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2025.02.16

モフモフな犬たちと一緒にトリュフを採るためトスカーナへ

食いしん坊であれば一度は憧れる、イタリアでのトリュフ収穫体験。どんな伝手で実現できるか謎と思う人も多いはずですが、トスカーナのホテル「コモカステッロ デル ネロ」が、その願望を叶えてくれます。ホテル自体も十二分に素敵ですから、トリュフ・バカンスのインパクトは大きいはず。

CREDIT :

文・写真/大石智子 編集/森本 泉(Web LEON)

「イタリアにトリュフ採りに行こう」と誘えるホテル

“デスティネーション・ホテル”や“デスティネーション・レストラン”といった言葉を聞いたことがあるでしょうか? それは、旅の第一目的となるホテルやレストランのこと。長時間飛行機に乗ってでも行きたいと渇望させる、吸引力のある場所を言います。その流れがあったうえで、次のホテルの潮流と思うのが、“デスティネーション・アクティビティ”。わざわざ旅をしてでも叶えたい、ピンポイントな体験を提供できるホテルは強いだろうなと。

かくいう筆者も、昨年ある体験のためにイタリア・トスカーナに飛びました。きっかけは、「このホテルに泊まると犬と一緒にトリュフ狩りに行けるよ」という会話。教えてもらったホテルは、「コモ ホテルズ アンド リゾーツ(COMO Hotels and Resorts)」に属する「コモ カステッロ デル ネロ(COMO Castello Del Nero)」。

コモはシンガポール拠点の家族経営のホテルブランドで、現在世界中に20軒を展開しています。ナチュラルでセンスがよく、過去訪れた2軒も素晴らしかった。コモ好き、犬好き、トリュフ好きですから、迷う理由はありません。その日にトスカーナ行きを決意したのでした。
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「コモ カステッロ デル ネロ」のプール。
▲ 「コモ カステッロ デル ネロ」のプール。
凄く楽しいはずだから誰かと共有したい。ロンドン在住の友達に、「犬とトリュフ採りに行けるんだって」と連絡すると、彼女もすぐ前のめりに。やっぱり響きからして引きが強い。フィレンツェで待ち合わせをして、まずはビステッカを堪能。食後、そこからクルマで35分の「コモ カステッロ デル ネロ」へ向かいました。
ホテルがおすすめした「Il Latini」のビステッカ。
▲ ホテルがおすすめした「Il Latini」のビステッカ。
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元古城のホテルに酔いしれる

美しいキャンティ地方の夕暮れ。
▲ 美しいキャンティ地方の夕暮れ。
もしも、“世界で最も美しい内陸”というランキングがあったら、私はトスカーナのキャンティ地方に一票入れるでしょう。なだらかな丘にブドウ畑が広がり、点在する建物は中世の佇まい。そんな絵本に出てくるような田舎の景色に、「コモ カステッロ デル ネロ」は完全に溶け込んでいました。というのも、元は12世紀に建てられた古城。歴史ある建物をミラノの著名なデザイナーであるパオラ・ナヴォーネが改装し、2019年春に開業しました。
チェックインと同時に乾杯!
▲ チェックインと同時に乾杯!
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到着してレセプションに行くと、パスポートを渡している間にグラスでスプマンテが登場。レセプションが即席バーカウンターのようになり、立ち飲みのラフ感がむしろ楽しい。お酒を飲みながらサインをして、いざ客室へ。
ホワイトウォッシュをかけた壁が客室を落ち着いたトーンにまとめています。
▲ ホワイトウォッシュをかけた壁が客室を落ち着いたトーンにまとめています。
大理石の浴槽のおかげでバスタイムまで優雅。
▲ 大理石の浴槽のおかげでバスタイムまで優雅。
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城の趣を残したまま、50の客室が揃います。筆者が泊まったのは「タヴァルネッレ ルーム」(36〜50㎡)。天井の高さが手伝って自分が小さくなったと思うほど広く、家具も大きい。実際の平米数より解放感を感じて、窓の外の緑に癒されます。

テーブルの上には全室にギフトとして用意されているホテルオリジナルの赤ワイン。1回はこのワインを飲みながらルームサービスをいただくのもおすすめです。
巨大ティラミスは食べ心地が軽く、するっと完食。
▲ 巨大ティラミスは食べ心地が軽く、するっと完食。
実際、私たちも到着日の夜はラザニアで部屋飲みをして、デザートはティラミス。夜10時のティラミスが翌日昼に食べたものよりカフェイン少なめ(ほぼなし)だったのは、よく眠れるための気遣いだったのかもしれません。ちなみにティラミスという名前には、“私を元気にして”という意味が含まれていて、精力スイーツ、つまり夜のお菓子として広まった説もあるそうです。
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「ヘリテージ スイート」の寝室。
▲ 「ヘリテージ スイート」の寝室。
予算に余裕がある方は、ぜひ「ヘリテージ スイート」(70〜77㎡)へ。寝室は12世紀のフレスコ画に囲まれ、王族気分の一夜と言いましょうか、完全なる別世界を味わえるはず。この部屋は陶酔するほど美しく異質です。フォトジェニックゆえ、パートナーの写真撮影に忙しくなるのは悪しからず。
レースから透けて入る光が綺麗。
▲ レースから透けて入る光が綺麗。
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「ヘリテージ スイート」のバスルーム。
▲ 「ヘリテージ スイート」のバスルーム。

