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2025.04.02

日産「GT-R」、今年8月で生産終了。18年の歴史に幕、次期モデルやいかに

日産は「GT-R」の新規注文受付を終了したと公式サイトにて発表した。18年間一度もフルモデルチェンジすることなくつくり続けられたR35 GT-Rとはどんなクルマだったのか? 改めて振り返ってみる。

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文/藤野太一 写真/日産自動車

日産「GT-R」、今年8月で生産終了18年の歴史に幕。次期モデルやいかに
日産は「GT-R」の新規注文受付を終了したと公式サイトにて発表した。昨年からそのような話題を耳にしていたが、すでに抽選販売済みの2025年モデル約1500台をもって今年8月に生産を終えるということが正式決定された。18年間一度もフルモデルチェンジすることなくつくり続けられたR35 GT-Rとはどんなクルマだったのか? 改めて振り返ってみる。

18年間一度もフルモデルチェンジしなかったR35 GT-R

日産がGT-Rの生産終了に際し、公式サイト上に掲載した文面は以下のもの。

「NISSAN GT-Rは、多くのお客さまからご注文を頂き、生産を予定している数量のご注文受付を終了いたしました。2007年の発売以来、長きにわたり多くのお客さまにご愛顧いただき、誠にありがとうございました。」

広報部にその理由を問い合わせてみると、以下のような回答があった。

「R35は2007年の発売開始から、今年で18年目となり、今後の生産継続にあたり調達が困難となる部品が複数発生するため、2025年8月を以て生産終了の予定となります。」

部品の調達が困難となるということだが、それ以外にも衝突被害軽減ブレーキの装着義務やサイバーセキュリティ法規への対応など今後厳しくなる規制への適合が難しいことも想像される。いずれにせよ18年間一度もフルモデルチェンジすることなく、それでいながらも世界のハイパフォーマンスカーの最前線を走り続けてきた異例のモデルといえる。ここであらためて少しその歴史を振り返ってみたいと思う。
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歴代GT−R。左から初代KPGC10型(通称ハコスカ)、R33、R34、R35、R32、KPGC110型(通称ケンメリ)。
▲ 歴代GT-R。左から初代KPGC10型(通称ハコスカ)、R33、R34、R35、R32、KPGC110型(通称ケンメリ)。
そもそも「GT-R」とは“スカイライン”のハイパフォーマンスバージョンという位置づけのモデルだった。1969年に初代が誕生。その箱型のボディ形状からいわゆるハコスカと呼ばれるスカイラインをベースとしたもので、見た目は地味なセダンであったことから“羊の皮を被った狼”というキャッチフレーズが用いられたのは有名な話だ。次の4代目スカイライン(通称ケンメリ)にもGT-Rは設定されたが、生産台数はわずか197台でこのモデルをもってGT-Rの名はいったん途絶えることになる。

再びGT-Rの名が復活するのは16年後の1989年、8代目スカイラインをベースとしたR32のことだった。その後、R33、R34と代を受け継いで進化していくが、当時の排ガス規制への適合が難しくなり、2002年をもっていわゆる第2世代GT-Rは終焉を迎える。
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その頃の日産は経営の危機に瀕していた。1999年にはルノーからやってきたカルロス・ゴーン氏が社長に就任し、「日産リバイバル・プラン」を掲げ、大胆なコスト削減を実施。目標の1年前倒しで黒字化を達成した。

そして、ゴーン氏は自ら直轄のプロジェクトを立ち上げ、GT-Rの開発に乗り出す。日産にとってGT-Rがいかに重要な意味をもつのかがわかるエピソードだ。みたびGT-Rの名が復活したのが2007年、現行型のR35だ。
2007年デビュー当時のR35。基本骨格はここから18年間かわっていないが、空力性能をはじめ何度も改良が施されている。
▲ 2007年デビュー当時のR35。基本骨格はここから18年間かわっていないが、空力性能をはじめ何度も改良が施されている。
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誰でも、どこでも、どんな時でも最高のスーパーカーライフを楽しめる

このR35では“スカイライン” の名を除き、車名は日産GT-Rとなった。日産を象徴するモデルであり、また、このR35からは左ハンドル仕様も生産し正式に海外へ輸出する(第2世代でも少数が海外輸出された例はあったが)グローバルカーとなるという意味も込められていた。

