対照的であり共通点もあるウブロとパテック フィリップ

大阪を拠点にデザイン会社２社の経営と広告会社の役員をしている鵜瀬竜児さん。主にウェブ回りに関するクリエイティブ案件にはじまり、事業の戦略企画やコンセプト立案などを請け負う会社のエグゼクティブです。移り変わりが早いと言われるIT系のデザイン業界。鵜瀬さんの会社は2016年に少人数にて業務をスタートし、今や当初の3倍となるスタッフを抱えるほどの成長ぶりだとか。そんな敏腕エグゼクティブが愛用する時計には、一体どんなストーリーがあるのでしょう？

── 現在44歳の鵜瀬さん。取材の日の装いはシンプルなモノトーンのジャケットスタイル。聞けばそもそも学生時代から装いに関しては、安定感のある定番的な着こなしがお好みとのこと。また、装飾品に関してもほとんど身に着けることがないと言います。気に入ったものをじっくり長く使うスタイルのため、トレンドに左右されないアイテム選びが自身の流儀と語ります。

鵜瀬　学生の頃はサッカーなどスポーツに没頭していこともあり、そこまでお洒落にこだわりを持つことはありませんでした。リングやブレスレットなどの装身具に関しても、できれば身に着けずに過ごすことのほうが多かったのです。

── 謙遜気味にトークを進める鵜瀬さん。しかしルックスは非常にスマートかつ清潔感も十分。シンプルな着こなしの中にも自分のスタイルがきちんと貫かれている印象です。そんな鵜瀬さんが社会人になって、最初に手に入れた本格時計がウブロとのこと。

鵜瀬　2016年に会社運営をスタートさせるまでは、同じ業界に働くいちサラリーマンであり、本格的な時計を意識することはありませんでした。しかし、いざ企業のトップに立つと背負うものも多くなり、「キチンとしなくては」という考えが起こるもの。自分を奮い立たせる意味で、大人っぽい本格時計を一本買ってみようと思ったのです。

── そして選んだのがウブロのクラシック フュージョン オートマティック。ただ、“キチンとする”ということであればロレックスなども候補に入るはず。その辺に関し、試行錯誤や迷いはあったのでしょうか。

鵜瀬　服装などは定番的なものを選ぶのが自分流です。ただし持ち物の場合、あまりに他人とカブってしまうのはイヤなんです(笑)。だから信頼性のあるブランドを前提に、自分らしい個性を感じさせる一本を探しました。そして雑誌などを見て、直感的に刺さったのがウブロの時計。学生時代にサッカーをしていた自分としては、ウブロがワールドカップなど、国際大会の公式タイムキーパーを務めていたことなども知っていました。それに非常に勢いを感じていたブランドなので、思い立ってすぐに買いに行ったのです。

── 異素材の組み合わせなど、大胆かつ先進的な時計作りがポイントであるウブロ。迫力あふれるコレクションが持ち味であるなか、クラシック フュージョンは、シンプル＆シックなルックスが特徴です。モダンなエッジを放ちつつも落ち着き感あるデザインが、確かに鵜瀬さんらしいチョイスと言えそうです。

鵜瀬　2016年の購入当時、本格的な時計はこのウブロ一本。個人的にかなり気に入ってしまったこともあり、オンもオフも構わず使い続けていました。カレンダー以外に数字を持たない盤面など、洗練された外観ゆえに大抵の装いにマッチするんです。最近は、スポーティなカジュアルスタイル等に合わせて楽しんでいます。

── とは言うものの、時が経てば人間考え方が変わるもの。40歳を過ぎたころに、成長した自分にマッチしたもう少し大人っぽい時計が欲しいと思うようになった鵜瀬さん。そこで時計にウルサイ知人に意見を求めたところ、とある一本が紹介されたのです。

鵜瀬　それがこのパテック フィリップのカラトラバ。1960年代のビンテージであり、こちらもシンプルなバーインデックスに加え、トレンドに関わらず長く使えそうなところが僕好み。

やっぱり時計を気にしだすと、パテック フィリップの名前はどうしても耳に入るもの。縁があればぜひ手に入れたいと考えていたので、ほぼ即決で購入しました。このカラトラバはご存知のとおり、非常にミニマルなデザイン。要素としては素っ気ないとも言えるのですが、やはり研ぎ澄まされた美しさがあります。身に着けると非常に気分も引き締まります。

── カラトラバを手に入れてからは、オンスタイルのシーンではほとんどこちらを着用して出掛けているのだそう。ただしストラップがクロコダイルなので、夏など暑い季節はラバーストラップのウブロも良く使うとか。また、この２本以外にも実はアップルウォッチを所有している鵜瀬さん。ゴルフなどのスポーツオケージョンや日常の雑務のときなどは、アップルウォッチの出番が多いと語ります。

そんな堅実なエグゼクティブに、個人的な時計選びのポイントを改めてうかがったところ、納得の返答に加え意外な事実も判明しました。

鵜瀬　振り返って考えるとウブロもパテック フィリップも、ほとんど衝動買いなんです。思い付きであっても「これイイな！」と感じたら、時間を置かずに買ってしまいます。

しかし、だからといってすぐに飽きてしまうことはありません。どちらの時計も非常にシンプルで余計な装飾を持たないデザイン。そして実用アイテムとしてスペックは十分。そういったモノを選んで長く使用するのが自分流なんです。今所有している車にしても、もう15年ほど乗り続けていますからね。

── 熟考の末、というより衝動買いに近かったというのは確かに意外。しかし鵜瀬さんはおそらく、常日ごろから自分自身に本当に必要なものと、そうでないものをロジカルに考え続けている人なのでしょう。そして同時に、心地よく使い続けられるものとはどういうものかの視点も持っているに違いありません。だからこそ、衝動買いでも失敗にならず、変わらす大事に愛用が続くように思われます。

聞けば、従業員の異動が多いデザイン業界にありながら、鵜瀬さんの会社では辞めてしまうスタッフがほぼゼロだとか。それは確かな直感力と決断力、じっくり向きあうなどの継続的な愛情を持つリーダーが、しっかり会社を支えているからだと考えられるのです。

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