳優・毎熊克哉
── 蝶野は、演技講師でありながら、演技を教えているようで教えていないし、レッスンの場所も怪しい廃工場だし……。設定も独特ですよね。

毎熊  そう、レッスンの場所も、普通なら絶対に入っちゃいけない感じがしますよね(笑)。でも、その扉を2人の登場人物が開けて、別世界を体験する。それがこの映画の世界観のひとつです。
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あと、演技って「自分じゃない誰かになりきること」だと思われるかもしれませんが、僕たちのように演技を追求する者からすると、やっぱり100%、別人格にはなれないものです。だから演技のトレーニングをするのですが、それって結局は、自分のなかで、嘘を本当に見えるようにしていくことなんです。役が持っている記憶だったり、その人が物を触る感覚だったりを、自分自身のものにしていくというか。

それを突き詰めていくと、自分自身の肉体と記憶とを探っていくことになる。でも、それって実はしんどい作業です。自分のいい部分だけじゃなく、悪い部分も探っていかないといけないので。それは人から借りてくるわけにはいかない。

俳優でなくても、自分の嫌な部分を探ったり、他人に触れてほしくないことを思い出したりすることが、必要な時がある。この映画は、蝶野のレッスンを受ける2人が、そんなふうに、心の扉を 少しずつ開けていく話なんです。
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── 見ると、いろいろと考えさせられそうですね。

毎熊  いろんな見方ができると思います。2人の登場人物に感情移入する人もいるだろうし、感情をほとんど表に出さない蝶野の感情の漏れ出る瞬間に注目する人もいるかもしれない。すごく見る人にゆだねられられている。でも全体を通してみると、難しく考える映画じゃなくて、エンタメ性があって、楽しい映画だと思っています。

役を常に受け入れられる「ニュートラルな状態」でいたいんです

俳優・毎熊克哉
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── 普段の生活で、大事にされていることってありますか? 俳優として、あるいは人として?

毎熊  「普通でいること」ですかね。どんな役が来ても受け入れられるよう、ニュートラルな状態でいること。ただ、これも意外に難しいんですよ。自分自身、年を取ったり、経験が増えたり、環境が変わったりということで、何かしら変化していくものなので。

でも、それはそれとして「普通でいること」を意識する。そうでないと、俳優としても人間としても、視野が狭まっていって、よくない気がするので。

「きちんとしなきゃ」は30代で卒業。これからは肩の力を抜いて楽しんでいきたい

俳優・毎熊克哉
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── 確かに、年齢を重ねるだけで、人間って変化していくものですよね。それでは、毎熊さんが考える、年齢を重ねてカッコよくなる大人の男は、どういうイメージですか?

毎熊  今、30代後半なんですが、大人の男の中間地点という感じがしているんですよ。10代、20代の頃は、自分には何も足りてないし、しょっちゅう人に怒られるし、「きちんとしないと」とか「頑張らないと」か、そういう気分でいました。

でも30代になって、少しはきちんとしてきたかなと。上手くいったりいかなかったりを繰り返しながら、とりあえず、コケずにここまでこられてよかった。

それじゃあ、中間地点を過ぎた今後の40代、50代、60代はどうなのか、と考えると、逆にふわふわしていったほうがいいのかもと思うんです。いろんな経験を重ねたうえで、バカでいることを大事にするというか。遊び心や少年っぽさをもって、若返っていきたいというか。
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俳優という仕事って、いつまでたってもセリフは覚えなきゃいけないし、楽しいことばかりでもない。だからもちろん、やるべきことはきちんとやっていく。そのうえで、周りの人から「あの人って、いつもなんか楽しそうにやっているよね」みたいに思われる感じになっていくのが、カッコいいんじゃないかと。

── こんなにキリッとした感じの毎熊さんが、“ふわふわしたい”というのは意外です(笑)。

毎熊 仕事に限らず、友達との人間関係とか、プライベートとか、楽しいことをずっとやっている、やれているという実感をもっていたいですね。ふわふわしてるというか、ヘラヘラしてるというか、楽しそうに脱力している。そういう感じの大人の男になっていけるといいな、と思います。
『初級演技レッスン』ポスター

『初級演技レッスン』

父を亡くした子役俳優の一晟(岩田奏)は、ある日の学校の帰り道、「初級演技レッスン」と書かれた看板を掲げられた古工場を目にする。その中で出会ったミステリアスな演技講師・蝶野(毎熊克哉)に導かれるまま、その場で即興演技をすると、不思議な体験をする。また一晟が通う学校の担任教師・千歌子(大西礼芳)も、学校で「演技教育の必須科目化」の是非を迫られる中、いざなわれるように「初級演技レッスン」の門をたたく。彼女も蝶野との出会いにより、想像だにしていなかった奇妙な体験をするのだった── 。監督・脚本・編集:串田壮史 2/22(土) より渋谷ユーロスペース、MOVIX川口ほか全国ロードショー。配給/インターフィルム ©2022埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
HP/https://act-for-begi.com/

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俳優 毎熊克哉(まいぐま・かつや)

● 毎熊克哉(まいぐま・かつや)

1987年生まれ、広島県出身。高校卒業後に上京し、専門学校の映画監督コースに進学するも、卒業後、俳優に転身。2016年に公開された『ケンとカズ』で主演を務めて注目を集め、第71回毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞、おおさかシネマフェスティバル2017 新人男優賞、第31回高崎映画祭 最優秀新進男優賞を受賞する。その後、映画では『万引き家族』『弧狼の血LEVEL2』などの話題作から、インディペンデント系映画まで幅広く出演。TVドラマでも、連続テレビ小説『まんぷく』、TBS『恋はつづくよどこまでも』、NHK大河ドラマ『どうする家康』『光る君へ』になど、精力的に活躍中。今年の7月には主演映画『桐島です』の公開も控えている。

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