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2022.06.18

祝! 「W大阪」開業1周年。いま世界が注目する「関西ガストロノミー」が面白い!

先ごろ1周年を迎えたW大阪。これを祝してふたりのスターシェフ、La Cime(ラ・シーム)・高田裕介さんとvilla aida(ヴィラ アイーダ)・小林寛司さんが7年ぶりとなるコラボレーションダイニングを開催しました。ともに関西をベースに活躍するふたりは、関西ガストロノミーを世界クラスに押し上げた立役者。そんなふたりが考える「関西ガストロノミー」とは?

CREDIT :

文・写真/江藤詩文

▲ La Cime・高田裕介さん(左)とvilla aida・小林寛司さん(右)が夢のタッグ。
食い倒れの街・大阪といえば、たこ焼きにお好み焼き、串カツなどなどストリートフードの食べ歩きが楽しみのひとつ。一方で魅力的なファインダイニングも点在していて、オートキュイジーヌからB級グルメまで、あれもこれもグルマンの欲望を満たしてくれます。

そんな大阪に新しいラグジュアリー・ライフスタイルホテルとして誕生したのが、3月20日に開業1周年を迎えた「W大阪」(※関連記事はこちら)。食の都・大阪のホテルとして、開業当初からカリナリーエクスペリエンスに力を入れてきました。なかでも世界のフーディーズの注目を集めているのは、La Cime・高田裕介さんがブラッスリー「Oh.lala...(オーララ)」のメニュー監修をしていること(W大阪総料理長・村山茂さんと共同監修)。
▲ W大阪のニューブラッスリー「Oh.lala...(オーララ)」。
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La Cimeは「ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2022」2つ星、2022年版「アジアのベストレストラン50」6位(※関連記事はこちら)。高田さんは、2020年にアジア各国のトップシェフが尊敬するシェフを選ぶ「シェフズ・チョイス賞」も受賞しています。
1周年を祝していくつかのイベントが開催されたなかでも、フーディーズ大騒ぎの目玉となったのが「La Cime × villa aida スペシャルダイニング」。メモリアルダイニングを依頼された高田さんが、コラボ相手に指名したのは、同じく関西をベースに活躍するvilla aida・小林寛司さん。本誌にも何度も登場いただいているvilla aida(※関連記事はこちら)は、「ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2022」2つ星、2022年版「アジアのベストレストラン50」では14位にランクイン、ハイエストニューエントリー賞(初登場で最高位)にも輝いています。
▲ 高田シェフ(左)と小林シェフ(右)がコラボして、すべての料理を二人で作り上げた。
こういったスターシェフ同士のコラボレーションでよく行われるのは、お互いが代表的なメニューを持ち寄り、ひと皿ずつ交互に出していくというスタイル。とりわけ今回のような大規模なイベント(ゲストはランチ・ディナーそれぞれ80名ほど)では、準備にも時間がかかるため、使い慣れない厨房で、ふたりの料理人が揃ってから、味を調整しつつ手数をかけて新しいメニューをつくるより、それぞれがつくり慣れたメニューを用意するほうがリスクが少ないからです。

しかも高田さんは絶対的な味覚を持ち、ひらめきから脳内で超高速でレシピを組み立てるタイプ。小林さんは、日々状態の変わる菜園の野菜たちに合わせて、毎日その場で瞬間的に新作をつくっているようなもの。そんなフリースタイルなふたりが、それぞれの世界観で各自の料理をつくるのではなく、すべての料理をふたりで創りあげる。つまり、二度と同じものには出合えない、この日だけのメニューを味わえる。このイベントの最大の見どころはそれでした。

イベントはランチとディナーの2回開催され、La Cimeやvilla aidaのファンが全国各地からやってきました。が、なかには「どちらのお店にも興味はあったけれど、行くチャンスがなかったからよい機会になりました」という方も。ふたりのスターシェフの料理をいっぺんに楽しめるなんて、これぞコラボの醍醐味! ですよね。
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▲ この日のディナーメニューはこちら。ランチ2万5000円、ディナー4万5000円(税サ込)。
本誌はディナーに参加。メニューは、La Cimeのシグネチャーであるブータンドッグ、菜の花の香る見た目もかわいらしい小さなパンケーキとさわやかな酸味のハッサクのメレンゲ、カカオニブがアクセントのビーツの生春巻きと、3つのフィンガーフードからスタート。小林さんがaida農園から運び込んだ、季節の野菜やハーブをふんだんに使った全13皿のコースが提供されました。

メニューを眺めると、えんどうの花やルッコラの花など、一般的には流通していないvilla aidaならではの食材やaida米(品種はキヌヒカリ)、アスパラガスオイルなど自家製調味料もラインナップされていてaidaファンには特にうれしい構成。パンもvilla aidaの天然酵母を持ち込み、Oh.lala...のベーカリースタッフが、大型のオーブンで焼き上げた焼きたての熱々です。
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が、よくよく読み込んでみると……ん?  ラディッキオのタルトにココナッツバナナクリーム(これってデザートじゃない)?  玄米ブイヨンにきびなご醤油(ブラッセリーなのに)?  新玉ねぎと島豚ラード(これがデザートってどういうこと)? と、プレゼンテーションも味わいもまったく想像がつかないものばかり。そもそもしょっぱいのか甘いのかさえ謎めいている。間近で見ていたキッチンスタッフでさえ、なぜこれとあれを組み合わせるのか、どんな味の料理ができるのか、まったくわからなかったそうです。

そんな料理は、どう生み出されたのでしょうか。たとえば「ラディッキオのタルト アンチョビ入りパートダマンド ココナッツバナナクリーム」は、高田さんと小林さんのこんな対話から生まれました。

