2025.03.22
肝が据わった26歳、恒松祐里。「芝居の現場で緊張することはありません」
子役時代から20年近くのキャリアをもちつつ、いつでもピュアな美しさを漂わせる女優の恒松祐里さん。最新作『ガンニバル』シーズン2では呪われた村の秘密を握る当主を演じます。
- CREDIT :
文/井上真規子 写真/平郡政宏 スタイリング/武久真理江 ヘアメイク/安海督曜 編集/森本 泉(Web LEON)

『ガンニバル』は人間の気持ち悪さが見事に描かれたドラマ
恒松祐里さん(以下、恒松) 実は苦手なんです(笑)。
── それでも演じる時は別ものですか?
恒松 観るのと演じるのは全然違いますね。『きさらぎ駅』※の永江(二朗)監督からは、ホラーは計算だからと教わりました。観客が驚くホラーの法則があるらしく、それがすごく面白かったです。振り返るタイミングや間を計算しながら「あと1秒遅く振り返って」とか(笑)。

恒松 そうなんです。片山(慎三)監督の作品というのと、主演の柳楽優弥さんや吉岡里帆さん、笠松 将さんなど俳優陣も気になりました。それにディズニープラスで配信された日本初のオリジナル作品だったので、これは観ないと!って。実際に観たら、怖いというよりは人間という存在の気持ち悪さが見事に描かれていて、韓国ドラマのような感覚で楽しめました。
── シーズン1では、人喰いの噂がある供花村を舞台に、柳楽さん演じる警察官が呪われた村の真相に迫っていくというストーリーでした。それからシーズン2で、村を牛耳る後藤家の当主で、村の“呪い”の元凶となった後藤 銀役のオファーが来たわけですが、どう思いましたか?
── 恒松さんがお芝居をするうえで、こだわっていることがあれば教えてください。
恒松 台本に書かれているシーンに辿り着くまでに、その人物がどんな人生を歩んできたのかを必ず考えるようにしています。どういう家庭で育ってきたのか、どうしてこのセリフを言ったのか、など自分なりに背景を決めてから現場に行くようにしています。
恒松 作品にもよりますが、あまり細かく決めないことの方が多いです。今作『ガンニバル』でも、実際現場に入ってから銀の気持ちの移り変わりや、シーンごとのテンション感については相談しました。他の人との関係性も現場に行ってみないとわからないので、基本は現場に行ってからですね。
── そのあたりは長いキャリアがある恒松さんならではのスタイル?
恒松 そうかもしれませんね。

難題をどうやって解決しようと考えながら少しずつ成長してきた
恒松 最初の10年は子役時代で、お仕事もそんなに多くはなかったのですが、毎週土・日は必ずレッスンに通っていたので、その時に培ったものが今に生きているのかなと思います。1年も無駄な時はなかったですね。当時はプールなど習い事もいくつか平行していましたが、どれも苦手で辞めてしまって。でもお芝居だけは嫌にならなかったんです。それぐらい好きなお芝居をこの歳になっても仕事として続けられているのは、すごくラッキーだと思っています。
恒松 子役時代からレッスンでお芝居するだけで、いつもすごく楽しかったんです。だからプロフェッショナルということでなくても、当時から普通にお芝居はずっとやりたいなとは思っていました。
── 逆に、もうお芝居したくないと思ったことはありませんか?
恒松 それはないですね。苦しい役とか難しい役に当たっても、逃げ出したいと思うことはなくて、むしろ「どうやって演じよう?」ってやる気が出てくるんです。何かしら壁があった方が面白いじゃないですか。難題をどうやって解決しよう? って考えながら、今までちょっとずつ成長してきたような気がします。
恒松 なくはないですけど、教師とか弁護士とか本格的なものでなければ、俳優しながらでも色々できると思っています。事務所の先輩の仲 里依紗さんも俳優業をしながらファッションブランドを立ち上げていますし、そういう形でやられている芸能人の方も多いですよね。私は絵を描くのが好きなので、いつかデザインしたり、雑貨屋さんをやったりしてみたいですね。

