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2024.08.15

【連載】イタリア人マッシの「思考する食欲」vol.05

実はペルシャ生まれ!? の「天ぷら」に外国人がみんな夢中になる理由とは?

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える企画です。

CREDIT :

文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)

マッシ massi   webLEON イタリア人 思考する食欲
天ぷらは美味しいね! 季節の食材から生まれる旨みは口に優しくてそのまま楽しく味わえる。そして、一番たまらない部分はサクサクの衣にある。噛むたびに耳に入る音に癒されて幸せになるのは僕だけではないよね? 同じ揚げ物でも、イタリアで食べていたものとは「なんだ!全然違うぜ!」と思ってしまう。

日本人にとって天ぷらは子どもの頃から家庭でも食べられていて、当たり前の味と存在になっているかもしれない。だけど、外国人から見ると憧れの料理なんだ。日本料理に目がない僕と一緒に、その美味しさの謎に迫る「天ぷらワールドツアー」に参加しよう! 遊園地より楽しめるかもよ。
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海外ではなかなか味わえない「サクッ」とした食感

僕もそうだけど、天ぷらに盛り上がる理由の一つは「衣」だ。イタリアの揚げ物は細かいパン粉をつけて揚げるから、外側のサクサク感がなくて色も濃くなる。ガッカリするのはフォークとナイフで切る時に中身と衣がバラバラになっちゃうこともあって、結局別々に食べてしまうのが珍しくはない。とにかく、同じ揚げ物といってもイタリアには天ぷらのようなものはない。サクサクの衣、中身の味と食感は新鮮なまま。イタリアの揚げ物より全然美味しく感じるのよ。

日本の天ぷらといえば、さつまいやかぼちゃ、レンコン、えびなどのイメージが多いけど、時にはキスやちくわ、ミニトマトもある。そのなかで僕が一番驚く具材は「大葉」だ。薄い大葉に衣を薄くつけて短時間油にくぐらせると、とんでもない美味しい食感と味が出てくる。葉っぱがなぜこんなに旨くなるんだろうと思っちゃう。苦手で食べられないなんて人には今まで出会ったことがない。食べたことがない外国人でもひと口目から大感激だ。
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海外で人気になった理由は奥深い! まずは新鮮で品質が想像以上に良い。見た目がどこからみても美しい。そして、言うまでもなく美味しい。そして天ぷらは見た目が美しいだけでなく、海外ではなかなか味わえない「サクッ」とした食感が誰の口にも合う。

もう一つの理由は揚げるという作業。これは簡単で誰でもできるように見えるけど、実はそうではない。衣へのこだわり、油へのくぐらせ方など繊細な作業ということで、日本人ならではのこだわりとアモーレ(愛)が溢れている食べ物のひとつだよね。
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盛り付ける順番にもこだわりが詰まっている

盛り付け方も美しくてまるでアートのように見えるから食べるのがもったいない。まずは、油を切ったものを出来るだけ温かいうちに敷紙を敷いた器に盛付けるのが基本。そしてなるべく天ぷら同士が重ならないようにしながら、立てかけるようにするという決まりがある。

食材の特徴や色味などの順番にも決まりがあって、基本は手前より淡白な味のものから、順に濃い味のものへと盛り付ける。盛り付ける順番からこだわりが詰まっていて、ますます天ぷらは奥が深いと思ってしまう。まさに日本料理の美しさを五感で感じられるのが素晴らしいよね。そう思いながらも箸を持つ手は自然と天ぷらを口に運んでいて、もぐもぐタイムが始まるんだ。
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▲ 定食にも天ぷらがついてくるとすごくうれしいね!
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天ぷらの専門店に行けば自分の前で揚げてくれる作業も見られるし、気楽に安く食べられるチェーン店でも大満足できる。定食でもうどんでもいろんな日本料理にセットでつけられる。野菜が苦手な人でも天ぷらにするだけで完食できちゃう。定期的に食べたくなるよね?

僕が天ぷらをどのくらい愛しているかというと、スーパーで惣菜コーナーに行くと頭の中が「天ぷら天国」(ダブル天)になるほど(笑)。買う予定ではなかったのに、家に帰ったらレジ袋から必ず出てくる。

天ぷらは6世紀のペルシア帝国にあった料理!?

ところで天ぷらという日本語は世界中で通じるけど、実はこれは日本語ではないんだ! ここから天ぷらの謎に迫るけど、最後まで読んでくれる? 日本に天ぷらの調理法が伝わったのは室町時代(1336 - 1573)だそう。「南蛮料理」としてポルトガルから伝わったとされて、ポルトガル語の「Tempero(テンペロ)」(意味は調味料)が語源という説があるのはよく知られているよね。

でも実は、元々はポルトガル料理でもないんだ! 天ぷらは、なんと6世紀のペルシア帝国にあった料理だという説もある(※)。1500年も昔の時代に生まれた料理が様々な地域の違う食文化に取り入れられて、今もこんなに多くの人に愛される料理になっているなんて天ぷらとピッツァくらいしかないと僕は感じている。皆さん、信じがたいかもしれないけど、現在食べている天ぷらは元々ペルシア料理だよ!
※参考『ペルシア王は「天ぷら」がお好き?』(ダン・ジュラフスキー著/早川書房)
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名前の由来はもう一つの説がある。昔は天ぷらに使う油を「天麩羅(あまふら)」と読んでいたようだ。天麩羅(あまふら)を音読みすると「てん・ふ・ら」になって、そのうち変化し「てんぷら」だ。なるほど! ますます天ぷらを食べたくなるね。

皆さん、ペルシア帝国から生まれて日本を代表する料理になった天ぷらの旅はいかがでしたか。もしかしたら今日は天ぷらを食べる? それとも、天丼にする? あ、天ぷらうどんもあるよ?
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● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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