2020.09.12
Vol.02
パテック フィリップの「カラトラバ」が超名作ドレスウォッチと言われる理由とは?
数多の時計のなかでも「名作」と呼ばれるモデルを、時計のプロが語ります。第2回目は、いまや時計業界の一つのアイコンとなった、パテック フィリップの「カラトラバ」。このモデルが定番中の定番と言われる理由は、その長い歴史だけではないようです……。
- CREDIT :
写真/鈴木泰之(Studio Log) 文/広田雅将(『クロノス日本版』編集長)
一見フツウ。なのに、高級時計の超名作と呼ばれるワケ
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カラトラバ、という名称が使われるようになったのは、実は数十年前から。しかしながら、このスタイルの時計は、1932年には完成していました。それが、時計好きが伝説の名機と称する「Ref.96」です。
〜「カラトラバ」が超名作な3つのポイント〜
(1)腕時計の常識を完成させたデザイン
(2)現行モデルの魅力は、ケースと文字盤
(3)実はバリエーション満載!
(1)腕時計の常識を完成させたデザイン
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まずは文字盤と針。懐中時計に比べてサイズの小さな腕時計は、視認性に劣るとみなされていました。しかし、パテック フィリップは、太いドーフィン針と立体的なインデックスを追加し、直径約30mmの小さな腕時計に、極めて高い視認性を盛り込むことに成功したのです。
もうひとつが、ベルトを留めるラグとケースの繋がり。そもそも、黎明期の腕時計は、小さな懐中時計にワイヤ状のラグを取り付けた「簡易版」でしかありませんでした。対してRef.96はケースとラグを一体化することで、流れるようなデザインを完成させたのです。
もちろんこれ以前にも、ラグとケースを一体化させたモデルはありましたが、完全に一体化させたのはロレックスの「オイスターパーペチュアル」とパテック フィリップの「カラトラバ」と言われています。
(2)現行モデルの魅力は、ケースと文字盤
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現在、パテック フィリップはケースのすべてを自製し、非常に高い完成度を誇ります。例えば、ケースの鏡面仕上げ。どのメーカーも、ケース製造の最終段階でバフ(研磨に使う道具)を当てて表面をなだらかにしますが、パテック フィリップのケースが非常に滑らかに見えるのは、そのバフをごく弱く当てているから。もっとも、バフを弱く当てるには、そもそものケースがよくできている必要があります。ベースをちゃんと作ればこそ、の歪みのないケースなのです。
また文字盤も、パテック フィリップの傘下にある文字盤製作会社、フルッキガーで製造しています。カラトラバの特徴である、丸いミニッツインデックスは、フルッキガーの得意とするもの。手間がかかりすぎるので採用するメーカーは少なくなりましたが、パテック フィリップは今なお、この古典的な手法を採用しています。
また、初代Ref.96の特徴であった高い視認性は、現行モデルも同様です。インデックスを立体的にしたり、文字盤のツヤをわずかに抑えたり、といった手法を盛り込むことで、カラトラバは、高級感と見やすさを両立させているのです。
▲カラトラバの正当派(Ref.5227)。しかし、ケースサイドを大きくえぐることで立体感を増したほか、裏蓋はダストカバー付きになっています。その噛み合わせの良さは、パテック フィリップの名に恥じない出来栄え。まさに、モノのわかった大人の時計と言えるでしょう。
▲カラトラバの正当派(Ref.5227)。しかし、ケースサイドを大きくえぐることで立体感を増したほか、裏蓋はダストカバー付きになっています。その噛み合わせの良さは、パテック フィリップの名に恥じない出来栄え。まさに、モノのわかった大人の時計と言えるでしょう。
▲カラトラバの正当派(Ref.5227)。しかし、ケースサイドを大きくえぐることで立体感を増したほか、裏蓋はダストカバー付きになっています。その噛み合わせの良さは、パテック フィリップの名に恥じない出来栄え。まさに、モノのわかった大人の時計と言えるでしょう。
▲カラトラバの正当派(Ref.5227)。しかし、ケースサイドを大きくえぐることで立体感を増したほか、裏蓋はダストカバー付きになっています。その噛み合わせの良さは、パテック フィリップの名に恥じない出来栄え。まさに、モノのわかった大人の時計と言えるでしょう。
(3)実はバリエーション満載!