ドラマは「今撮ったものをお客さんに見せている」フレッシュさが好き
恒松 2024年は『ガンニバル』シーズン2も含めて結構ハードな作品が続いたのですが、全部をやり切って成長できたんじゃないかなと思っています。2月に『ガンニバル』の撮影が終わって、3月末からTHEATER MILANO-Zaで舞台『ハザカイキ』の公演があったのですが、これがすごく大変でした。
スキャンダルを起こした芸能人が謝罪会見をするお話で、私はその芸能人役でした。謝罪会見のシーンでは報道記者に見立てた観客と、客席の1列目にいる報道記者役の俳優陣の目の前に座って15分間、13ページの長台詞を1人で喋らなくてはいけなかったんです。台詞を間違えられないし、毎回、同じタイミングで涙を流さなきゃいけなかったり、責任が重大過ぎて本当に大変でした。でも、いい経験になったと思います。
恒松 そうですね。舞台は稽古期間があるので、他の方の役柄のことも深く読むことができるんです。自分の役だけでなく、作品全体で深めていけるのは舞台ならではだと思います。
── ちなみに、演じていて一番の楽しいのは?
恒松 それぞれ楽しさが違うかも。配信ドラマや映画は、最初からある程度道筋が決められているので、自分の描いた通りにお芝居していく感じが楽しいですし、映像やカメラワーク込みで表現していく感覚も好きです。映画ならではのリアルな空気を汲み取ろうとするカメラワークもいいですよね。
あとは、舞台の“全部自己責任”みたいなところも好きです。ドラマは最近ではSNSとリンクしていて、みんな次の話が気になってるな〜とか。でも演じている私たちも次の話がどうなるかわからないと思いながら、「今撮ったものをお客さんに見せている」っていうフレッシュさが感じられて、それもいいなと思います。

恒松 それはあると思います。2023年の舞台『パラサイト』で、古田新太さんやキムラ緑子さん、江口のりこさんなど関西出身の俳優さんたちと一緒に関西人の役を演じたのですが、みなさん毎回アドリブを入れて全然違うことをやるんです。それがすごく楽しくて。「お芝居って楽しいものなんだ、毎回遊んでいいもいいんだ」って思って、それからは現場でもより自由に、遊べるようになった気がしています。
恒松 山内圭哉さんがお父さん役だったんですけど、私がアドリブをすると全部突っ込んで拾ってくれるから、すごく楽しくて。「今日はパパにこれやろう」とか考えながら現場に行ってました(笑)。
── 恒松さんは全然緊張しないタイプだそうですね。お話を聞いていると、肝が座っているなあと感じました。
恒松 いえ、それも多分慣れだと思います。子供の頃からこのお仕事をやっているのでお芝居の現場では緊張しなくなったのですが、それ以外では緊張しますよ。中学校や高校で国語の時間に文章を読まなきゃいけないような時もすごく緊張していました(笑)。
※後編に続きます(3月29日公開予定)。

● 恒松祐里(つねまつ・ゆり)
1998年10月9日、東京都生まれ。2005年、6歳の時にドラマ「瑠璃の島」でデビュー。09年に『キラー・ヴァージンロード』で映画デビューを果たす。その後、NHK朝ドラ「まれ」「おかえりモネ」、NHK大河ドラマ「真田丸」などに出演。19年に公開の映画『凪待ち』の演技で「おおさかシネマフェスティバル2020新人女優賞」受賞。21年、Netflixオリジナルドラマ『全裸監督season2』でニューヒロイン・乃木真梨子役の体当たり演技で注目を集めた。『きさらぎ駅』(22年)で映画初主演。今年6月には『きさらぎ駅 Re:』も公開予定。

『ガンニバル』シーズン2
“この村では、人が喰われるらしい―”。美しい村がひた隠しにしてきた恐ろしい噂。その真相に警察官・阿川大悟(柳楽優弥)が迫るなか、村の秘密を守ろうとする後藤家がついに一線を越え、警官隊と衝突する。“狂った村の真実を暴くには、狂うしかない―やつらよりも”。後藤家との狂乱の戦いに自ら身を投じていく大悟は、止められない狂気の渦の先にある衝撃の真相を突き止められるのか? すべての鍵は、呪われた一族・後藤家の過去にあった……。
原作/『ガンニバル』二宮正明(日本文芸社刊)、監督/片山慎三、佐野隆英、大庭功睦、出演/柳楽優弥、笠松 将、吉岡里帆、高杉真宙、北 香那、恒松祐里ほか。
公式HP/『ガンニバル』
3月19日(水)よりディズニープラス「スター」で独占配信中
■ お問い合わせ
イー・エム アオヤマ 03-6712-6797
ブランドニュース 03-6421-0870