「なんでもない幸せ」を味わう、ちょっといい日の朝食

「まん防」の延長が発表された東京では、飲食店の営業時間が制限され、以前のように自由に飲んだり食べたりできない状況が続いています。早く、友人たちと酒を酌み交わし、密なコミュニケーションを楽しみたいものですが、人は不思議なもので、この不自由さにも早くも順応しつつあるよう。

「夜飲めないのなら、昼酒を楽しめばいいじゃない」
「店に行けないなら、テイクアウトやデリバリーで集まろうよ」

制限された状況下にあっても、なにか楽しいことを見つけようとする。言い換えれば、なんでもない日をも幸せと思うのは「日日是好日（にちにちこれこうじつ）」*という禅の言葉を思い起こさせます。

そして、私たちのマインドも少しづつ変化しているように思うのです。予約のとれない店の席取りゲームに興じたり、星つきレストランで御朱印を押してもらうような巡礼の旅ではなく、なんでもないような日常の一食を愛おしむほうがカッコイイんじゃない⁉ と。もちろん、その一食は美味しくて、心地よい時間じゃなければダメなんですけれどね。

「ｓio」（東京・代々木上原）の鳥羽周作シェフは機を見るに敏な人だと思います。2019年12月にミシュラン1つ星を初獲得した直後にコロナ禍に見舞われたのは不運でしたが、その後のアクションは早かった。「自宅でレストラン体験」をコンセプトにしたテイクアウト商品「sio贅沢弁当」の開発や、夜食べられないなら朝楽しもうと「＃朝ディナー」を提案。「＃おうちでsio」というハッシュタグで店のレシピを公開することでSNSのフォロワーも大きく増やしました。

そんな鳥羽シェフが21年10月、表参道にオープンした「ホテルズ」は、“架空のホテルのレストラン”をコンセプトにした新業態の店舗。どの時間帯でも食事を楽しめるホテルのオールデーダイニングから着想を得て、モーニング、ランチ、ディナーと、訪れるタイミングによって異なるスペシャリテを提供しています。

「“ホテル”という非日常をイメージさせる場所で、誰もが知るわかりやすい料理。しかもミシュランクオリティーの美味しさを気軽に味わってほしい」という鳥羽シェフの想いは細部まで行き届き、心地よい空間が出来上がっています。

大きく開かれた窓からは外苑の樹々が望める気持ちいいこの店で、私が特におすすめしたいのは朝食。ひとりでちょっと贅沢な朝ごはんを楽しんでもよし、久々に友人たちとおしゃべりしながら楽しんでもよいでしょう。もちろん、パワーブレックファストとしてビジネスユースにも。午前中の、脳が動いている時間を有効活用したいものです。

この2月に登場した、朝食メニューをさらにブラッシュアップしたという期間限定新メニュー「＃ハレごはん」がこちら。「ハレ」とはハレとケの「ハレ」だと思いますが、なんでもない日も、この「＃ハレごはん」を食べることでちょっといい日になりそうですね。このあたりも「日日是好日」な気分です。

オレンジソースで和えたローストポークをアイオリソースと2種チーズでホットサンドにした「シェフのキューバサンド」。オレンジの酸味、甘味、ハラペーニョとマスタードの辛み、ニンニクやガラムマサラの香りも重層的に感じられ、単刀直入に「美味い！」ひと皿。

卵液にしっかり漬け込んで旨味を閉じ込めたフレンチトーストをさらにキャラメリゼすることで、パリっとした食感とほどよいほろ苦さを感じさせる「青山フレンチトースト」。

このフレンチトーストにローストハムとチェダーチーズを乗せた「ホテルズクロックムッシュ」。鳥羽シェフ渾身のマヨネーズとパルミジャーノ、ブラックペッパーが隠し味となり、やさしいけどパワフルな旨味の爆弾です。

最後に、ちょっといいものを見つけました。

食事の前にサービスされるおなじみのおしぼり。でもこれが、「sio」「Hotel's」ともに、鳥羽シェフの美意識が感じられるすばらしいタオルなのでした。

鳥羽シェフがこのおしぼりを洗うためにわざわざ二層式洗濯機まで購入したという「IKEUCHI ORGANIC」のタオルは、地厚でしっかりしているのに、やわらかく、顔まで拭きたくなる心地よさ。まさに「一事が万事」というわけで、「Hotel’ｓ」での心地よいエクスペリエンスを象徴している逸品だと思います。

「日日是好日」気分を味わえる、ちょっと「ハレ」のお店

●その美味しさはまさにクレイジーなピザ「ＣＲＡＺＹ PIZZA」
【話題】あのイタリアンの名店が新店オープン

●ハンバーガーをメインにコース仕立てで楽しめる
美味いハンバーガーが食べたいなら、いますぐ「バーガーポリス」に出頭せよ！

●高級料理の代名詞「ふぐ」をバルでカジュアルに
自分史上最高に敷居の低いふぐ料理店