▲Ref.96の直系に当たるのが、手巻きのRef.5196。非常に立体的に見えるが、実は極薄時計と言って良いほどケースは薄い。そのため、装着感は実に快適です。ケースは5227ほど凝っていないものの、作りの良さは同様。「カラトラバ」(Ref.5196)手巻き、18KYGケース(37mm)、アリゲーターストラップ。219万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲Ref.96の直系に当たるのが、手巻きのRef.5196だ。非常に立体的に見えるが、実は極薄時計と言って良いほどケースは薄い。そのため、装着感は実に快適だ。ケースは5227ほど凝っていないが、作りの良さは同じだ。「カラトラバ」(Ref.5196)手巻き、18KYGケース(37mm)、アリゲーターストラップ。219万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲Ref.96の直系に当たるのが、手巻きのRef.5196。非常に立体的に見えるが、実は極薄時計と言って良いほどケースは薄い。そのため、装着感は実に快適です。ケースは5227ほど凝っていないものの、作りの良さは同様。「カラトラバ」(Ref.5196)手巻き、18KYGケース(37mm)、アリゲーターストラップ。219万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲Ref.96の直系に当たるのが、手巻きのRef.5196だ。非常に立体的に見えるが、実は極薄時計と言って良いほどケースは薄い。そのため、装着感は実に快適だ。ケースは5227ほど凝っていないが、作りの良さは同じだ。「カラトラバ」(Ref.5196)手巻き、18KYGケース(37mm)、アリゲーターストラップ。219万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲傑作Ref.5196には素材違いもある。写真は、いっそう端正なWGモデル。YGのような分かりやすさがないだけ、より大人の時計らしい。針やインデックスが文字盤と同色のため視認性は悪そうに見えるが、さにあらず。立体的な針やインデックスが、YGやRGモデル同様の見やすさをもたらした。「カラトラバ」(Ref.5196)手巻き、18KWGケース(37mm)、アリゲーターストラップ。240万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲パテック フィリップが好むのは、フォーマルなローマ数字インデックスと、ユニバーサルフォントというべきバーインデックス。しかし、カラトラバにはカジュアルなアラビア数字インデックスも映える。もっとも、ありきたりのアラビア数字ではなく、伝統的なブレゲ数字を選んだのはさすが老舗だ。「カラトラバ」(Ref.5196P)手巻き、PTケース(37mm)、アリゲーターストラップ。403万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲ダイヤモンドのセッティングでも高い評価を得るパテック フィリップ。際だって質の高いダイヤモンドを、歪みなく密に取り付ける技術は、スイスでも最高峰だ。女性用には魅力的なモデルが多いが、男性用のカラトラバも見事。嫌みのない程度に、さりげなくダイヤモンドをあしらっている。「カラトラバ」(Ref.5297)自動巻き、18KWGケース(38mm)、アリゲーターストラップ。425万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲ケースと一体化したラグを持つカラトラバ。しかし、年代によってディテールは様々だ。写真のモデルは、かつてのRef.96。ベゼルには、刻み模様の「クル・ド・パリ」が施されている。小ぶりサイズが好みなら、ヴィンテージの中から、自分好みのサイズやデザインを探すのも、カラトラバ選びの楽しみのひとつだ。
▲傑作Ref.5196には素材違いもある。写真は、いっそう端正なWGモデル。YGのような分かりやすさがないだけ、より大人の時計らしい。針やインデックスが文字盤と同色のため視認性は悪そうに見えるが、さにあらず。立体的な針やインデックスが、YGやRGモデル同様の見やすさをもたらした。「カラトラバ」(Ref.5196)手巻き、18KWGケース(37mm)、アリゲーターストラップ。240万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲パテック フィリップが好むのは、フォーマルなローマ数字インデックスと、ユニバーサルフォントというべきバーインデックス。しかし、カラトラバにはカジュアルなアラビア数字インデックスも映える。もっとも、ありきたりのアラビア数字ではなく、伝統的なブレゲ数字を選んだのはさすが老舗だ。「カラトラバ」(Ref.5196P)手巻き、PTケース(37mm)、アリゲーターストラップ。403万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲ダイヤモンドのセッティングでも高い評価を得るパテック フィリップ。際だって質の高いダイヤモンドを、歪みなく密に取り付ける技術は、スイスでも最高峰だ。女性用には魅力的なモデルが多いが、男性用のカラトラバも見事。嫌みのない程度に、さりげなくダイヤモンドをあしらっている。「カラトラバ」(Ref.5297)自動巻き、18KWGケース(38mm)、アリゲーターストラップ。425万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲ケースと一体化したラグを持つカラトラバ。しかし、年代によってディテールは様々だ。写真のモデルは、かつてのRef.96。ベゼルには、刻み模様の「クル・ド・パリ」が施されている。小ぶりサイズが好みなら、ヴィンテージの中から、自分好みのサイズやデザインを探すのも、カラトラバ選びの楽しみのひとつだ。
形あっての型破り、をこれほどやってきたコレクションは、他にそうはありません。つまり、カラトラバとは、正統を知り尽くしながらも遊び心を忘れない。そんな大人にこそ、相応しい時計なのです。
■ お問い合わせ
パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター 03-3255-8109