【試乗リポート】フェラーリ12チリンドリ・スパイダー
流麗なスタイルに12気筒エンジンを搭載した特別なクルマ!?

発表されたのは、クーペ版とおなじ24年5月ですが、遅れて市場に投入され、乗れたのは25年になってから。ポルトガルはリスボンから1時間ほどのカシュカイスなるリゾート地を中心に、テストドライブの機会が設定されました。

そのまま車名になっている12気筒エンジンは、6496ccの大きな排気量で、ターボをそなえていないのが、競合他社と違うところ。あえて自然吸気で勝負です。それだけでなく、各部を軽量化したり慣性マッスを減らしたりと徹底的に手が入っています。
50〜60年代のフェラーリにインスピレーションを受けたデザイン

ボディデザインは、1950年代から60年代にかけてフェラーリが送り出した、フロントエンジンでオープンボディのGTからインスピレーションを受けているとのこと。
「他に類のないドライビングのたのしさと、快適性と、イタリアンデザインの美を併せもったモデル」というのが、フェラーリの説明。フロントまわりは、往年の365GTB/4(別名デイトナ)を思わせつつ、リアは「スペースシップ」と、ヘッドオブデザインのフラビオ・マンツォーニ氏は造型の妙を説明してくれました。

「たとえば812コンペティチオーネAのようなミドシップモデルに特徴的だった彫刻的デザインからおおきく離れ、新しいデザインを確立しました」
フェラーリが上記のようなことをプレスリリースで書いているぐらいです。なんとなく昔のモデルの官能的な魅力を漂わせながら、従来のモデルとは一線を画した新しさがあるのです。
9000rpmまで回るエンジンだけど、ドライブフィールはすこぶる快適

できれば9000rpmまで回してみたかったのですが、周囲の交通がそれを許してくれませんでした。海岸線も、高速も交通量が多かったのが、残念です。
回せば回すほど心躍るエンジンフィールと、ダイレクト感の強い操縦感覚は、さすがフェラーリ。思いっきり床までアクセルペダルを踏み込んでみたいという誘惑と戦うのが、なんとたいへんだったことか。危険です(笑)。
それでいて、フェラーリが「快適」とするのは本当で、路面の突き上げなどはよく吸収してくれて、乗り心地は終始フラット感が強いもの。高めの速度でも、遠くまで快適に走っていけるスタイリッシュなクーペであるのがGT。その本領が強く感じられました。

オヤジさん、ファッションをきめて、幌を下ろして、美しい内装とともに、周囲から見られるよろこび、味わってはどうでしょう? ごくかぎられた少数のひとに用意された、フェラーリのオープンGTという魅力的なモデルなのですから。
Ferrari 12 Cilindri Spiderギャラリー





■ Ferrari 12 Cilindri Spider
全長×全幅×全高/4733×2176×1292mm
ホイールベース/2700mm
6496cc V型12気筒(NA)後輪駆動
最高出力/610kW@9250rpm
最大トルク/678Nm@7250rpm
乗車定員/2名
燃費/15.9L@100km(WLTP)
価格/6241万円~
■ フェラーリ・ジャパン
HP/https://www.ferrari.com/ja-JP
● 小川フミオ
クルマ雑誌、グルメ雑誌の編集長を経て、フリーランスのライフスタイルジャーナリストとして活躍中。新車の試乗記などクルマ関連を中心に、グルメ、ファッション(ときどき)、他分野のプロダクト、人物インタビューなどさまざまなジャンルの記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。