トリュフ狩りではモフモフがリーダーです

左のブリーザは660gものトリュフを見つけたこともあるとか。
▲ 左のブリーザは660gものトリュフを見つけたこともあるとか。
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翌朝9時半、いよいよトリュフ狩りへ出発です。費用はトリュフ狩りとその後のランチコースでひとり300ユーロ(約4万8000円)。なかなか高級でしたが、犬たちに出会った瞬間にお金のことは忘れました。

プロのトリュフハンターであるマッティアさんのトラックに乗って現れたのは、ブリーザとアルデジア。ともにラゴット・ロマニョーロという鋭い嗅覚をもつ犬種です。優秀なトリュフ犬になることで知られる犬種ですが、第一印象は腰が抜けそうなほどかわいい! ケージから出るや尻尾を振って私たちを舐め、愛嬌を振りまきます。
トリュフのイタリア語“Tartufo(タルトゥーフォ)”には犬の鼻の意味もあり。
▲ トリュフのイタリア語“Tartufo(タルトゥーフォ)”には犬の鼻の意味もあり。
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ふたりとも女の子で、「何だって女の子の方が上手だよね。トリュフ狩りもそう」とマッティアさん。彼の家はトリュフハンターとして55年の歴史をもち、祖父からトリュフハントとは何たるかを学んだそうです。まだ24歳ですが、幼い頃から本物のトリュフの味を知り、犬たちと暮らしてきたマッティアさん。知識も豊富な若き職人は、「いいトリュフを手に入れるための大前提は、森と犬たちを尊重すること。ランチにトリュフを食べたいのなら、人間は犬についていくしかないです(笑)」と、歩き始めます。

そう話す先で自由に走り回り、まずはウンチをきめる2匹。「これが済むといいスポットに行くんだ」とマッティアさん。このツアーのメリットは、トリュフ狩りの仕組みや文化の話(英語)とともに、森を散歩できることにもあります。例えば、犬たちはトリュフが好きだから探し当てるわけですが、なぜトリュフを好きになるのか。赤ちゃんの時、乳首にトリュフをすりつけたお母さんのミルクを飲んでいるからとか。
夢中になって鼻を地面に近づける犬さん。
▲ 夢中になって鼻を地面に近づける犬さん。
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特にブリーザはトリュフ狩りに貪欲で、「彼女の優秀さを人に話さないことがとても重要です。いまはトリュフの価格が高騰して人々が狂ってしまい、ブリーザが狙われてしまうこともあるから」とマッティアさん。ソーセージに毒が仕込まれることも実話と言います。昨年の白トリュフの市場価格は1kg800ユーロ(約12万9000円)から始まり最高額は1kg4500ユーロ(約72万5000円)。どうしても金脈と捉える人も出てきてしまう。

しかし、古くからのトリュフ文化を知るマッティアさん家族は、「私たちの手は情熱で汚れています」と、森の土を表す言葉を胸に実直な仕事を続けています。ちなみに家庭の味としてあげたのは、鶏のブロスのスープにトルテッリーニ(小さなラビオリ)を浮かべてトリュフを削ったもの。想像するだけで美味しそうで、この文を打った瞬間にリアルにお腹がなりました。

知る人ぞ知る“ビアンケット”を探して

赤茶色のトリュフがビアンケット。収穫物にマッティアさんが予備で持参したものが混じっています。
▲ 赤茶色のトリュフがビアンケット。収穫物にマッティアさんが予備で持参したものが混じっています。
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トリュフ狩りをする場所は「コモ カステッロ デル ネロ」が所有する森なので、ならず者がトリュフを採りに来ることはありません。広く豊かな私有林に育つトリュフは年間で5種。例えば冬は白トリュフ、2月から5月初旬まではビアンケットを味わうチャンスです。

ビアンケットとは、トスカーナやマルケなどの限られた地域でのみ収穫される希少なトリュフ。黒でも白でもない小粒で、穏やかな芳醇さを潜めます。ブリーザとアルデジアは、オークの木や松の木の下に育つビアンケットの匂いを嗅ぎとり、お尻をフリフリふって進んでいく。見つけると穴を掘るわけですが、彼らが食べる前にマッティアさんがトリュフを採り、ご褒美におやつを与えます。
お手柄後、おやつをもらうブリーザ。
▲ お手柄後、おやつをもらうブリーザ。
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「木の根が乾燥すると木が枯れてしまうので、犬が掘った穴を埋めることも重要です。いいトリュフを採るためには、森の健康を保つことが本当に大切。地中に育ち自力で光合成できないトリュフは、木の養分を受けとって実るからです。木もトリュフの菌から養分を受け取り、循環しています」と、マッティアさん。そんな自然のサイクルは、都会で見る綺麗な器に入ったトリュフからは実感できないこと。

