2024.07.18
【第3回】
「お好み焼き」と「ピッツア」は遠距離恋愛関係!? 凄い共通点と驚きがあるんだ!
イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える企画です。
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文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)
18歳の初来日の時、お好み焼きを食べていた記憶がある。当時から未だに残っている印象は、「これはピッツァじゃないか!?」。形も切り方も、そのまんまだ。しかも面白いのは、お好み焼きがイタリア語では「pizza giapponese(日本のピッツァ)」や、「frittata giapponese(日本の卵焼き)」と訳されること。日本人から見ると、全然別物だよ! と思うかもしれないけど、「お好み焼き」にはイタリア人が好きにならざるを得ない、すごい共通点や驚きが隠されているんだ。今日はそれを、皆さんにご紹介しよう。
お好み焼きとピッツァって実は共通点がいっぱい
初めて体験した時に驚きと興奮が止まらなかったのは、鉄板の前に座って、生の食材を渡されて自分で作るスタイルだ! イタリアでは食べ物は調理された後に運ばれてくるのが一般的で、日本のように自分で調理するやり方は斬新で、非常に面白い発想。僕も当時は自分で作るということに慣れていなくて、「美味しいかな?」「食べられる?」と考える暇がないくらいに作業に力を入れていたよ。
今も観光中の外国人を見るとまったく同じ雰囲気で、とにかく楽しそうに作ったり、失敗しながら笑ったりしていて、日本の食文化はこんなに人を楽しませるなんてすごいなと、改めて感じている。説明なしで楽しんでバクバクと食べて! こんなの、なかなかないよ‼
お好みソースを初めて口にした時、その「甘み」に驚いた
外国人から見ると、お好み焼きの驚きは味付けにもある。テーブルにソースや青海苔があって、お好みでかけて食べると若干味が変わる。一口ごとにパーリーが始まっているような感覚を感じているのは、僕だけ?
さらに、専用のお好みソースを初めて口にした時、その「甘み」に驚いた。デザート用のソースかと思ったほどだよ。甘みをデザート以外の料理に加えるなんて、イタリアでは考えられない。日本は甘みをいろんな料理に出して活かしていて、ほとんどの外国人は最初にまず驚くだろう。少しずつ慣れていって、どんどんその甘さの虜になっていくんだ。
お好み焼きを食べる楽しさは「ニッポン」を感じること
外国人は日本料理を通して、よく知られた食材の新しい可能性を発見できる。同じ食材でも、調理方法やアレンジ次第でまったく違った魅力が引き出されるんだ!
「本当に全部同じ料理なの!?」と驚くほどに種類が豊富
今までたくさんのお好み焼きを食べてきた僕は両方好きで、選ぶのが難しすぎる。広島焼きは、生地・キャベツ・具材をひとつずつ重ねて焼いていくという重ね焼きのスタイル。それぞれの具をしっかり味わえて食感まで楽しめるのが美味しいポイントだ。関西焼きは、焼く前に生地とキャベツを混ぜて焼くという混ぜ込みスタイル。全部混ぜてから焼くから作りの楽しさが少し減るけど、ひと口ごとにすべての具を味わえてより濃厚な食べ方になる。
実は、ここにもピッツァとの共通点が隠れているんだ! 例えば、ナポリではピッツァを揚げて食べるし、カルツォーネやポルタフォーリオ(両方とも折り畳まれたピッツァ)は、中に入れる具材が地域によって異なる。生地の作り方、乗せ方、具のこだわり、焼き加減、耳が分厚い、薄い、クランチ感ありなしなど、違いを挙げたらキリがない。全部並べてみたら、「本当に全部同じ料理なの!?」となる可能性が高いよ!
ピッツァもお好み焼きも小麦粉で作られていることを考えると、日本とイタリアは遠距離恋愛のように見えていて、テンション上がっちゃうね。みなさん、今日は広島風を食べる? 関西風にする? もしかして、マルゲリータにしちゃう?
● マッシ
本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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