食の原体験、母乳を味わう美食の饗宴とは⁉

Web LEON食いしん坊担当の秋山 都です。

最近、フォーハンズ（Four Hands）とかシックスハンズ（Six Hands）といった、複数のシェフによるコラボレーションイベントが流行っています。通常、シェフは自分の任される（or経営する）お店にいるものですが、時に自分の店を飛び出て、他店のシェフと出会い、一緒に仕事をするのは大きな刺激になることでしょう。

そもそもこの種のコラボイベントは、World 50 Best Restaurantsなどのレストランアワードの授賞式で、シェフ同士が出会うことから親睦が深まり、徐々に一般的になっていった……と思うのですが、どうかしら。ここ10年ほどでよく聞くようになりましたね。

三人寄れば文殊の知恵というように、ひとりより2人、2人より3人いれば内容は濃く、充実したものになるはずで、さらにそれが今をときめくスターシェフなら？？ 食べる側からするとまさに1粒で何度でも美味しい、お得感のあるイベントとして人気です。

さて、先日、そのシックスハンズが行われたのは「ザ・リッツ・カールトン京都」。今年、開業から10周年を迎えたことを機に行われたこのイベントが素晴らしかったのでご報告をさせてください。

まず、シックスハンズに参加した3人のシェフの経歴がすごい。世界の美食家が目指すデスティネーションとして知られるスペイン・バスク地方で、ミシュラン2つ星を獲得している「ムガリッツ」のオーナーシェフ、アンドニ・ルイス・アドゥリス氏。日本にいるイタリア人シェフとして初めてミシュランの星を獲った「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のエグゼクティブシェフ、ルカ・ファンティン氏。そしてザ・リッツ・カールトン京都「シェフズ・テーブル」のエグゼクティブ イタリアン シェフ 、井上勝人氏……というラインナップ。

このお三方はとくにイベントなどで知り合ったというわけではなく、それぞれに長く親密な付き合いのある関係性。実はルカ・ファンティン、井上勝人の両氏はともに「ムガリッツ」で修業したことがある、つまりアドゥリス氏の愛弟子というわけ。3代にわたる師弟関係によって紡ぎ出される“料理の系譜”が味わえる、一夜限りのスペシャルディナーというわけなのでした。

さて、実際にお料理を見てまいりましょう。まず、みんなを驚かせたのは1皿目に登場した「アマ」という料理。これはスペイン語で“お母さん”という意味ですが、見た目はおっぱいそっくり。シリコンで形成された胸の中に牛と山羊のミルクを混ぜたものが入っており、ちゅうちゅう吸いながらいただくというものです。

全体がほんのり人肌に温められており、赤ちゃんの肌着ををイメージしたガーゼに包んで手渡されるという演出も心憎い。国境や文化を超えて、誰しもが“生まれて初めて口にしたもの”、つまり母乳を再度味わうという得難い経験に一同興奮。「今日は何か素晴らしいものを味わえるぞ」という期待感に包まれました。

対して、井上勝人シェフは貝や筍など旬の食材を多く使い、メインの松阪牛のフィレに添えたのは京都産日本酒「伊根満開」の酒粕に包んだ赤米。食材に恵まれている京都ならではの魅力が存分に伝わってくる内容でした。

一方、ルカ・ファンティンシェフはイカスミのスパゲティや、イタリア産カロナローリ米のリゾットなど、イタリア人シェフとしてのアイデンティティを感じさせるメニュー。日本ですでに15年暮らしているルカさんですが、その成長ぶりをアドゥリスさんに見て欲しいんじゃないかな……なんて思ったのは私だけかしら。この夜、全国から集ったグルマンたちが、スペイン人、イタリア人、日本人のそれぞれトップシェフたちによる美食の饗宴を堪能しました。

「ザ・リッツ・カールトン京都」の開業10周年に際するスペシャルな企画はまだまだありまして……。世界で最も革新的な蒸留所のひとつ京都蒸留所の「季の美」と、「ザ・リッツ・カールトン京都」のザ・バー、ヘッドバーテンダー浅野陽亮氏がコラボレーション。樽熟成のクラフトジン「季能美(KI NOH BI)」の29thエディションとして、日本ならではのミズナラの新樽で熟成した「季の美」と宇治市にある「堀井七茗園」の玉露と碾茶の原酒をメインとしてブレンド。多層的に「和」の味わいを追求した「ザ・リッツ・カールトン京都 」10周年限定のボトルを誕生させました。

さわやかなオレンジと良質なお茶の香りが重なり、ミズナラ由来の白檀や伽羅のニュアンスが味わいに奥行きと長い余韻を感じさせてくれます。ヘッドバーテンダーの浅野さんによるとジントニックやマティーニはもちろん、ロックスタイルでもおすすめとのこと。まもなく祇園祭に沸く京都ですが、まずこちらをアペロで一杯キメてから遊びにくり出そうかな。

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