R35は、発表当時から「誰でも、どこでも、どんな時でも最高のスーパーカーライフを楽しめるというコンセプトを具現化した新次元のマルチパフォーマンス・スーパーカーである」ことを標榜していた。大人4人が乗れて荷物も積めるというユーティリティ性をもちながら、市街地では快適なクルージングが可能で、アウトバーンでは300km/hオーバーで会話ができ、サーキットではアタックもこなす運動性能をもつ、といったコンセプトはモデルライフを通して一貫したものだった。
プレミアムミッドシップパッケージの透視図。エンジンはフロントの車軸よりもキャビン側に、トランスミッションは車体後方に配置することで前後重量配分を最適化している。
▲ プレミアムミッドシップパッケージの透視図。エンジンはフロントの車軸よりもキャビン側に、トランスミッションは車体後方に配置することで前後重量配分を最適化している。
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それを実現可能とした要因のひとつとして、以下にあげるような基本構造のよさがある。まずGT-R専用の「プレミアムミッドシップパッケージ」を採用していること。エンジンをフロントに、GR6型デュアルクラッチトランスミッションとトランスファーをリアに配置したトランスアクスル方式を採用し、前後重量配分を最適化している。

これに四輪駆動システムを組み合わせた独自の「独立型トランスアクスル4WD」構造となっている。ボディはカーボンコンポジット、スチール、アルミなど複数の素材を用いて構成されており、軽量かつ高い安全性とボディ剛性を確保している。
職人の手によって1基ずつ組み上げられたエンジン。「T-spec」のエンジンには組み上げたを担当した「匠」の名を赤文字で刻んだネームプレートが備わる。当初は480PSだった「VR38DETT」エンジンは、最終的に570PSにまで高められた。
▲ 職人の手によって1基ずつ組み上げられたエンジン。「T-spec」のエンジンには組み上げたを担当した「匠」の名を赤文字で刻んだネームプレートが備わる。当初は480PSだった「VR38DETT」エンジンは、最終的に570PSにまで高められた。
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「匠」が1基ずつ手作業で組み立て、全数に対して性能検査

そしてR35のために新設計された3.8ℓV6ツインターボエンジン(VR38DETT)を搭載。これは通常のラインではなく、「匠」と呼ばれる職人がクリーンルーム内で1基ずつ手作業によって組み立て、全数に対して性能検査を実施。さらに熟練の検査ドライバーが全車のエンジン、トランスミッション、ブレーキの調整を実施するという量産車としては異例ともいえる手の込んだプロセスを経て出荷されている。

GT-Rは、こうした基本的なハードウェアや生産方式を大きく変更することなく、部品の改良や精度の向上、そしてそれぞれの時代の技術を投入し、デビュー以来、毎年のように進化を続けてきた。

生産終了に際し、最終型となる2025年モデルのGT−Rに試乗する機会を得た。グレードは、「プレミアムエディションT-spec」(車両価格2035万円)だった。ちなみに「T-spec」という名称は、時代を導くという哲学であり、GT-Rの在り方や、その時代を牽引するクルマであり続けるという願いを表現した「Trend Maker」と、しっかりと地面を捉え駆動する車両という開発におけるハードウェアへの考えを表した「Traction Master」から名づけたものという。
2025年モデル「プレミアムエディションT-spec」のインテリア。
▲ 2025年モデル「プレミアムエディションT-spec」のインテリア。
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インテリアは、プレミアムエディションというだけあってパールスエードで覆われたダッシュボードやレザーで覆われたドアの内張り、レザーとパールスエードを組み合わせたシートなどプレミアム感を演出している。ダッシュボード中央にある今となっては少しばかり小ぶりなセンタースクリーンや手で引くタイプのサイドブレーキに時代を感じさせるが、それも機能としては何ら不満はない。