「野菜?」「ラディッキオ」「タルト」「ソース」「バナナ」「うん」「うん」……。
えぇ、テレパシーでもない限りぜんぜん伝わらないと思うので翻訳します。
▲ 「気心が知れていてお互いの料理をよく知っているのでコラボもとても楽しい」と高田さん。

villa aidaとW大阪はクルマで1時間の距離。よく見かける一般的な野菜とは異なり、独特の風味を持つaida農園のフレッシュな野菜を、ゲストになるべくたくさん味わってほしいと、高田さんは考えました。イベント開催時にaida農園で旬を迎えていたのがラディッキオ。これを生のままサラダとして出すのではなく、タルトにして熱を加え、焼き目をつけることで苦味を含んだ春の味覚と香りを増幅します。
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▲ 季節の花やハーブが香るvilla aidaの自家菜園。
そこになぜバナナのソースなのかって話なのですが、ここがこのふたりの組み合わせのおもしろいところ。普通、バナナといえばもったりとした舌ざわりで甘さが強く、ちょっと酸味がある南国のフルーツ味をイメージしますよね。そうではなく、バナナの皮と実の間のあたりに感じる苦味が、ラディッキオの苦味とリンクすると言うのです。この感覚を瞬時に共有できるコンビネーションだからこそ、すべての料理をふたりで創るなんて離れ技をなし得たのでしょう。
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こんなミラクルを実現できるのも「関西という共通するバックグラウンドを持っているから」と高田さんは言います。フーディーズが東京に一極集中していた長い間、共に励まし合いながら、関西からガストロノミーを発信し続けてきました。

大阪は、関西では大都市ですが、東京と比較すると商圏は7倍差があるという説もあるとか。一概にまとめられるものではありませんが、あえて単純に言うなら、関西のファインダイニングは、東京の7倍も努力や工夫をして、ようやく東京のレストランと肩を並べることができる、とも考えられるわけです。
▲ W大阪のホテル前に飾られた大きなロゴマークのオブジェ。
これを食べ手側からみると、世界クオリティのファインダイニングのシェフが7倍手間をかけてくれた料理を、東京の7分の1の予約の取りやすさで体験できるというわけ。フットワークが軽くて情報感度の高いフーディーズが、関西まで足を伸ばす理由は、ここにあります。

「東京がライバルというわけではなく、関西には東京とはまた違うテロワールがあります。La CimeもOh.la la...も、食べることが好きな方はどなたでも大歓迎ですので、関西の味を楽しみにいらっしゃっていただけたらうれしいです」と高田さん。

そんな高田さんと同じく、関西からガストロノミーを発信しているのが、本誌にもご登場いただいたHAJIME(「ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2022」3つ星)の米田肇さん(※関連記事はこちら)です。高田さんと米田さんは、お店が徒歩圏内にあるご近所仲間。自身のレストランの仕事があるため、イベントへの出席は叶いませんでしたが、打ち上げには駆けつけ、夜更け(というか明け方?)まで熱くガストロノミー論を交わしていました。
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▲ HAJIME・米田肇さん。
米田さんは、関西にはガストロノミーを中心に発展するポテンシャルがまだまだあると話します。

「ヨーロッパの地方都市の中心に、その街の誇りとなるファインダイニングがあるように、レストランはその土地の文化の成熟度を表しています。大阪は、せっかく食の都と謳っているのですから、カジュアルフードだけに頼るのではなく、素敵なレストランが出店し、人々が集まりたくなるような美しい街づくりに今こそ真剣に取り組むべきだと思います。それには民間だけでなく、行政の意識を変えていくことも大切ですね」

ちなみにHAJIMEもLa Cimeと同じく、会員制や紹介制などではなく、料理を楽しんでくれるゲストはどなたでも歓迎するスタイル。大阪のツートップがオープンマインドなのは、東のフーディーズにとって心強いですね。
関西のスターシェフにフォーカスしたイベントを企画した理由を、W大阪総支配人の近藤豪さんはこう話します。「ゲストのダイニングエクスペリエンスを大切にしているW大阪が、ガストロノミーで盛り上がることによって、人の流れが生まれて街が活気を取り戻し、関西からガストロノミーを発信する動きへと繋がれば面白いと考えました。大阪だけでなく、日本各地の地方でガストロノミーを中心にムーブメントが起こることで、日本全体が元気になっていきたいですね」。
▲ センターがW大阪総支配人の近藤豪さん。今回のイベントの仕掛人。
2022年版「アジアのベストレストラン50」には、大阪のほか京都と和歌山からランクインし、ミシュランは、2021年に「ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2022」で和歌山を初めて掲載。先日は、6年ぶりとなる「ミシュランガイド奈良2022」を発表しています。これからも注目し続けたい関西ガストロノミー。奈良のガストロノミーについては、またあらためて近いうちにこちらでレポートしますのでお楽しみに。

W大阪

住所/大阪府大阪市中央区南船場4丁目1番3号
TEL/06-6484-5355
HP/W大阪公式サイト

 ●高田裕介さん(左)
「 La Cime」(ラ・シーム)
住所/大阪市中央区瓦町 3-2-15 瓦町ウサミビル1F
HP/La Cime ラ・シーム 
●小林寛司さん(右)
「villa aida」(ヴィラ アイーダ)
住所/和歌山県岩出市川尻71‐5 
HP/villa aida ヴィラ・アイーダ

江藤詩文(えとう・しふみ)

旅するフードライター/インタビュアー。ガストロノミーツーリズムをテーマに、世界各地を取材して各種メディアで執筆。著名なシェフをはじめ、各国でのインタビュー多数。訪れた国は65カ国以上。著書に「ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~」(小学館)シリーズ3巻。Instagram(@travel_foodie_tokyo)でもおいしいモノ情報を発信中。

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