当日は雨のあとで匂いを嗅ぎとりづらかったものの、いくつか収穫し1時間強の森林ウォークが終了。犬への関心と食い意地が先行したトリュフ狩りでしたが、「これってウェルネスでは?」と感じた時間ともなりました。
マッティアさんはトリュフハンターとなる前はレストランで4年間修業。「シェフたちのニーズも分かりやすくなったと思います」と話す。Instagram(oresseailpiacereintavola)
▲ マッティアさんはトリュフハンターとなる前はレストランで4年間修業。「シェフたちのニーズも分かりやすくなったと思います」と話す。Instagram(oresseailpiacereintavola
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収穫したトリュフはホテルに持って帰りランチに使用。キャンティの丘を見渡すテラス席で、トリュフの香りを生かす3品とデザートからなるコースをいただきます。揚げ卵とペコリーノチーズと合わせれば、黄金バランスの組み合わせ。「もう少し削ってください」と気軽に言えるのも、狩りに同行したゲストの特権です。
収穫したてのトリュフは香りが鮮やか。収穫から時間が経つほど香りが薄れ、10日で香りがほぼなくなるとか。
▲ 収穫したてのトリュフは香りが鮮やか。収穫から時間が経つほど香りが薄れ、10日で香りがほぼなくなるとか。
トリュフを使ったパスタ、タリアータに続きます。
▲ トリュフを使ったパスタ、タリアータに続きます。
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人を幸せにする朝食もあります

朝食ビュッフェのクオリティに感涙。
▲ 朝食ビュッフェのクオリティに感涙。
「コモ カステッロ デル ネロ」ではオリーブオイルも自分たちで作っていて、その品質を気軽に実感できるのが朝食です。朝食にはハムやチーズ、サラダがつきものですが、トスカーナの食材のレベルが高く野菜は自家菜園から採るので、素朴なひと皿が想像以上の味わい。焼いて塩とオイルで和えただけのズッキーニやアスパラガスが、余韻に浸ってしまうほど美味しかった。オーダー式の料理のバランスもよく、毎朝食べたいと思える朝食でした。
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もうひとつ朝食で印象深いのは、日本から遠い地方のホテルなのに、「おはよう」「ありがとう」と日本語で挨拶してくれた女性スタッフがいたこと。出会いに備え、少しずつ勉強していると聞いて胸打たれました。

朝食の他、お篭りの場合は以下3軒のバー&レストランを巡ることになります。
(1) ラ タベルナ(LA TAVERNA)=古城のキッチンを改築したバー
(2) パビリオン(PAVILION)=ピザ窯も備える地中海料理
(3) ラ トーレ(La Torre)=ミシュラン1つ星を獲得するトスカーナ料理
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トスカーナらしいアクティビティもお見逃しなく

やはり緑が気持ちいいトスカーナ。一度は自転車を借りてのサイクリングもお試しあれ。ブドウ畑やオリーブ畑の間を駆け抜け、小さな村に立ち寄るもよし。ただし坂道が多いので、季節によっては汗だくになりそうです。
ホテルから自転車で5分のカステッロ ディ ティニャーノ。
▲ ホテルから自転車で5分のカステッロ ディ ティニャーノ。
ホテルではワインテイスティングやカルチャーツアーも用意されていますし、ワイナリー見学もサポートしてくれます。筆者はホテルからクルマで12分の「カーサ・エンマ(Casa Emma)」を訪問。ロゼとキャンティ・クラシコ3種を飲み比べられる約1万円のランチコースをいただきました。

手摘みのサンジョヴェーゼの深みが際立つ「キャンティ・クラシコ グラン セレツィオーネ」(約1万5600円)のグラスもコース込み。リッチなものほど自然のなかで飲むと格別に感じます。
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「カーサ・エンマ」のランチ付きワインテイスティング。
▲ 「カーサ・エンマ」のランチ付きワインテイスティング。
ワインテイスティングの〆はボロネーゼ。https://casaemma.it
▲ ワインテイスティングの〆はボロネーゼ。HP/https://casaemma.it
以上、「コモ カステッロ デル ネロ」での滞在は、トスカーナの美しさを凝縮したような時間でした。景色も食事もトリュフ狩りも、すべてが心身を健やかにしてくれるもの。プールサイドで飲むキャンティ・クラシコも乙です。近々の長期休みの目的地として、検討してみてはいかがでしょうか?
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「コモ カステッロ デル ネロ」

1泊2名朝食付き参考価格705ユーロ(約11万5000円)〜
HP/https://www.comohotels.com

大石智子(おおいし・ともこ)

● 大石智子(おおいし・ともこ)

出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

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