赤いスターターボタンを押せば、3.8ℓV6エンジンが目覚める。2024年モデルから騒音規制への対策が施されており音は抑制されてはいるが、このエンジンが只者でないことはしかと伝わってくる。6速デュアルクラッチトランスミッションは、デビュー当時はまるでレーシングカーのようなメカニカルノイズと変速ショックに驚いた記憶があるが、それ以来年々改良が施されており、いまとなってはそんなことを微塵も感じさせない洗練されたふるまいをみせる。
「T-spec」の証として、ギアシフトの脇にプレートが配置される。2025年モデルの「T-spec」にはこれまで「GT-R NISMO Special edition」のみに採用していたピストンリング、コンロッド、クランクシャフトなどの高精度重量バランス部品を採用することでレスポンスの精度を高めている。
▲ 「T-spec」の証として、ギアシフトの脇にプレートが配置される。2025年モデルの「T-spec」にはこれまで「GT-R NISMO Special edition」のみに採用していた高精度重量バランス部品(ピストンリング、コンロッド、クランクシャフトなど)を採用することでレスポンスの精度を高めている。なお、「T-spec」の2モデルには、赤文字で匠の名が刻まれたアルミ製ネームプレートと、ゴールドのモデルナンバープレートを、新たにエンジンルーム内に採用している。
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ひたすらに改良を重ねてきた開発者たちの努力の結晶

サスペンションも街乗りから高速までしなやかに動く。頻繁に轍にステアリングをとられ、上下にこまかく揺すられるかつてのような挙動は皆無。プレミアムエディションT-specでは専用カーボンセラミックブレーキと鍛造アルミニウムホイールによってバネ下重量を軽減。それに伴い専用のサスペンションセッティングを施しており、歴代でもっとも上質といえるほどの乗り味を実現している。
エンジンは回転が上昇するにつれその組み立て精度の高さが伝わってくるようだ。アクセルペダルの操作に対してラグタイムなく瞬時に反応してくれる。トランスミッションの変速スピードも鋭くかつスムーズになっている。高速コーナーでゆっくりとステアリングを切り込むと、不安を感じさせない抜群のスタビリティをもってターンインし、立ち上がりで右足に力を込めれば、粒の揃ったエンジン音の高まりとともに凄まじい加速をみせ、まさにワープするかのような感覚が味わえる。

18年間、もっと速く、もっと快適にとひたすらに改良を重ねてきた多くの開発者たちの努力の結晶をみた気がした。特別なハンドメイドの内燃エンジンを内包した“マルチパフォーマンス・スーパーカー”はこれをもってひとつの完成形となったというわけだ。
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NISSAN GT-R NISMO
▲ GT-Rのラインアップの中でサーキット走行に特化したハイパフォーマンスモデルが「GT-R NISMO」。24年と25年に設定された「GT-R NISMO Special edition」では、ピストンリング、コンロッド、クランクシャフトなどに高精度重量バランスエンジン部品を採用。専用のカーボン製エンジンフード(NACAダクト付)などを特別装備している。
NISSAN GT-R NISMO
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「ニッサンハイパーフォース」は次世代のGT-Rなのか?

日産の広報部に問い合わせたところ、R35 GT-Rの輸出台数や総生産台数は非公開ということだった。ただし累計国内販売台数は2025年1月末時点で1万7009台と回答が得られた。国内のみの数字だが年間販売台数は平均1000台に満たない計算になる。

ちなみに2023年と2024年のポルシェ911のグローバルでの販売台数は年間5万台を超えるといえば、GT-Rがいかに希少であるかはいうまでもないだろう。中古車市場での流通台数も少なく相場は上昇傾向にあり、プレミアム価格で取引されている個体も多くある。
ジャパンモビリティショー2023に展示されたEVコンセプトカー「ニッサンハイパーフォース」
▲ ジャパンモビリティショー2023に展示されたEVコンセプトカー「ニッサンハイパーフォース」。カーボンを活用した軽量化車体に、全固体電池と最大出力1000kWを発生するモーターを組み合わせ四輪を駆動する、次世代のGT-Rとも噂されたが、果たして……。
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ジャパンモビリティショー2023に展示されたEVコンセプトカー「ニッサンハイパーフォース」
R36と呼ばれるのかは不明だが次世代の開発計画はあるとの噂も耳にする。まだ内燃エンジンでいけるのか、ハイブリッド化するのか、それとも電気自動車なのか、その判断は極めて難しいものになる。

そしていまふたたび経営不振で苦境に立っている日産に新たなGT-Rをつくる底力はあるのか。しかし、日産のステークホルダーにとってもGT-Rは唯一無二の価値をもつものであるに違いない。考えてみれば、これまでのGT-Rとはその時代時代の日産復活の狼煙でもあったようにも思う。GT-Rをもう一度、を期待せずにはいられない。

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